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ビビンバとチャプチェ 

先日、ビビンバ丼を食べた。
冷たいビビンバで、それはそれは美味しかった。
もちろん、石焼きビビンバだって美味しい。
ビビンパでもビビムパでもビビンバでもいい。

本当は 비빔밥 だ。

しかし、わたしはビビンバを決して混ぜない。
少しずつ具を口に運び、合間にご飯を食べ(出来ることならマッコリを飲み)、添えられたコチュジャンさえ少しずつ食べるのが好きなのである。

別に、混ぜて食べる人については何とも思わない。お好きにどうぞ、と思う。

むしろ、ビビンバを混ぜて食べる人の方が多数派だろう。
なんと言っても「混ぜご飯」という名なのだから。

でももしも、「ビビンバは混ぜて食べるものだよ」と言われてしまったら――


   ******

あるとき、彼と和食屋さんへ行った。
カウンター席で、板前さんが直接お皿を供してくれる。
突き出しが出た。
何だったか忘れてしまったが、創作料理系の小鉢だった。
カウンターにお皿を置きながら、板前さんは「よく混ぜてお召し上がりください。」と言った。
その声は聞こえたけれど、わたしは混ぜずにそのまま食べはじめた。
すると隣に座っていた彼が、
「よく混ぜてって言っていたよ。」
とひと言。

わたしは混ぜて食べるのが嫌いなのだ。
納豆、ひとつも混ぜない。
ソースの掛かったヨーグルト、混ぜない。
タコライス、絶対に混ぜない。

わたしの爆弾には導火線がないので、すぐに爆発する。

その時も、カウンターに座ったわたしの心のなかで爆発は起こった。

だが、見た目には分からない。
つまり、彼は何も気づかない。

けれども流石に接客にも長けた板前さんには、私のこめかみの血管が「プチ」といった音が聞こえたようで、
「好きに召し上がっていただいて構いませんよ」とすかさず声をかけてくださった。

そのひと言のおかげで、わたしの爆弾はすぐに消火された。

だが、熾火は残った。

   ******


という事件を、美味しいビビンバを食べながら思い出した。
これがわたしの個人史においてよく知られる、「よく混ぜてって言ってたよ」事件である。

今となっては良い思い出だ。

ところが、同じように大好きな韓国料理で、わたしが積極的に混ぜるものもある。

それは「챕체(チャプチェ)」だ。

わたしは、料理をしなくなってもう数年になる。料理が嫌いになったわけではない。
これには、別に故あり。

ともかく、まだ料理をしていた頃、ビビンバは作らなかったけれど、チャプチェは作ったことがある。

最初は、適当な野菜と、じゃがいもで出来た春雨を茹でたものとを炒めて、味付けして満足していた。

でも、何がきっかけだったか、チャプチェは具材を1種類ずつ炒めて、最後に和える食べ物だと知った。

わたしがチャプチェだと思って作っていたものは、チャプチェではなかったのだ。

それで、ちょっと特別な日に、高級な牛肉を買ってきて、朝からチャプチェを作り、ルームメイトたちに振る舞った。

もちろん、混ぜなければ完成しないので、これは混ぜる。彩りよくなるように、手を入れすぎないように、さっと混ぜる。

1つひとつ炒めるのに、最後には混ぜてしまうところが、何とも言えず贅沢な感じがして、「これはお祝いごとに向く料理だなー。」と思った。

作り手としても、手間ひま掛けるのが楽しく、作り甲斐のある料理だと思う。
食べ出もある。


ビビンバとチャプチェ。
混ぜても、混ぜなくても。
どちらも美味しい。


※トップ画像は Gemini に作ってもらいました。

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