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「不真面目」が求められる組織/SNS鮮烈な一撃/いわき信組不正@生きた教科書を読む


■生きた教科書「いわき信用組合」を読む

         
 
 リスクコラム中井です。
 
 今回も「人生を台無しにしない法」を探します。
 
 取り上げるのは、いわき信用組合(福島県いわき市)のトップが指示し、2004年から約20年間にも及んだ不正融資です。SNSの鮮烈な一撃で暴かれた案件でもあります。
 
 本人の知らないところで、同信組が勝手に預金口座を作って不正融資に使っていたようで、多くの役職員が関与した組織ぐるみ型の不祥事といえそうです。まだまだ未解明ですが、捻出された現金のうち10億円前後について同信組は、「反社会的勢力に該当するというべき者からの不当要求に対する支払に充てていた」という調査結果を公表しています。
 
 「過去に類例をみないほどに悪質」な不祥事の解明を目指して、外部の弁護士らによる第三者委員会が設置され、2025年5月30日に213ページに及ぶ第一弾の調査報告書が公表されました。(☞欄外①ご参照)
 Microsoft Word - 250530第三者委員会公表文.docx
 


■「真面目な役職員」ではなく「不真面目な役職員」


 私が注目したのは、報告書の中のワンフレーズです。
 
 「『不真面目な役職員』が多くいれば、より早く告発等により不正が明らかになっていたのではないかとすら思える」
 
「不真面目な役職員」? 
「真面目な役職員」ではなく??
 
 長い間、表面化しなかった理由を解明するため、第三者委員会の弁護士らは、OBを含めた全職員アンケートをもとにして、いわき信組がよって立ってきた土壌を分析していきます。

■異常な上意下達文化 


 掘り出されたのは、「人事権を背景としたパワーハラスメントとも評価できる異常な上意下達文化」でした。
 
 例えば……
・働く環境については、「誰から給料をもらっているんだ」「降格させるぞ」――そんな趣旨の脅しを特定の上司からかけられることが常態化した職場だったといいます。
・不正を知らない職員が疑問を抱いて確認すると、上司らは「見なかったことにしてくれ」「会社にいたければ黙っているように」と口止めを図ったそうです。
・不正に加担した職員からは、「上司からやれといわれれば不正とわかっていても断れない」「自分の生活や家族のためには従うしかない」「上司が白といったら黒いものも白と言わなければならない」という声が寄せられたそうです。
 

■真面目に誠実に上司からの業務命令に応じる


 そんなアンケート回答にヒアリングなどの調査結果も加味して、第三者委員会は不祥事が封印されてきた原因を指摘します。報告書211ページからの「 『いわしん』の再生に向けた役職員への期待」という項が良くまとまっているので、引用します。
 
 「『法令遵守意識に欠けた不誠実な者』という印象を与える者はむしろ稀であり、多くの者は真面目に誠実に上司からの業務命令に応じて組合のために職務を行う善良な役職員という印象であり、それは決して誤った評価ではないと考えている」
 「真面目すぎるが故に『組合の存続のために必要だ』という上司からの説得を素直に受け入れ、或いは不正の疑いを持ったとしても上述したようなパワーハラスメントによる圧力のために萎縮して、結果として不正行為の告発に至らなかったものと考えられる」
 
 そのうえで、冒頭に掲げたフレーズが続きます。
 
 「誤解を恐れずに言えば、『不真面目な役職員』が多くいれば、より早く告発等により不正が明らかになっていたのではないかとすら思えるほどである」
 
 立ち直りを期待して、役職員を励ます文脈なので、「真面目さ」や「誠実さ」が強調されている気もします。「とんでもない不正なのに、役職員に甘すぎる」と思う人がいるかもしれません。実は私も最初、そんな感想を持ちました。
 
 でも、お金の流れた先が「反社会的勢力に該当するというべき者」だったという同信組の説明などを考え合わせると、当時のいわき信組全体はとても重苦しい空気に包まれていたと思うのです。私も組織の論理の中で長い時間を過ごしてきた人間なので、「自分だったら、どう対処出来ただろうか」と自問しながら、報告書を読み進めました。

 ■「人生を台無しにしない法」


 ということで今回の「いわき信用組合」から、若い人たち向けに「人生を台無しにしない法」を読み取ってみます。
 
 極端な「上意下達文化」には組織を誤った方向に導くリスクが隠れていることがあり、その文化に染まれば、真面目な職員でもいつの間にか不正に手を染める危険性さえあるーー。

では、どうすれば? 

 人によって方法論は違うでしょうが、私なら、組織に入る前または組織の文化に馴染む前に、まずは独学でリスク察知と処理の能力を鍛えたいと思います。健全ではない組織でコンプライアンスやリスク管理の研修をいくら受けても、やっぱり健全ではない。そんな風に、今回読み取ったからです。

 ■SNS鮮烈な一撃

 報告書にも書いてありますが、この不祥事が発覚したのは、2024年9月初旬ごろ以降、X(旧Twitter)上に、「元信用組合職員」を名乗るアカウントから投稿された告発でした。細いけれど、鋭い爪が闇を引き裂いて、光を注ぎこむイメージです。危なくもあるので誰にでもできるわけではありませんが、あまりに鮮烈な一撃でした。
 
 ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。子や孫の世代に後ろ指をさされないように、また、頑張ります。             <了>
 
【欄外①】
・捜査や民事訴訟による事実関係の解明は、まだ始まったばかりなので、今回、不正の詳細には触れません。起訴されても無罪だった裁判を何度も取材してきた経験から、慎重になっているかもしれません。面白みがなくて、すいません。

・最近の動きとしては、不祥事に絡んで金融庁にウソの報告をしていたことがわかったとして、2026年1月21日に刑事告発されています。金融庁、いわき信用組合を刑事告発 再発防止へ信組に初の厳格対応 - 日本経済新聞

・また、第三者による調査は2回行われていて、2025年10月31日付でいわき信組が公表した「特別調査委員会の調査等により判明した不祥事件について」 も、概要を把握するのに役立ちそうです。

https://www.iwaki-shinkumi.com/pdf/20251031_2.pdf

■保護猫ロクの祈り「あした天気になあれ」

保護猫ロクの祈り「あした天気になあれ」

*特に若い人に読んでもらいたいのですが、届いているかだいぶ不安です。もし気に入ってもらえたら、スキと同時に若い人に勧めてもらえたらとても嬉しいです。 (中井)

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