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●[VWゴルフ7]最後から2番目のゴルフ

※ これは、2021年3月、ゴルフ8の日本での販売が始まる少し前に書いたものです。「8が最後のゴルフになる」という当時の見立ては、その後のVWの迷走もあって少し違う方向に転がっていくのですが、それはまた別の話として、まずは当時のままお読みください。


遅れていたゴルフ8の日本での販売がようやく始まるようで、車検でディーラーへ行った際にカタログを貰って来た。セールスマン氏によれば、発売日付は再度延期されたが、それでも夏前には上陸するらしい。

現時点では賛否両論あるフロントマスク。しかし、それが無かったら7と見分けるのは(7のオーナーでも)難しいだろう。

車が無いと生活し辛い地方都市の多くの家庭がそうであるように、我が家には2台の車=娘の母親の足となる車+私の通勤用の車があるが、2003年以来、そのうち1台はVWであった。

  • 2003年~2008年 ゴルフ4ワゴンGLi 2000cc 4AT

  • 2008年~2014年 ゴルフ5トレンドライン 1400cc 7AT

  • 2014年~2018年 ポロ ブルーGT 1400cc 7AT

  • 2018年~現在  ゴルフ7ハイライン 1400cc 7AT

ロンドンに単身赴任していた2014~2017年を除くと、もう1台は私の趣味で選んだラテンの車達(プジョー、シトロエン、アルファロメオ、フィアット)であったので、VWは毎日買い物や娘の学校への送迎のために走り回り、時には涼しい顔をして長距離ドライブをこなしてくれた。 そして、実用が実用山から実用を背負ってやって来たような、とことん趣味性を排した乗り味は、ラテンの沼に嵌まりそうになるPetrolhead(←イギリス英語でカーマニア、エンスーないしはカーキチのこと)の正気を保つ役割も果たしてくれた。 このように、VW、特にゴルフは我が家の必需品であったのだが、ゴルフに乗るのはこれが最後になるだろう。何故かと言うと…

1.Petrolheadの悩み

誰も言わないが、現行カローラ(2018年~)は、かなりカッコいいと思う。

カローラスポーツ(2018~)
トヨタ自動車WEBサイトより
カローラ(2019~)
トヨタ自動車WEBサイトより
カローラツーリング(2019~)
トヨタ自動車WEBサイトより

歴代のカローラの中でベストルッキング・カローラであり、プリウスやC-HR、シエンタ、あるいはアルベル、レクサス各車などいささか私の理解を超えるデザインが多い近年のトヨタ車の中にあっては、ベストルッキング・トヨタであろう。 カローラは街中を走り回る営業車やレンタカーとして使われることも多いが、街の風景が綺麗になって大変喜ばしい。

この12代目が登場するまで、ベストルッキング・カローラは1983年~1987年に販売された5代目であった。

5代目 カローラ・セダン
(トヨタ企業サイトより)

5代目カローラ(/スプリンター)は、長らく(1968~2001年、33年連続!)ベストセラーカーの座に君臨し続けた歴代カローラの中でも力作中の力作である。

何と言っても、カローラで初めてFFレイアウトを採用した(*)のが、この5代目。既にホンダシビックは11年前、VWゴルフは9年前にデビューしており、先進国ではFF車がコンパクトカーの主流となっていた。直接のライバルであった日産サニーからも2年遅れの、満を持してのFF化であった。 ストラット式4輪独立懸架、電子制御式4速オートマチック、電子燃料噴射式エンジンなど先進的なメカニズムが投入され、またトヨタのお家芸である徹底したネガつぶしによって当時のFF車の欠点(小回りが利かない、ハンドルが重い、トルクステア、強アンダーステア~タックイン・オーバーステア、耐久性)をほぼ取り除いていた。 クリーンなデザインはジウジアーロによるもので、特に5ドアリフトバックは、トヨタ/日本車離れしたフランス車風のリアスタイルが素晴らしかった。

スプリンター・リフトバック
(トヨタ企業サイトより)

