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【風まかせ文芸部】花見|エッセイ


タイトル:桜の下で覚えていること

花見の記憶は、なぜか少しだけ特別だ。

同じ桜の季節が、毎年ちゃんと巡ってくるのに、
そのたびに違う時間を過ごしている。

誰と見たか。
どんな話をしたか。
どんな空気だったか。

不思議と、ちゃんと心に残っている。

満開の桜の下で笑った日も、
少し散り始めた頃に静かに歩いた日も、
どれも同じようでいて、ひとつとして同じではない。

春の風が吹く。

花びらが舞うその瞬間、
時間が少しだけやわらかくなる気がする。

きっと、桜は覚えていない。

誰が見に来たかも、
どんな思いで立ち止まったかも。

それでも、見る側の私たちは、
その一瞬をちゃんと持ち帰っている。

だから、桜の季節は特別なのかもしれない。

景色そのものよりも、
そのとき隣にいた人や、交わした言葉が、
あとから静かに思い出になる。

また今年も、花見の季節が来る。

春の風に吹かれながら、
新しい記憶が、またひとつ増えていく。



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