第六回【中盤】ミッドポイント(イベントカレンダーによる中だるみの排除)
大好評『ストーリー工学入門』も後半に突入しました。
これからもよろしくね!
こんにちは、篠崎です。
物語を書き始めて、最初はすごく楽しかったのに、全体の半分くらいまで来たら急に筆が止まってしまった……そんな経験、ありませんか?
いわゆる「中だるみ」というやつです。嫌な言葉ですよねぇ……。
多くの創作者が、この第二幕の暗い森の中で迷子になり、そのままエタってしまいます。特に「ストーリーは起承転結から始めよう!!」と手を付けられた方々は、絶対に一度はぶつかる難所です。
この中だるみの恐ろしさは、『著者』も『読者』も、そして『編集者』ですら誰も幸せにならないということです。しかし安心してください。
先ず。第一認識として、中だるみが発生するのはあなたの才能が足りないからではありません。単に「折り返し地点(ミッドポイント)」の設計と、「書くべきイベント」が不足しているだけなのです!!
今回は、物語の中盤を爆速の高速道路に変える「ミッドポイント」と、自動的にイベントが湧き出てくる「イベントカレンダーの魔法」をバックグラウンドで支える大きな流れを解説します。
そもそも、ミッドポイント(折り返し地点)とは何か?……。

ミッドポイントとは、その名の通り物語のちょうど「50%地点」に配置する超巨大なマイルストーンです。10万字の小説であれば、だいたい5万字付近、シーン数で言えば40シーン中の20シーン目あたりですね。
ここで何が起きるのか?
一言で言えば、「偽りの勝利」または「偽りの敗北」です。
偽りの勝利とは、物語のスタートラインでダメダメか、ダウナー系で始まったストーリーが「ウヒョ! 何だか最近いい感じ!」と良い傾向に進み、主人公が絶好調になる状態です!!
偽りの敗北とは、物語のスタートラインで、イケイケドンドンとこの世の春を謳歌している主人公が転落し続けていく過程のことです。ただ転落するだけでなく、のちの「返り咲き」と「凱旋」に向けた道しるべをコツコツと配置しておく構造ですね。
ミッドポイントを端的に表すならば、それは「世界の反転」です。
ミッドポイントのちょっと前には、プロットポイント1があり、そこから第2幕へ突入します。この第2幕は『面白がらせ所』です。
この『面白がらせ所』とは、読者が読みたかった世界を十全に綴る場所です。

恋愛ストーリーならば、イチャイチャのシーン。他人には見せない笑顔、恋人だけに甘い、恋人だけを優先する。愛おしさを相手に伝え、すべて受け入れられて、相手からも愛情を返される。
SF宇宙大冒険ストーリーならば、宇宙船、ロボット、ワープ、超兵器が登場して、主人公がカッチョ良く立ち回るシーンです。
ホラーならば、モンスターやら呪いやらが大暴れして、主人公は時には戦い、主に逃げ回る。その過程で次々と不幸な犠牲者がむごい結末を迎えるシーンです。
読者が「今日はこの本を読んで、○○な気持ちになりたい。○○を疑似体験したい」という期待を、全力で提示してあげる。
ここが面白がらせ所の目的です。
第二幕にも前半と後半があります。
第二幕は『面白がらせ所満載』です。10万字の小説を、3幕15場40シーン構成で書くならば、20シーンで約5万文字に相当します。
この5万字の全てを「俺カッチョええ!!」や「イチャイチャ・ラブラブ」だけに費やしてしまうことが、中だるみの一番の原因なのです。
えっ? だって『読者が求めるモノを与えろ!』って言ったよね?
甘い→しょっぱい→甘じょっばいが幸せの法則

はい、言いました。読者が『読みたいシーンの連続を配置しろ』と言っています。
しかし、それだけではグルメな読者は、すぐに飽きてしまいます。
私は海苔塩味のポテチが大好きです。最近中身も少なくなったので……必ず2袋ずつ買ってポリポリパクパク、あっという間に食べてしまいます。
でも、しばらくすると甘いモノが食べたくなります。そこでチョコが染み染みのラスクをバリバリ。おいしいですよね。
満足したお口は、しばらくするとまた海苔塩ポテチが欲しくなる。
しょっぱい → 甘い → しょっぱい → 甘じょっぱい幸せ!! 正に幸せの無限ループ!!
これは、テーゼ → アンチテーゼ → ジンテーゼ の仕組みと同じです。
詳しくは第四回【開幕】フック(最初の一ページの魔力、離脱防止)を読んでみてくださいね!
どんな業界にもイベントカレンダーはあります。それは、高校2年生の1年間の月替わりのイベントカレンダーかもしれません。
緊迫する逃走劇の一晩の時間経過で移り変わる気温、風、湿度や星々の位置かもしれません。
あるいは、異性と出会い、互いに意識して、お付き合いして、別れるまでのイベントカレンダーかもしれません。
原始時代に始まり、宇宙旅行が日常的になるまでの科学技術進歩のカレンダーかもしれません。
先ずは、主人公がこれから旅をする小説 of 舞台となる時間軸に沿ったイベントカレンダーを作りましょう。
カレンダーの順番を考慮した上での「お口が幸せの無限ループ」には、即効性と継続性があります。それは人間の本能に訴えかける構造だからです。
しかし、本能にはあらがえない構造を構築したとしても、脳が「あぁ、またこうなるよね」と慣れてしまうのです。
この「慣れ」こそが、中だるみの正体である『物語強度の脆弱性』なのです。
この中だるみを回避する有効な手段が、三幕構成です。全体から逆算するとこんな感じになります。
・最小単位であるシーンの連続で感情の波を作る。
・シーンの塊を15の「場」と捉えて、大きなストーリーの波を作る。
・15の場を大きく3つの「幕」として物語強度を構築する。
この構造は、起承転結では作れません。
そして、おもしろがらせ所満載の第二幕は、前半と後半の二つに分けて「偽りの勝利」または「偽りの敗北」を仕込みます。
この折り返し地点、世界の反転が中間地点と呼ばれる「ミッドポイント」です。
それまで主人公が追いかけてきた目標に対して、一旦の区切りがつきます。
・敵の砦を落とした! → 偽りの勝利
・ずっと欲しかったアイテムを手に入れた! → 偽りの勝利
・逆に、頼れる相棒が敵に捕まって計画が台無しになった…… → 偽りの敗北
しかし、これはあくまで「偽り」です。
ここから物語の風向きが180度ガラリと変わります。偽りの勝利の裏で真の黒幕が動き出したり、手に入れた力に恐ろしい副作用があることが分かったりするのです。
偽りの敗北はその逆ですね。
このミッドポイントがあるからこそ、物語は前半に向けて「新しい緊張感」を持って加速していくことができます。中だるみしている暇なんて、読者にも主人公にも与えません!!
そして、書くべきこと、伝える情報、イベントが盛りだくさんになるので、「次は書くことがなくて……」などと悩んだ挙句に筆が止まることなど、絶対にあり得ません。
中だるみを防ぐ「イベントカレンダーの魔法」

