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noriko_v
【風まかせ文芸部】真紅|誘う.飛び込む.会いたい|ショートショート
むかしむかし、風の通り道の先に、真紅の森がありました。
木々の葉はすべて深い赤で、風が吹くたびに、まるで炎が揺れるようにきらめきました。
人々はその森を怖れ、「あそこに入った者は帰ってこない」と言いました。
でもある日、小さな女の子がふと耳にしたのです。
──「おいで。ここにおいで。」
声は優しくて、どこか懐かしくて。
彼女は森の入り口で立ち止まり、胸の奥がぎゅっと熱くなりました。
「…だれ?」と尋ねても、返事は風に溶けて消えました。
それでも、その声は彼女を誘うように響きます。
「もう、怖くないよ。」
女の子は一歩、また一歩と進み、ついに飛び込むように真紅の森へ。
すると、不思議なことに、森は燃えるような光ではなく、やわらかな赤い光で満ちていました。
葉の一枚一枚が小さな灯のように瞬き、足元の土はぽかぽかと温かい。
森の奥には、彼女にそっくりな姿の影が立っていました。
それは、ずっと昔に別れた「もう一人の自分」。
「ようやく会えたね。」
影がそう言って微笑むと、森の真紅はゆっくりと桜色に変わっていきました。
──その日から、森を怖れる人はいなくなりました。
真紅は、怖い色じゃなくて、「会いたい心の色」になったのです。
了

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