多角形・多面体
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"Rotating Fullerene Carbon Molecule, Wireframe Structure"
via Pinterest from Vecteezy
正多角形・正多面体
日本語ではそれぞれに”正”という一文字が付くと数学的には美しいと一般的に考えられています。
美しいかどうかは観察者の観点次第ですが、整然としているか否かは議論の余地が無いのでは、と推察しますが、この形容の仕方の解釈も多岐にわたるようなので、私個人の推察です。つまり IMHO。
正多面体を考えれば、古来から研究されてきたようにそのような数学的対象は限られており、研究対象としては美しいのだと考えてしまいます。例えば古くから研究されている多面体群 Dₙ の例を考えれば明らかです。
正多角形・正多面体は幾つかの外国語で以下のように表現されます:

つまり 英語の regular (と同意義の形容詞)が付加されています。
ここで条件を緩めて、例えば辺の長さが等しくない、或いは凸型でないことを認めると⬇️


位相幾何学的にはこれらは全て同じに見えます。
つまり多角形は円周と、多面体は二次元球面とホモトピー同値です。
これらの図形が整然としているか否かはさておき、tessellation の考え自体は「整然と並べる」ことが第一義的です。

背景
One reason I wrote this article is attributable to the following excellent comment by 江口敬様⬇️

on a highly challenging (not controversial) article titled
"算数教科書の記述「整った形"
by the following author:
Please be cordially advised that I have absolutely no intention of criticizing the aforementioned article, but I wanted to take the liberty of shedding light on translation of some adjectives used in mathematics such as "regular", "normal", "integral", "entire", etc.
日本語の多角形の由来
残念ながらきちんと調べておりません🙇🏻
Wiktionary によると英語の polygon が語源であるとありますが、江戸時代、和算において正多角形を用いた円周率 π の計算がされていたことが知られており、その意味で正多角形という言葉自体はともかく正多角形の概念は正確に理解されていたと考えて全く問題ありません:
関孝和は正131072 (=2^17) 角形を用いて小数点以下10桁迄を計算
弟子の建部賢弘は遥かに大きな数の正多角形を用いて41桁迄を計算
【参考】
小林龍彦、田中薫:江戸時代初期のπの計算について (科学史研究 1983)
小川束:円理の萌芽ー建部賢弘の円周率計算ー (京都大学数理解析研究所 考究録 1997)
竹之内脩:『関孝和、人と業績』、日本数学会(2008)
正則・正規・整域
正多角形の話に戻ると、明治時代に regular polygon を正多角形に訳した、と推察できます。邪推の方が適切かもしれません🤔
一方、数学において「正しい」という意味を持つ形容詞が幾つかあります。
日本語の正則、正規、整、完全等の言葉は英語の regular, normal, integral, entire/perfect に相当します。且つて以下の記事を投稿したのでご参考迄⬇️
日本語で「正則」と「正規」は恐らく用法は異なっているはずで、例えば「非正規労働者」を「非正則労働者」と表現したら❓❓❓でしょう。
以下、少し例を挙げます。
整域 integral domain
『聖域』"Zona Sagrada" (Carlos Fuentes の小説の題名)や『大唐西域記』に登場する西域の方が正直遥かに興味深いのですが、体ではないが零因子を持たない可換環は整域と呼ばれます。具体的な代数的整数環やDedekind整域の理論は別として、構造的にはさほど面白くはありません(私見)。
Integral domain の訳語ですが、「零因子を持たない = 不完全ではない」という視点から整域と呼ばれているのかと推察します。
各国語では整数は以下のように呼ばれます。

可換環論における正規環・正則環 normal ring/regular ring
この分野の標準的な教科書 "Commutative Algebra" (by Hideyuki Matsumura) に非常に詳しく書かれています⬇️

正規環の定義をこの本から引用しました。

一方正則環に関しては非常に記述が長いので、Wikipediaも利用しました。

このように正則環と正規環では定義が全く異なります。
一言で言うと、正規環は代数的に、正則環は幾何的に定義されています。
正規環の定義において integrally closed (【日本語】整閉) という記述があることがとても重要です。具体的には

特に A = Z(整数環)とすると商体 K は Q(有理数体)であり、整である元は整数に他なりません。
これが代数的整数論における代数的整数の定義に繋がります。
数論における正則素数 regular prime
有名な Fermat's Last Theorem の証明(の歴史)にも登場するのでご存知の方は多いと思いますが、以下の二通りの同値な定義があります。

何故このような呼称が生じたのかは FLT の証明において正則素数が果たした役割を考える必要があります。尚、FLT に関連して「Andrew Wiles の証明にロマンを感じた云々」の記事は溢れる程ありますが、以下の記事は少し古いものの注目に値します⬇️
面白いことに irregular prime は無限に存在することが証明されているのに対して、regular prime が無限に存在するか否かは未解決問題です。


群論における正規部分群 normal subgroup
群論 Group Theory において基本的且つ極めて重要な概念です。
一方で正則部分群という用語はありません。
自明な、つまり単位元から成る部分群、及びそれ自体を除いて正規部分群を持たないような群は単純群 simple group と呼ばれます。
有限単純群の分類は20世紀の数学の最大級の成果です。
Rupert property:2026年4月19日更新(追加)
GEMu氏/女史 (失礼🙇) の多面体に関する以下の記事はとても重要なので、この多角形・多面体の記事で簡単に紹介します⬇️
この中で触れられている Rupert property の反例とは以下の論文で示されたものです:
Abstract
A three-dimensional convex body is said to have Rupert’s property if its copy can be passed through a straight hole inside that body. In this work we construct a polyhedron which is provably not Rupert, thus we disprove a conjecture from 2017. We also find a polyhedron that is Rupert but not locally Rupert.

Rupert property は Wikipedia の記事 "Prince Rupert's cube" に詳しく書かれています。
これはとても面白い内容なので、別の記事で紹介したいのですが、現在勉強している方が優先度が高いので、暫く先になりそうです。
+++ 4/19 更新分終わり +++
整数 Z
最後に整数について。
個人的にはこの「整」について特に気になりません。
複素数や虚数という用語は誤解を生じ易いと言われていますが、そのような話を始めると有理数、無理数、代数的数、超越数…という表現は適切なのかとか、私見では殆ど無益な議論に向かうように思えます😒
各国語では整数は以下のように呼ばれます。

機械翻訳で integral を日本語に訳すと積分となってしまいますが、本来は「完全・全体」という意味です。
「整」には完全・全体という意味が込められています✨
数学で整数環を Z で表すのは独語の Zahlen から💫

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