見出し画像

【青ブラ文学部】オリンピックの思い出|ショートショート


タイトル:雪だるまは金メダリスト

あれは、オリンピックの思い出だ。
テレビの中の選手たちが氷を蹴り、空を舞い、歓声が冬空に弾けていたあの年。

でも俺にとってのオリンピックは、登下校の道にあった。

その年の冬は、やけに雪が多くてさ。
学校までの坂道は、毎朝ちょっとした地上戦。
つるん、どすん、ぎゃああ。
クラスメイトたちは転倒の芸術点を競い合い、俺たちは勝手に採点していた。

「今のは9.8!フォームが美しい!」
「減点1、笑いすぎ!」

完全におふざけだ。
でも、雪の上では誰もが選手だった。

ある朝、俺たちは校門の横に巨大な雪だるまを作った。
ただの雪だるまじゃない。
頭にはバケツ、首にはマフラー、胸には段ボールで作った金メダル。

「お前、何の競技で優勝?」
「雪上耐久立ちっぱなし競技だろ」

ふざけながらも、どこか誇らしかった。
冷たい空気の中で、白い息を吐きながら、俺たちは本気で笑っていた。

数日後、雪だるまは少しずつ溶けていった。
メダルは曲がり、腕は落ち、顔も歪んだ。

でもな、不思議と負けた感じはしなかった。

テレビの向こうのオリンピックは終わっても、
俺たちの登下校は続いていく。
転びながら、笑いながら、また次の競技へ。

あの冬の雪だるまは、たぶん今もどこかで胸を張っている。
金メダルよりもまぶしい、あの頃の笑い声を抱えたまま。



*下記企画に参加させて頂きました


☆次の作品はこちらです↓↓↓

前回の作品はこちらです↓↓↓

悠・恵 日常・ほのぼの↓↓↓1


最後までお読みくださり、ありがとうございます😊すず

いいなと思ったら応援しよう!

鈴蘭 読んで下さりありがとうございます!励みになります!