(*)トヨタは、この5年前(1978年)にターセル(/コルサ)でFF車を習作しているが、縦置きエンジンの下にギアボックスを配置する独特のレイアウトで、2500mmというロングホイールベースを持ち、いかにもFF車らしいプロポーションが特徴だった。 このホイールベースは、2代目(1982年~)では2430mmに短縮され、3代目(1986年~)ではさらに2380mmまで短縮される。FFカローラのホイールベースは2代目ターセル(/コルサ)と同じ2430mmであるが、このホイールベースの変遷を見ると、当時のトヨタがどのようにFF車を捉え、消化していったかが分かるような気がする。

初代コルサ
(トヨタ企業サイトより)

なお、元祖「86」は、FF化が見送られ4代目と同じFRプラットフォームのままエクステリアだけ着せ替え、FFカローラセダン&リフトバックと併売された2ドア&3ドアクーペである。この旧態依然としたリジットのリアサスを持つ凡庸なこの車を基に「86」というブランド戦略が展開されたのは、私にはちょっとした驚きであった。

5代目カローラ(←もちろんFFの方)は、カーグラフィック(CG)の長期テストにも取り上げられ、素直なハンドリング、良好な乗り心地、信頼性、実用性などが高く評価された。レポータ氏の結論は次のようなものだったと記憶している。 "唯一最大の問題は、(車好きの)友人に「カローラに乗っている」と大きな声で言えないことである"

諸般の事情で(自分の趣味で選んだラテンの車の方ではなく)ゴルフで通勤する身となって、このCGレポータ氏の言葉を思い出した。 まったく、唯一最大の問題は、(車好きの)友人に「ゴルフに乗っている」と大きな声で言えないことなのである。

2.走る、曲がる、止まる

ゴルフは依然としてCセグメントの絶対的ベンチマークである。 一世を風靡した『間違いだらけの車選び』(徳大寺有恒、1976年)で絶賛された「走る、曲がる、止まる」性能の高さは健在である。

日本で販売されるゴルフ7には1.2㍑または1.4㍑のガソリンエンジンが搭載されて来たが、VWが先鞭をつけたダウンサイジングターボ・エンジンは更に磨きがかけられている。これもまた初期型とは比べ物にならないほど洗練された7速DSGのおかげもあって、1.2㍑版でも街中や高速でパワー不足を感じることはほとんどない。
燃費も良い。地方国道のスムーズな流れに乗って走るようなパターンでは20km/lを超えることも珍しくないし、高速道路でも反則切符を切られない速度を守れば、少なくとも900km程度の航続距離を稼ぐことができる(燃料タンク容量は50㍑)。

無給油で761+240=1,001km走ることができるという表示。(19.5km/L×50L=975kmのはずだが…)

ハンドリングは安定志向だが、225/45R17というひと昔前ならスーパースポーツカーのようなタイヤを履いている(←ハイラインの場合)こともあり、回頭性もかなり良い。少なくとも歴代のゴルフでは一番で良く曲がり、スローイン・ファストアウトをさぼってアクセルオンのまま強引にハンドルを切っても、何事もなかったかのようにコーナーを回れてしまうので、運転が下手になるのが心配になるほどだ。公道上で一般人が運転している限りアンダーステアもオーバーステアも感じることはないだろう。 コントロールしやすく絶対的な制動力も高いブレーキもあいまって、安心して飛ばすことができ、また安楽な高速長距離移動が可能である。

また、ゴルフ5と比べると4cmほど低くなってはしまったが、依然として、同じプラットフォームを使うアウディA3よりは6cmほど全高が高いので、アップライトな運転ポジションを取りやすいし、後席やブーツ(トランク)も広い。
忘れてはならないのは前後左右の視界の良さで、これも代々受け継がれて来たゴルフの美点。 ジウジアーロが初代ゴルフで見事な形に具現化した合理的パッケージのコンセプトは、しっかりと継承されているのである。

