第三回【核心】物語をジャンルではなく「型」として捉える
先ず、小説を書こうと思った時、多くの人が最初に考えるのはジャンルですよね。
「壮大なファンタジーを書こう!」 「学園ラブコメにしよう!」 「本格ミステリーを書きたい!」 もちろん、ジャンル選びは大事です。
自分が読みたいもの、好きな世界観を書くのが一番だし、自分の書きたくない物を書いても面白くないし続かない。
でも、気を付けてください。 ジャンルだけで物語を作ろうとすると、高確率で途中で筆が止まります……。
【第1章】「ファンタジーを書きたい!」から始まる悲劇

「よし、剣と魔法のファンタジーを書くぞ! 主人公は最強の剣士で、ヒロインはエルフで……」 設定を考えるのは最高に楽しい時間ですよね。 しかし、いざ書き始めて第3章あたりに差し掛かると、ふと手が止まります。
あれ? この後、主人公に何をさせればいいんだっけ?
で……結局何が言いたいお話なんだっけ?
こうして、主人公は目的もなく街をウロウロし始め、物語は迷走し、やがてエタる(未完になる)わけです……。
なぜこんな悲劇が起こるのか?
それは、ジャンルとはあくまでパッケージの包装紙であって、物語を前に進めるエンジンではないからです。
【第2章】ジャンルは『包装紙』、型は『エンジン』である

と言う訳で、今回は物語の核心部分。 物語を「ジャンル」ではなく「型(ストーリータイプ)」として捉える、というお話をします。
ジャンル(SF、ホラー、恋愛など)は、物語の「舞台設定」や「外見」にすぎません。
読者の感情を揺さぶり、物語を最後まで牽引する本当の力。
それは物語の「型」という名の強力なエンジンです。
実例をあげたお話は、こちらの記事を読んでね。↓↓↓
似たような話をしています……。
結論から言うと、小説のジャンルとはお客様『読者様』が、商品を選びやすくするためのラベルです。
・ 出版社が勝手に決めます。
・ どんどん新しいジャンルが増えていきます。
・ ザックリした分類です。
・ 『本格SFホラーロマンス』のにうに、二個一、三個一は当たり前。
・ 厳密な意味では専門家も分からないと思うよ。
ストーリー工学を学んで『小説家脳』を手に入れた作家は、物語をストーリーの型で分類・設計します。
第一回【導入】感覚vs設計
2. 商業作家に求められる「本当の力」にもサラッと書いたよ。
【第3章】『エイリアン』と『ジョーズ』は全く同じお話?

例えば、「宇宙船に得体の知れない生物が入り込むSF映画」と、「平和な海水浴場に巨大ザメが現れるパニック映画」。
ジャンルで言えばSFとパニック(ホラー)で、レンタルビデオ屋なら全く別の棚に置かれますよね……。
しかし、物語の「型」として見ると、実はこれ、全く同じ構造をしています。
どちらも、閉鎖空間に、得体の知れない脅威がやってきて、生き残るために戦う(逃げる)というお話です。
ハリウッドの脚本術で有名なブレイク・スナイダーは、世界中のあらゆる物語は、たった「10個の型」に分類できると提唱しました。
(※『SAVE THE CATの法則』という有名な本です。知ってるぅぅぅ!! という方も多いはず)
先ほどの例は、「家のなかのモンスター(Monster in the House)」という型に分類されます。
この型を動かすエンジンは、「大昔から人間が持っている、捕食されることへの原始的な恐怖」なのです。
密室 = 宇宙船 = 海に囲まれた島
このトポロジー的発想!
「えっ? それって同じなの?」と思ってしまいますが、物語をパーツに分解して、特徴を抽出する考え方が……私でもときどき混乱します……。
【第4章】「型」が決まれば、必要な「部品」が自動的に決まる
なぜ、「型」から物語を考えると迷子にならないのか?
それは、物語の型が決まれば、そこに必要な「項目(部品)」が自動的に決まるからです。
発想を逆転して、自分の書きたい小説のパーツを当てはめれば、どの物語の型に当てはまるかが逆算できます。
先ほど紹介したブレイク・スナイダーの「10の型」には、それぞれ「絶対に外してはいけない3つの要素」が設定されています。
これらをざっと眺めるだけでも、物語の設計図がどれほど強力か分かるはずです!
