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kuchan2021
【3つのお題に空想のひらめきを第40回】星くずの郵便局.たんぽぽ飛行船.消えた王国の地図|ショートショート
タイトル:グッドラックの宛先
星くずの郵便局は、夜にだけ開く。
看板はなく、
たんぽぽ飛行船が目印だ。
ふわりと浮かぶその船から、
小さな種のような光がこぼれ落ちる。
それが、手紙になる。
「どこへ届ける?」
局員は静かに聞く。
私はポケットから、
古びた紙を取り出した。
消えた王国の地図。
どこにも載っていない場所。
もう存在しないはずの国。
「ここに」
指差すと、局員は少しだけ目を細めた。
「そこは、深淵の向こうだ」
「それでもいいの?」
私はうなずく。
手紙には、ただ一言だけ書いた。
――グッドラック
返事はいらない。
届くかどうかも分からない。
でも、あの場所に向けて
何かを送りたかった。
局員は封をして、
たんぽぽ飛行船に乗せた。
船はゆっくりと空へ昇り、
やがて星の粒に溶けていく。
「届くよ」
局員が言った。
「たいていの手紙は、
消えた場所ほどよく届く」
私は空を見上げる。
深淵の向こうにあるものは、
もう見えない。
それでもきっと、
誰かが受け取る。
星くずの郵便局では、
今日も「届かないはずのもの」が
一番遠くへ運ばれていく。
おしまい

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