初代から続くアイコンである幅広のCピラー。 見た目ほど視界を遮ることはない。

非の打ち所がない、と言いたいところだが、アラを探せば無いことはない。

例えば軽さ。
ゴルフ7は軽い。実際に先代の6に比べて100kgほど軽量化されているが、感覚的にも軽い。良くも悪くも軽い。
良く言えば、軽快なのであって、例えば、発進時にアクセルを少し強めに踏み込んでやると軽やかに羽が生えたように加速するが、その感覚は大出力車の豪快な加速とも異なる独特のもので、少々癖になるぐらい気持ちが良い。
一方、路面の荒れた所を通過した時などの動き、振動、音には、悪い意味の軽さを感じる。良路での乗り心地との落差が大きいせいか、悪路では(ゴルフにあるまじき)「アゴを出す」感じすらある。 雑誌やインターネット上の試乗記を読むと、ゴルフ7に乗り心地について、絶賛する記事とそうでもない記事が混在しているが、この良路と悪路の差の大きさがその一因かもしれない。
試乗記の中にはライン装着のBSトランザとの相性の悪さを指摘するものもあるが、ミシュランPRIMACY 4に履き替えても改善幅は限定的だった。ゴルフ5や6で感じられたCセグメントらしからぬ重厚さ、奥深さは薄れてしまったと言わざるを得ない。

静かさもそうで、同時代の他車と比較しても静かであるとは言えなかったゴルフ4や5とは違って、7は大変に静かな車であるが、その分以前は気にならなかった音が雑音として聞こえて来たりする。例えば、1.4㍑エンジンの気筒休止システムが作動し2気筒モードになった時の音と振動は、同じエンジンを積むポロ・ブルーGTでは感じることがなかったのだが、ネットを検索するとゴルフ7のこれが気になる人が少なくないようで、私もその一人である。

シートもゴルフ5の方が肉厚でかけ心地が良かったし、後期型(=7.5)のデジタルクラスターメータとディスカバープロによるインパネのデジタル化は、従来型のパネルレイアウトをベースにしたため中途半端であるし、おまけにディスカバープロに含まれる純正カーナビはかなりおバカで、知らない土地では使わない方が良い代物(←ではいったいいつ使う笑)であったりもする…

と、まぁ、いろいろあるにはある。 しかし繰返しになるが、これらはアラ探しのレベルであり、全体的には、これまでのゴルフ同様、極めて良質な車である。
そして、良質ではあるがけっして贅沢にはならない紙一重のところで高級感を消し去っているところも歴代ゴルフと共通である。内外装のデザインも遊びは一切なく、良い形ではあるが美的でも官能的でもない。ゴルフは飽くまでよくできた実用的な道具であって、美術品や工芸品のように、いつまでも眺めていたい、触っていたいと思うようなものであってはならないのだ。
それは、プレミアムブランドたるアウディとの棲み分けという大人の事情によるところもあるだろうが、やはり勤勉を倫理とし論理ともする働く人達の車=国民車(フォルクス・ワーゲン)としての矜持であるように思う。頑なに遊びや趣味性を排したVWならではの世界がそこにはある。

それをどう評価するかは個人の価値観に依るわけで、高級感の欠如を物足らないと感じる人も多いだろうが、私の場合、それは(メルセデスなど)車の暗黒面やラテンの沼へ滑り落ちないように引き留めてくれるものであって、それこそがVWに乗り続けて来た一番の理由なのであった。

3.「自動」車への道

3年前(2018年)、特に不満もなかったポロをゴルフ7に買い替えたのは、先進的な運転支援システム(ADAS)を試してみたかったからだ。 ロンドン赴任中に乗っていたメルセデス・ベンツC200やアウディS3にはアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)が装備されており、シルバーストーン・サーキットへ向かうM40や「ブライトンの奇跡」で日本でも有名になった海辺の観光地へ南下するA23などでは重宝した。
(ちなみに、M**は日本の高速道路、A**は1桁~2桁国道に相当するが、いずれも無料。よって、日本のように有料の高速道路と無料の国道を並行して走らせる必要はないわけで、道路維持費は安く済んでいるのではないかと思われる。なお、制限速度は、M**が70マイル(約110km)/h、A**が50マイル(80km)~70マイル(110km)/h。何と高速道路(M**)を降りて国道(A**)になっても制限速度が変わらない!こともあり、これは新鮮な驚きであった。)

ゴルフ7にはさらにレーンキープ機能が加わっており、道路の白線などに沿って自動的に操舵もしてくれる。これは自動運転レベル2に相当する。
(ハンドルから手を離すと30秒ほどでアラームが鳴るように設定されているので、レベル1.5とでも言うべきか?)

