初めての看取りが教えてくれたこと―最期まで寄り添うという覚悟
介護士として初めて経験した看取り。Oさんとの日々、夜勤での葛藤、最期まで寄り添った学びを振り返ります。現在は介護の仕事から離れていますが、その学びは私の原点です。
Ⅰ. はじめに:初めての看取りが問いかけたもの
介護士として働き始めて2〜3年ほど経った頃、私は初めて“看取り”を経験しました。当時は研修もまだ十分でなく、自信よりも不安が勝っていたことを覚えています。この体験がもたらした学びと覚悟は今も私の根底にあります。この記事では、その体験を振り返りながら、“最期まで寄り添う”ことの重みと大切さについて綴ります。同じように看取りを控える方や、介護士・ご家族の方の心の支えになれば幸いです。
Ⅱ. Oさんとの出会い:希望を胸に闘病を続けた日々
介護士として入職して間もない頃、まだ業務に慣れない私が出会ったのが、宮城県出身のOさん(70代)でした。
悪性度の高いグレード4のグリオーマ(悪性脳腫瘍)と診断され、余命宣告を受けながらも、国立がん研究センターへ定期的に通い、奇跡を信じて生きる方でした。
Oさんは明るく正義感が強い人柄で、入居者同士のトラブルがあれば手を差し伸べ、ユーモアも忘れない方でした。朝は必ず納豆を食堂に持ち込んで食べる習慣がありました。納豆に含まれるイソフラボンのがん予防作用を意識しての行動と聞き、その前向きさに私も励まされました。 しかし、時間とともに病状は厳しくなり、転倒や性格の変化も見られるようになりました。それでもOさんは「生きることをあきらめない」と語り続け、その姿勢が強く印象に残っています。
Ⅲ. 病状悪化と寄り添いのケア
あるとき、Oさんは入院後に戻ってこられ、歩行が困難となり車いす生活になりました。身体を動かすことが難しくても、入浴は最後まで楽しみだと語っていたため、機械浴で大人3人がかりで支援を行いました。介護側としては身体移動や体位変換が大変でしたが、浴槽に浸かっている間、Oさんの顔には「気持ち良い」という安堵の笑みが浮かび、その瞬間、私たちも「支えてよかった」と心から感じました。
病院通院が難しくなった後は訪問医療に切り替わり、医師からは「好きなことをさせてあげてください」との助言がありました。
食事がほとんど摂れなくなった頃、面会に来た息子さんのお嫁さんが持参したお寿司を喜んで食べたエピソードもあり、Oさんが家族への感謝を改めて語る姿は、介護者として胸を打たれました。
Ⅳ. 夜勤での看取り直前の葛藤
ある夜、介護士として担当した夜勤でOさんのケアを行う中、看取り未経験の私は大きな不安を抱えていました。施設には心電図モニターなど目に見える機器がなく、もしものときにどう判断すればよいか分からず途方に暮れていたのです。
Оさんは
「ここが自分の家であり、最期もここで迎えたい」
と強い意志を示し、ホスピスへの移行を固辞されていました。
私研修も十分でなく、それでもОさんの希望を尊重して見守る覚悟を決め、可能な限りそばにいることを選びました。
「巡回に行きますから待っててくださいね」
と声をかけ、お部屋を離れるときも必ず声掛けを続ける中で
22時過ぎに下顎呼吸の異変が訪れました。
Ⅴ. 最期の瞬間と私の想い
22時過ぎ、Oさんの呼吸が下顎呼吸となり、苦しさが増していく様子を目の当たりにし、私は初めての看取りにどう対応すべきか戸惑いながらも、すぐに訪問医師へ連絡を考えつつ、Oさんに「大丈夫ですか」「苦しくないですか」と声をかけ続けました。
約10分後、Oさんは大きく息を吐き、その瞬間にぱっと目を開き、息を引き取られました。私はその場で号泣しながら、医師や家族へ連絡し、去りゆくOさんを見送る役目を果たしました。家族に伝えたかった感謝の言葉を涙でうまく伝えられなかったこと、しかし心の中で「お疲れさまでした」と見送ったことは、今も深く胸に刻まれています。
Ⅵ. 看取り後の余韻と心に刻まれた幻影
3か月後、夜勤休憩中─ 廊下を歩くOさんの姿を見た幻の体験は、鮮烈に心に残りました。洒落たアロハシャツに短パン、杖を持って「よぉ!」と挨拶される笑顔の姿。しかしすぐに現実に振り返り、その存在が幻だったことに気づきました。
この体験を通じて、「人の壮大な歴史が幕を閉じるとき、そばにいるべきだ」という強い想いが芽生えました。
Ⅶ. 学びと気づき:看取りケアへの覚悟
Oさんの看取りを経験して、私は介護士として大切なことを痛感しました。
機械的なケア技術だけでなく、心を開いて声をかけることの意味
家族との連携のタイミング、情報共有の大切さ
設備や知識が不足している場での判断力の必要性
また、スピリチュアルな視点では、「見えない存在がそばにいるかもしれない」という意識が、自分自身を落ち着かせ寄り添う支えになりました。
この経験で得た「寄り添う心」と「学び続ける姿勢」は、どの道に進む今後も私を支えるものです。
Ⅷ. 読者へのメッセージ・アドバイス
もし、これから看取りを経験する介護士の方へ:
初めてのときは不安が大きいのが当然。研修や先輩の助言を積極的に求めつつ、自分ができる範囲で「そばにいる」覚悟を持ちましょう。
緊急時の連絡先や対応フローを事前に確認し、夜勤時などひとりでケアする場面への備えを。
心理的な負担を軽減するセルフケア(深呼吸、短い瞑想、同僚との共有など)を意識して。
ご家族として見守る方へ:
可能な限り側にいてあげる。言葉が届きにくくなっても声をかけ、手を握ることは大きな安心につながります。
施設や医療チームとの連携を早めに取り、患者さんの希望を尊重したケアプランを話し合っておく。
そして、すべての人に:
「最期の瞬間」に寄り添うことは大きな経験ですが、その体験はあなたの人生観を深め、成長につながります。
スピリチュアルな視点で「見えない存在への祈り」や「心を開いて聴く」ことも、ケアに力を与えます。
自分自身もサポートが必要なときは、同僚や専門家、コミュニティに頼る勇気を持ってください。
Ⅸ. 結び:次への視点
この初めての看取り経験は、介護士としてのスタート時代の私に大切な覚悟をもたらしました。Oさんが最後に見せた小さな笑顔と、その後に見た幻の姿は、命の尊さと寄り添う心の重みを教えてくれました。
この学びと想いは私の中で生き続けています。これからも、“最期まで寄り添う”という心を忘れずに、どの道でも人の尊厳を大切にしていきたいと思います。

本日は介護の記事を綴りました。次回はスピ系で綴りたいと思います。
本日も拝読頂きありがとうございました。
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