1. 家のなかのモンスター(Monster in the House)
怪物(得体の知れない恐ろしい存在)
家(逃げ場のない閉鎖空間)
罪(怪物を呼び寄せてしまった人間の愚行や罪)
📚 最近の参考書例
『変な家2 〜11の間取り図〜』(雨穴)
「間取り」という究極の閉鎖空間と家の因習(罪)。
『近畿地方のある場所について』(背筋)
「特定の地域」という逃げ場のない場所での怪異。
2. 金の羊毛(Golden Fleece)
道(目的地へ向かう一本道)
チーム(主人公を助け、時に足を引っ張る仲間たち)
報酬(旅の終わりに得るもの。ただし本当に必要なのは「内的成長」)
📚 最近の参考書例
『レーエンデ国物語』(多崎礼)
※呪われた地への旅路(道)と、仲間との絆による成長。
『世界でいちばん透きとおった物語』(杉井光)
※遺稿(宝)を探す探索行と、父の真実を知る成長。
3. 魔法のランプ(Out of the Bottle)
願い(主人公が抱く、魔法のような願いごと)
呪文(願いを叶える代償、またはルール)
教訓(魔法がなくても、自分の足で歩くべきだという学び)
📚 最近の参考書例
『リカバリー・カバヒコ』(青山美智子)
※触れると治る遊具(魔法)と、自ら立ち直る教訓。
『クスノキの女神』(東野圭吾)
※不思議な力を持つ木と、それに頼る人々の気付き。
4. 絶体絶命の凡人(Dude with a Problem)
罪の無いヒーロー(ごく普通の日常を送る主人公)
突発的な事件(主人公には何の責任もない大事件)
生死をかけた戦い(生き残るための過酷なサバイバル)
📚 最近の参考書例
『十戒』(夕木春央)
※無関係な人々が、突如島に仕掛けられた爆弾事件に巻き込まれる。
『エレファントヘッド』(白井智之)※平凡な精神科医が、突如として不条理な殺戮空間に落ちる。
5. 人生の岐路(Rites of Passage)
人生の問題(思春期、別れ、死など、誰もが通る普遍的な苦しみ)
間違った解決策(ドラッグ、逃避、悪い仲間など、痛みを避けるための行動)
受容(痛みを伴う真実を受け入れ、大人になること)
📚 最近の参考書例
『水車小屋のネネ』(津村記久子)
※親元から逃げた(逃避)姉妹が、自立して大人になる過程。
『星を編む』(凪良ゆう)
※大切な人の死(痛み)を、周囲の人間が受け入れていく群像劇。
6. バディを救え!(Buddy Salvation)
不完全な主人公(一人では生きていけない欠落を抱えた人物)
バディ(主人公を補完する、正反対の相棒)
複雑な出来事(二人の関係を引き裂くような誤解や別れの危機)
📚 最近の参考書例
『薬屋のひとりごと』(日向夏)
※猫猫と壬氏という、互いに欠落を抱えた二人の相棒関係。
『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』(東野圭吾)
※元マジシャンの叔父と姪の凸凹バディ。
7. なぜやったのか?(Whodunit)
秘密(物語の根幹に関わる、隠された真実)
探偵(謎を解き明かす役割。読者の代行者)
暗く危険な真実(ただの犯人探しではなく、社会や人間の闇に触れる発見)
📚 最近の参考書例
『あなたが誰かを殺した』(東野圭吾)
※連続殺人の謎解き(探偵)と、関係者の隠された闇。
『鵼の碑』(京極夏彦)
※謎の解明の果てに、人々の心の奥底にある暗い真実が暴かれる。
8. バカ者の勝利(Fool Triumphant)
バカ者(世間知らずで、周りから見下されている主人公)
組織(主人公を抑圧する権威や、凝り固まった社会)
変身(バカ者が組織のルールを変え、新しい名前/存在に生まれ変わる)
📚 最近の参考書例
『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈)
※空気を読まない「バカ者」が、周囲の常識(組織)を変える。
『成瀬は信じた道をいく』(宮島未奈)
※同上。最強のFool Triumphant(勝利)
9. 組織のなかで(Institutionalized)
集団(狂ったルールを持つ組織や家族)
問題児(そのルールに疑問を抱く新参者、または異端児)
決断(組織を破壊するか、自分が生贄になるかの究極の選択)
📚 最近の参考書例
『黄色い家』(川上未映子)
※疑似家族という「狂った組織」のルールと、その崩壊への決断。
『スピノザの診察室』(夏川草介)
※大病院という巨大な「組織」と、そこに抗う異端の医師。
10. スーパーヒーロー(Superhero)
特別な力(他人にはない、主人公だけの才能や能力)
宿敵(主人公と同じくらいの力を持つが、精神が歪んでいる敵)
アキレス腱(主人公の唯一の弱点、人間らしさ)
📚 最近の参考書例
『結界師の一輪華』(クレハ)
※特異な能力(力)と、一族の因縁(宿敵)、ヒロインの孤独。
『転生したらスライムだった件』(伏瀬)
※圧倒的な力を持つがゆえの責任と、強大な敵との戦い。
どうでしょうか?
