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30年前の自分を探して見つけたもの

「絶対この辺なんだよね…」

Googleマップを見ながら、私は同じカーブを
何度も行ったり来たりしていた。

探しているのは30年前にホームステイをしていた家だ。


実は2年前くらいにも、一度探したが
分からなかった。
覚えているのは、家を出てすぐの道。
風を切るカーブが気持ちがよくて覚えていた。


アメリカのサンラファエル近郊。
短期留学でひと月過ごした町。
大学名もあやふやなのに、
なぜか覚えているのは古着屋とスーパー。


古着屋は入口が狭く
窓は水色の木枠だった気がする。


スーパーの帰り道、紙袋が破けて
散乱したものを拾い集めた。

日本だったらクラクションを
鳴らされていたかもしれない。
でも、誰も鳴らさずに待っていてくれた。



_____30年経った、今。

やっぱり、もう一度探したい。
Googleマップを開いて探し始めた。


断片的な記憶をたどる。

バスターミナル越しに見た
オレンジとピンク色がきれいだった夕焼け。

ストリートビューで見ても
なんだかピンとこない。


「よし!1つずつ見てみよう」



(確かAvenueはついていたはず…)



記憶にあるカーブと、似たような曲がり角。
Googleマップを見て1つずつタップしては
ストリートビューを見る。


<トン…> タップする。
こんなに木がたくさん生えていない


<トン…>
カーブの先に見える景色はこんなに圧迫感がない


<トン…>
片側が崖じゃない…




(うーん‥‥)



_____1時間経過。



「あ、ここ似てる」


曲がる先の景色も何となく似てる。


(違うのかな…)
(いやー、こんなに
 道路が傷んでいなかったし…)


こうなったら。AIに相談しよう!
やみくもに探していた前回のときとは違う。


だって今はAIがある。


 ーパチ、パチパチ、パチ。


『S字カーブの…』
思い出す限りの情報を入力した。



AIからの返答は、「分からない」だった。



ただ、思い出したことを文字にすると、
不思議と当時の「別の光景」が頭に浮かぶ。


30年も前の記憶が、呼び覚まされていく。



バスターミナルからサンフランシスコに行った。

覚えているのは、大学の古い木の扉。
物語に出てきそうな、大きな古い金属の鍵。



「あぁ、洋館みたいな建物だった」


白い幹の木が両脇にある、緑がきれいな道。
街はそこまで大きくなくて、ビルの記憶もない。

そうしているうちに、先に判明したのは大学。
でも、どうしても家がわからない。
通った道もわからない。



たまたまタップして出た「9」から始まる郵便番号。


(あ…この番号の並び知ってる!)



30年も忘れていた数字の並びを見て、鳥肌が立った。

確実にこの近辺に自分がいたはずだ。



ここで、推理をしてみることにした。



自転車で移動していた時間や景色から範囲を絞る。

丘だけど山ではない。
途中で街を通った。
スーパーもバス停も右側。


それでも、確証が持てない。



もう一度、Gooleマップで確認する。

やはり、たどり着くのは
最初にここかな?と思ったカーブ。



『似たようなカーブを探して』
と、もう一度
AIに聞いても答えがはっきりしない。



他の記憶がないか。
周りに何が見えたか。
家は何色だったか。
海が見えたか。



もうAIが聞いてくることが
警察官の事情聴取。

それに1つずつ答える私。
この時すでに「3時間」が経過していた。

提案されたカーブは「全部違う」
と、私が答えたときにAIがいった。


『大学が判明しているから
 そっちから、もう一度探してみたら?』





確かに。
違う角度から探すのは、鉄則だ。



もはや、懐かしいというよりも
事件を追っている。


(そうするしかないな…)


大学周辺。
洋館のような建物を出て右に曲がり
緑がきれいな歩道をまっすぐ歩く。
その先、左側に見えた茶色の建物。



ストリートビューを見ても同じ道がない。
こっちでも、また迷子になった。


(眼がしばしばする…)


もう私の体力は、限界を迎えた。
それもそのはず。



AIとの事情聴取と
Googleストリートビューの現場検証で
気づけば、5時間が経過していた。



とうとう、あきらめ私は実家に電話した。
証拠(=写真)を探してくれと頼みこんだ。


本日の調査はここで終了。
_____の、はずだった。



寝る前にまたGoogleマップを開いてしまった。


(絶対、この辺だと思うんだよな…)


「あ!」


その時だった。ふと、思い出した。
昔使っていた住所録にあるかも…?


なぜそれを忘れていたんだろう。
住所録を開く。



「あ!あったーーー!」



ホストファミリーの住所が残っていた。




住所を入れタップ。
<トン…>



「あ…」



その場所は、最初に見つけたカーブだった。


家から出て曲がるまでの距離。
カーブの内側にあった緑の芝生。
今はなくなっていたけれど、
記憶の中にある赤い看板。


30年も経っても、覚えていた断片的な景色。


大学名も忘れ、
フィッシャーマンズワーフの名前すら曖昧だった。
それでも、不思議とカーブの感覚だけは残っていた。


感覚を頼りに5時間かけて見つけた、あの景色。


でも、探している間に見つけたのは、
アメリカ生活を楽しんでいた20歳の自分だった。



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「500」と聞いて思い出したのは、昔セスナで飛んだカリフォルニアの空。
500kmを少し超える距離でした。
何時間も探したアメリカの記憶。
記憶が間違いじゃなかったっていうのが、とてもうれしかったです。

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