「ミッドポイントの大切さはわかったけれど、そこに行くまでの間(30%〜50%の面白がらせ所)でどうしても書くことがなくなっちゃうんだよ……。」
そういう声が聞こえてきそうですね……。もちろん、その気持ちは痛いほど分かります。
そして、自覚症状もあるはずです。「主人公とヒロインをただ歩かせて無駄話をさせる」「出撃、戦闘、帰還、ちょっぴり戦線が前進するだけ」
自覚症状はあります。なので特効薬をください!! 即効性で良く効くお薬をください!! そんな都合の良いお薬、ありますか?……。
はい、良く効くお薬出しましょうねぇ……!
中だるみを解決する、極めて工学的なアプローチが「イベントカレンダー」です。
以前の記事はこちらを読んでください。私が泣いて喜びます!!
サブキャラクターたちを含めて、「このシーンで誰が何をするか」をいちいちアドリブで考えていたら、脳のメモリがいくらあっても足りません。
だから、舞台となる世界の「1年間のカレンダー(行事予定表)」を先に作ってしまいます。
たとえば、日本の高校が舞台なら:
4月:クラス替え、部活勧誘
5月:中間テスト、体育祭
6月:衣替え、雨、進路面談
7月:期末テスト、夏休み開始、部活合宿
これを作っておくだけで、「5月の体育祭の準備期間に、主人公とヒロインが一緒に用具を運ぶイベントが発生する」「サブキャラのA君は体育祭で目立とうと陰で練習している」といった、具体的なシーンのアイデアが自動的に湧き出てきます!!
異世界ファンタジーであっても同じです。
3月:魔獣の繁殖期(街道が危険になる)
5月:精霊の祭典(街でお祭りがある)
8月:乾季(水不足でギルドの依頼が変わる)
このように「世界のカレンダー」を敷いておけば、中盤の「面白がらせ所」に配置するイベントに困ることはなくなります。環境が勝手にキャラクターを動かしてくれるのですから。
永久保存版:10万字・40シーンの黄金配分マップ
と言うことで。ここで、中だるみを物理的に防ぎ、10万字の小説を完結させるための「シーン数割り振り表」を特別に公開します。1シーンを約2500文字として、全40シーンをどう配置すべきかの設計図です。
んー……この永久保存版という単語を使うと、一気に情報商材臭くなるのは如何ともしがたいのだが、この全10回ストーリー工学の座学は無料公開で鉄板知識の流布のために……無料公開という単語も商材キーワードだなぁ……気を取り直して、本当に有効なんだって!!
🎭 3幕15場 40シーン配分テンプレート

これは、各シーンの数、配置、目的の大まかな目安です。
この設計図を見ながら、「今は第15シーン(面白がらせ所の真っ最中)だから、イベントカレンダーに沿って日常のドタバタを書こう」とか、「折り返しの第20シーンだから、ミッドポイントでドカンと事件を起こそう」という風に、機械的に執筆を管理するのです。
機械的という言葉に拒否反応があるのならば、『面白がらせ所に、仕掛けとして必要な目的を上乗せする』と考えてみてはどうでしょうか?
だって、あらかじめ決まっているんですもん!
今回のまとめ
中だるみの一番の特効薬は、50%地点の「ミッドポイント(偽りの勝利/敗北)」
中盤のイベント不足は、舞台となる世界の「イベントカレンダー」で解決する。
飽きが来ない幸せの法則! 甘い → しょっぱい → 甘い → しょっぱい → 甘じょっぱい。
幸せの法則の繰り返しのバックで、大きな波が動いていると『おもしれー!』に繋がる。その転機がミッドポイント。
1シーン2500字として、40シーンのマップに沿って進行を管理しよう。
次回は、ミッドポイントを過ぎて主人公をさらに地獄へ追い詰めていく、第7回:【危機】「エスカレートの法則」とピンチポイントの設計について解説します。
読者をほっとさせてはいけません……。お楽しみに!!
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