名作映画『ダイ・ハード』は、「絶体絶命の凡人」の型のテンプレ通りに作られています。
このように、型が決まれば「次はどんな事件を起こすべきか」「主人公はどう動くべきか」が自ずと見えてきます。
だから、第3章で筆が止まるという事故を防げるのです。
なぜ、「型」から物語を考えると迷子にならないのか? それは、物語の型が決まれば、そこに必要な「項目(部品)」が自動的に決まるからです。
例えば、ブレイク・スナイダーの10の型のひとつに、「絶体絶命の凡人(Dude with a Problem)」という型があります。 この型を選んだ瞬間、あなたの物語には以下の3つの要素が絶対に必要になります。
罪の無いヒーロー(ごく普通の日常を送っている、平凡な主人公)
突発的な事件(主人公には何の責任もないのに、突然巻き込まれる大事件)
生死をかけた戦い(生き残るための、過酷なサバイバル)
名作映画『ダイ・ハード』なんかは、まさにこの型のテンプレ通りです。
型が決まれば、「次はどんな事件を起こすべきか」「主人公はどう動くべきか」が自ずと見えてきます。
【第5章】10の型、そして「49の型」へ……。
もちろん、どの「型」を使うかは、作家自身が勝手に決めてよいものです。 ここで混乱が生じるかもしれませんが……。
ブレイク・スナイダーの10の型は素晴らしいけれど、自分が書きたいWEB小説にはちょっと当てはめにくい……。
バディを救え!(Buddy Salvation)が、ロマンチック・コメディ―の分類に入るだと?
おっしゃる通りです。ハリウッド映画の型を、そのまま日本の小説に当てはめるには少し無理がある場合もあります。
実は私は、この10の型をさらに細分化し、現代の小説において圧倒的な威力を発揮する「49個の型」として独自に分類しています。
「えっ!? 49個も覚えられないよ!」 そう思った方。しかし安心してください。 今すぐこの49個をすべて覚える必要は全くありません。
ただ、「どんな物語にも、必ず当てはまる黄金の設計図が用意されている」ということだけ知っておいてください。
【第6章】包装紙を変えれば、名作は何度でも書ける
最初は「先人たちが死ぬほど失敗して見つけ出した黄金の型」に乗っかる方が、絶対に完走できる確率が上がります!!
作家のレベルは、完結まで書き上げた作品の数で決まるのです。
そして、「型」という強力なエンジンさえ手に入れれば、あとは包装紙(ジャンル)を変えるだけで、無限に新しい物語を生み出すことができます。
あとは包装紙ヲ変えるだけだと?
簡単な事ではありません。読者と言うお客様はとてもわがままです。
「前食べた。 美味かった。同じものをくれ!! だたし、違う味付けをしろ」
「家のなかのモンスター」の舞台を、宇宙船にすれば『エイリアン』。
海辺の観光地にすれば『ジョーズ』。
山奥の洋館にすれば『バイオハザード』です。
だたし、違う味付けをしろ。とは、こういう事なのです。
ジャンルから考えるのをやめて、まずは「型」を決める。
この強力な武器を、ぜひあなたの小説にも取り入れてみてください!!
最後に、ちょっとコマーシャル m(__)m
いきなり完璧なプロットを作成するのはハードルが高い!! と、思った方々へ。
プロットのザックリした立て方が知りたい。
簡易的なプロットがあれば、途中で筆が止まらないってほんと?
型が同じって言ってもねぇ……。
そんな貴方へ!
私が分類した49個の中の一つ。
『ナメテタ奴は最強だった!』というテンプレートに沿って、3本の簡易プロット作成手順をお手頃価格で販売しています。
【ナーロッパ標準ファンタジー版】
【現代劇・嫁姑いびり(実家ざまぁ)版】
【現代劇・ビジネス(追放・ざまぁ)版】

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