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イブ物語|判断寓話|エラとヨル|第五話 ごめんなさいは、いくら?

地図を書くエラ。
彼女と旅を続ける私。

これは、
銀貨十枚と、
ひとつの「ごめんなさい」の話。



エラとヨル 第五話
【ごめんなさいは、いくら?】


「私が八枚!ヨルが二枚!」

「どんだけ、がめついの!せめて三枚にしてよ!」

「ヨルは何もしてないじゃん!」

「エラのズレた地図、直してるのは誰?」

「書いてるのは私。見るのも私。ヨルは少し直しただけじゃん」

地図が売れた。
それも思わぬ高値で。

銀貨十枚。

その取り分をめぐって、私はエラと喧嘩になった。

ーーこの人、意外とケチだ。

私はエラを睨みながら、そう心の中で呟いた。

私の財布は残り僅かだ。
ここは譲れない。

「もういい!エラのケチ!」

そう言うと私は黙って歩き出した。
エラは銀貨の袋を見つめて叫んだ。

「ヨルの頑固者!怒りん坊!」

遠くからそんな声が響いていた。

黙って歩きながら、私はチラリと振り返る。

しゃがんだまま、ぶつぶつ言っているエラの姿が目に入った。

私はため息をついて、エラの方に引き返す。

「エラ。じゃあさ。決めようよ」

エラは下を向いたまま顔を上げない。

「ちゃんとさ。お互いの取り分を」

そう言うと、銀貨の入った袋を取り上げて地面に並べる。

ちょうど十枚ある。

「まずは地図を書いたから、エラが一枚」

一枚をエラの方に置く。

「そのために地形を調べたから、エラが一枚」

また一枚置く。

「私が直したから、私に一枚」

一枚を私の近くに置く。

「残り七枚」

「これを分けよう」

「半分こにしたら、三枚づつで一枚残るでしょ?」

「それは、エラの分にしていいから」

そうやって分けるとエラには六枚、私に四枚の銀貨が残った。

エラは呟く。

「ヨルは弱いから、一枚ちょうだい」

そう言って私の銀貨を一枚とる。

「商人に上手く説明したから、私が一枚ね」

そう言うとエラから一枚をとる。

「地図を写してるから、一枚ちょうだい」

また、エラが一枚とる。

「地図を売れそうな人を見つけたから、私が一枚ね」

そう言うと私は一枚をとった。

「さっき、ヨルは怒ったから、私に一枚ちょうだい」

手が伸びるがそれを止める。

「エラ。さっき私の悪口言ったから、その分はなし」

エラは少しだけ黙った。

——数を数えているのか、
それとも考えているのか。

それから——

「……それも、ありか」

少しだけ、言いにくそうにしてから。

「じゃ、ごめんなさいで一枚あげるよ」

そう言うとエラは銀貨一枚を私に差し出した。

これで、エラと私には五枚づつ銀貨が残る。

私は一瞬考え、銀貨を受け取ってからこう返した。

「私も怒って、ごめんなさいだからさ」

「この一枚でなんか美味しいもの食べに行こう」

そう言うとエラの目が煌めく。

「足りない分は、ヨルの奢り?」

私は笑いながら答える。

「そういうとこ」

そう言うと二人で笑う。

ーー今日ぐらい少しいい物を食べよう。

そう思いながら、二人で歩き始めた。

やっぱりズレてる。

でも——

なんとかなるものだ。


🔙第四話   第六話🔜



▶️ ズレた二人の物語はこちら

note創作大賞2026 ファンタジー小説部門 投稿作

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