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【風まかせ文芸部】常温|エッセイ


私は、飲み物はだいたい常温が好きだ。
冷たすぎる水は体に刺さるし、熱すぎるものは急かされる感じがする。

机の上に置いたミネラルウォーターは、しばらくすると部屋の温度に馴染んで、
まるで「ここでいいよ」と言っているみたいになる。
その感じが、ちょうどいい。

昔は、情熱は熱く、覚悟は紅のように濃くなければいけないと思っていた。
でも、年を重ねるほど分かってきた。
続くものは、だいたい温度が低い。

ゲーム理論でいうなら、
一発勝負の最適解より、
長く生き残るための“均衡”を選ぶ感じだ。

無理に冷やさない。
無理に沸かさない。
ただ、そこに置いておく。

常温の水を一口飲むと、
体の内側に、静かに広がっていく。
派手さはないけれど、確実で、裏切らない。

今の私は、
きっとこの温度で、生きていくのがいちばん強い。


均衡


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