男性の育休取得率が50.9%になった——この数字が数えているのは「人」であって「日数」ではない
半分を超えた、という見出しの下で
厚生労働省が7月31日、令和7年度の雇用均等基本調査の結果を公表しました。男性の育児休業取得率は50.9%。前年度の40.5%から10ポイント以上上がり、初めて半分を超えました。
「男性の半分が育休を取る時代になった」と読める数字です。ただ、この率が何を分母に、何を分子にして計算されているかを一次資料で確かめると、その読み方はいくらか変わります。数字が間違っているという話ではありません。この率は、最初から日数を測る道具ではない、という話です。
分子の条件は「開始した」——終えたでも、続けたでもなく
調査の公表資料には、取得率の定義が注記として書かれています。厚生労働省の資料によると、分母は令和5年10月1日から令和6年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性。分子は、そのうち令和7年10月1日までに育児休業を開始した者です。
ここで二つのことが決まります。
一つは、長さが問われないこと。開始したかどうかで数えるので、2週間取った人も、半年取った人も、同じ1人です。産後パパ育休も分子に含まれます。
もう一つは、実際に休んでいなくても数えうること。注記には、育児休業の申出をしている者を含むと明記されています。制度上の手続きを踏んだ時点で分子に入る設計です。
分母と分子で、時計の進み方が違う
もう一段細かい話をします。分母の対象になるのは令和6年9月30日までに配偶者が出産した男性で、分子の締切は令和7年10月1日です。つまり出産から1年以上の猶予をとって、その間に開始したかどうかを見ています。
これは制度の実態に合わせた設計です。育児休業は子が1歳になるまで(条件により延長あり)取れるので、出産の翌月に取る人も、10か月後に取る人もいる。集計を早く締めると、後から取る人が丸ごと落ちてしまいます。
ただ、この設計には副作用もあります。私たちが「今年の男性育休」と聞いて思い浮かべるのは今年の話ですが、この50.9%が見ているのは、2年ほど前に子どもが生まれた家庭の話です。数字は現在ではなく、少し前の断面を映しています。
では、日数のほうはどうなっているのか
取得率と取得期間は、別々に集計されています。率が上がったことと、休んだ長さが伸びたことは、同じ調査の中でも別の項目です。
制度の側は着実に整っています。同じ調査によると、育児休業制度の規定がある事業所のうち、子が2歳になるまで(法定どおり)取得できるとする事業所は70.2%で、令和3年度の60.5%から上がりました。産後パパ育休についても、同調査によると4週間(法定どおり)取得できるとする事業所が93.8%を占めるとされています。
ここで注意したいのは、これらが「就業規則にどう書いてあるか」の割合であって、実際に取られた長さではないことです。規定が整っていることと、職場でその長さが取りやすいこととは、別の問題として残ります。
数字は嘘をつかず、質問に答えるだけ
50.9%という数字を前に、私たちはつい「男性の育児参加が半分まで進んだ」と読みたくなります。しかしこの数字が答えている質問は、もっと限定的です——配偶者が出産した男性のうち、その後1年ほどの間に育休の開始または申出に至った人は何割か。
この質問に対して、50.9%は正確な答えです。一方で「男性は平均どれくらい休んだか」「休んだ期間に家事育児がどう分担されたか」という質問には、この数字は答えていません。答えていない質問に答えたことにするのは、統計の側ではなく読む側の仕事の失敗です。
言い換えれば、率が5割を超えたことは入口を通った人の数についての達成であって、その先で何が起きたかは別に測らなければ分かりません。入口の数は制度と手続きで動かせますが、その先は職場の運用の話になります。
自分の職場で確かめられること
この記事の主張を、読者が自分で検算する方法があります。勤め先の就業規則で、育児休業を子が何歳まで取れると書いてあるかを見る。次に、直近数年で実際に取った同僚が何日休んだかを思い出す。
前者は上の70.2%の側の数字で、後者はこの調査が測っていない側の数字です。二つが揃って初めて、自分の職場が50.9%のどちら側にいるのかが分かります。
ひとつ、後から答え合わせのできる言明を置いておきます。次年度以降、男性の取得率はさらに上がるはずです。伸びしろが分母の側にまだ残っているからです。ただし取得期間の平均が率と同じ速さで伸びることはない——率は開始で数え、期間は職場の運用で決まるという、測っているものの違いがそのまま出ると考えます。
参考リンク
厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(令和7年10月1日現在の状況を令和7年10月に調査、事業所調査の有効回答3,291件・企業調査3,077件・一次)
厚生労働省「結果の概要(PDF)」(2026年7月31日公表。取得率の定義は冒頭の注記に記載)
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