[自動運転レベル]

  • レベル1:システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを部分的に行う。

  • レベル2:システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に行う。

  • レベル3:決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。ただし運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければならない。

  • レベル4:決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。

  • レベル5:条件なく、全ての運転操作を自動化。

自動運転と言えるのはレベル3以上だそうだが、ゴルフ7で確かめてみたかったのは、このレベル2の言わば「半」自動運転システムの出来はどうか?本当に使い物になるか?積極的に使おうという気になるか?ということだった。高速道路や自動車専用道路あるいはバイパス道などいろいろな道路&シチュエーションで積極的に使ってみたが、ロンドンでの経験から予想しまた期待した通り、VWのシステムの完成度は高く、充分に実用に耐えるものであった。

例えば、高速道路を運転中に「ドリンクホルダーからペットボトルを取り、キャップを外して飲み物を飲み、キャップを閉めて、ペットボトルをドリンクホルダーへ戻す」といったことが不安なく可能である。
それぞれの機能のオン・オフ操作は簡単なので、運転中にその時々で条件に合わせて切り替え、使い分けることもできる。最近は、高速道路や自動車専用道路では、ACCとレーンキープアシスト使用:40%、ACCとレーンキープアシストのどちらかを使用:30%、どちらも使わない:30%ぐらいの割合で運転しているが、長距離長時間運転の疲労を大幅に軽減してくれ、安全運転に役立っているのは間違いない。

少なくともレベル2相当のADASを(ABSやエアバッグのように)すべての車に早期に義務化すべき時が来たと、声を大にして言いたい。

4.終わりの始まり…?

ディーラーで貰ったカタログやインターネット上の情報によれば、ゴルフ8は、7のプラットフォームを踏襲しつつ、エンジンをマイルドハイブリッド化し、7.5で導入したインパネのデジタル化をさらに進めたもののようだ。 8は7の完成形であると言って良いだろう。そして、それは期せずしてゴルフの完成形~最終形ともなるようだ。 ヨーロッパ、米国、そして中国で電動化の波は予想以上に速く大きい。VWはガソリン車の開発を継続するとアナウンスしてはいるが、おそらくゴルフ8が最後のゴルフになるだろう。

電動車(EV)は100年余の自動車の歴史の「終わりの始まり」なのだろうか?それとも「始まりの終わり」に過ぎないのだろうか? いずれにせよ、VWのEVは、きっとゴルフと同じような、実用に徹した乗り味を持っているに違いない。何年か後、ついの棲家ならぬついの車として付き合ってみたいものである。

とは言え、それはまだしばらく先のことになりそうだ。なにしろ、ゴルフ7は、(車好きの)友人に「ゴルフに乗っている」と大きな声で言えないこと以外に文句のつけようが無いのだから。

まだまだゴルフとの旅は続く…

追記(2026年)

  • あれから5年。結論から言うと、「ゴルフ8が最後のゴルフになる」=「ゴルフ7が最後から2番目のゴルフになる」という当時の見立ては、良い意味で外れつつあります。
    2028年にはゴルフ9が登場し、EVバージョンとガソリンエンジン(ハイブリッド)の両方が存在するようです。つまり、私が「終わりの始まり」だと思っていたゴルフ8は、実際には「延長戦」の入り口だったというわけです。

  • 実は、我が家のゴルフ7は昨年手放してしまいました。今乗っているメルセデス・ベンツCLAシューティングブレークは、ついの車にするつもりで購入したのですが、ゴルフが「良質ではあるが贅沢にはならない」というあの矜持を持ち続けてくれれば、ゴルフ7が私にとっての「最後から2番目のゴルフ」になる日が来るかもしれません。

  • タイトルは、TVドラマ『最後から二番目の恋』から深く考えずに軽い気持ちでパクりました(^^;) ただ、その後時間が経つほどに「これで最後、ではなく最後から二番目の○○と考えた方が、人生は楽しい」という想いが、年々強くなりました。岡田惠和(脚本)はやはりすごいかも。


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たつや300 長文にお付き合い頂きありがとうございました。 また見てください!