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それでも娘はそこにいる

娘は消えた。家にはまだ“娘”がいる。
広い家で、俺は居心地の悪さを感じていた。

『この子は私が連れていきます。あなたはだめ』

妻と離婚してから1ヶ月。
子供は妻に連れていかれてしまった。
何のために仕事をしているのか、少しだけ、わからなくなっている。

最近娘から返事が来ない。

俺のことなんて、お父さんのことなんて、忘れたのか。

娘が置いていった、愛らしい日本人形。今も捨てられない。

俺の足元に黒い束がある。足に挟まったり、踏みしめた時の異物感。

あの人形の髪、やたら抜けるな。

最近の人形は作りが悪いのか。


プシュッ

仕事から帰った俺は、またビールを開けた。お帰り、娘の声は、もうない。

娘が残していった日本人形……。

妻が置いていった使いかけの化粧ポーチを、恐る恐る開けた。人形に化粧なんて、未練がましすぎるか。

ファンデを塗る、赤い塗料を塗る。
人形が、息を、吹き返す。
血色が良くなった。

……この日本人形、意外と顔色が悪かったんだな。可愛いじゃないか。

今度、カツラでも買ってこようか。
お前を、人間に。


プシュッ

今日は残業が長かった。

それにしても、今日は部屋から異臭がするな。

誰か、また生ゴミでも捨てそびれたのか。
あの子に、人形に匂いがつかないように、守らないと。

完全に、隣だろ、これ。一軒家を買えればよかったんだが。

それにしても、隣のやつ、いつもタバコ臭いんだよな。今度はゴミか。

俺は苛立ちながら、血色の良くなった日本人形を抱き寄せた。


ピンポン

うたた寝をしていたのに、起こされた。

隣の部屋のやつが、俺の部屋が臭いと文句を言いに来た。

いや、俺じゃねぇし。
言い合いになっていると、隣の部屋に住む男の後ろから、青い制服を着たやつらが来た。

数人に囲まれる。
は?何なんだよ、お前ら。

「そこに“いる可能性があります”」

あ?お前、何……。

『S県、10日前より行方不明のミナコさん、家宅捜査によりーー』


【注意】 この物語は完全なフィクションです。

ーー

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