「行儀わるいなあ」と思った日のこと
「また手で食べてる」
フォークもスプーンもそっちのけ。
気づけば、手づかみ食べ。
もうすぐ4歳なのに。
「行儀わるいなあ」
眉間に皺が寄りそうになったとき。
「ああ、そうじゃなかった」
私は、バナナの葉に包まれた、
スリランカカレーを思い出す。
学生時代、
スリランカを訪れたことがある。
庭にバナナやマンゴーの実がなり、
1日に何度も停電する、小さな家に泊まった。
毎日食べるのは、
スリランカカレー。
豆のカレー、肉のカレー、魚のカレー。
その家のお母さん、アンマが、
味つけの違う色んなカレーを
もくもく煙の出るかまどでつくってくれた。
小さな鍋に、具材と
たくさんのスパイスを入れて
ジュージュー炒めていく。
私は煙が目に染みて涙がでたが、
アンマはちっとも平気だ。
バナナの葉を皿にして、
ごはんにあつあつのカレーを乗せる。
それを、ぐちゃぐちゃに混ぜながら食べる。
スプーンは使わない。
手で食べる。
指をスプーンのようにくぼませて、
ポイポイと口に放り込んでいく。
見よう見まねでやってみるも、
ぐちゃぐちゃのカレーが
指の隙間からこぼれ落ちて、難しい。
スプーンでは混ざりきらないものが、
手のあたたかさで、ひとつになっていく。
混ぜるほど、
味が、どんどん深くなる。
それを、手で感じる。
まだ食べるには熱いな。
硬い肉があるな。
あ、魚の骨がある。
口だけではない。
手で味わうのだ。
こどもが手で食べてるとき。
せっかくつくった料理を
ぐちゃぐちゃにされて、
文句の一つも言いたくなる。
「また食べ物で遊んで...」
「もう、やめてよ...!」
でも、そんなとき。
こどもは食感や温度を、
手で味わっているのかもしれない。
余裕のない日は、
後片付けを想像して
やっぱりため息が出るけれど。
そのうち、こどもは
手で味わうことを忘れるだろう。
箸できれいに食べるようになるだろう。
そしたら、
いつか一緒にスリランカカレーを食べてみたい。
もちろん、そのときは。
手で食べよう。
正しいと思ってることって、
実は自分の思い込みだったりしますよね。
「待つこと」が正しいと思っていた私が、
うまくいかなくなった話も書きました👇

