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ai_gazou
【風まかせ文芸部】チョコ|エッセイ
タイトル:渡せなかったチョコレート
バレンタインの日、
バッグの中でチョコがずっと重たかった。
話せなかった。
声をかける理由は山ほど考えたのに、
実際の私は、目を合わせることすらできなかった。
片想いって、
相手より自分に向かっている時間のほうが長い。
期待しないようにして、
でも、ほんの少しだけ期待してしまう。
結局、渡せなかった。
哀愁だけが、夕方の風みたいに残った。
夜、家に帰って、
そのチョコを自分で食べた。
甘くて、少し苦い。
「悪くないじゃん」
そう思えたのは、
ちゃんと好きだった証拠だからだ。
渡せなかったけど、
気持ちまで無駄になったわけじゃない。
バレンタインは、
誰かに渡す日じゃなくて、
自分の気持ちを確かめる日なのかもしれない。
チョコはなくなったけど、
この哀愁は、
しばらく胸の奥で溶けそうになかった。
了

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