【登山と経営】その共通点とは?ベンチャー企業を渡り歩いた私が辿り着いた思い
2年前にセミリタイアを決意して以来、私は自身のキャリアを振り返る機会が多くなりました。
資格取得や日本全国を巡る旅を通じて、ある共通点が見えてきました。それは、「登山」と「経営」は驚くほど似ているということです。
ベンチャー企業で数々のプロジェクトを経験してきた私だからこそ感じる、両者に共通する本質的な要素を、以下で解説します。
1. 高い山を見上げたときの気持ち
晴れた日に、大きな山の麓に立つと、思わず息をのむことがあります。
その稜線の高さ、距離、そして険しさに、自分がこれから登るのだと思うと、心がざわつく。
期待と不安、ワクワクと怖さが入り混じった、何とも言えない感覚。まさに「武者震い」という言葉がぴったりです。
でも、いざ歩き出すと、山頂はすぐに視界から消えてしまいます。
代わりに目に入るのは、足元の岩、濡れた木の根、分かれ道、崖、急坂。
体力を消耗しすぎないようペースを調整し、呼吸を意識しながら、一歩一歩を積み重ねていく。
登山というのは、派手さのない地味な営みの連続です。
この感覚は、「ベンチャー企業での仕事」や「起業」にとてもよく似ています。大きな目標を掲げながらも、日々の実務は地味で、予測不能で、簡単ではない。私がこれまで歩んできた、ベンチャー企業での仕事やプロジェクト、そして新しい挑戦の数々は、まさに“登山”のようなものでした。
2. ベンチャー経営は登山に似ている
私は35年、ベンチャー企業を渡り歩いてきました。
GoogleやKDDIも、まだ小さくて皆が知らなくて、先が見えない時代に、初期メンバーとして飛び込んでいました。
立ち上げ期、拡大期、変革期。そうしたフェーズで、プロジェクトリーダーとして、あるいは事業責任者として関わることが多くありました。
そんな私にとって、経営とは「競争」ではなく「挑戦」です。
どれだけ速く、誰より高く、というタイプの生き方ではなく、
“この山に登る価値があるのか”、“この先のルートは通れる”、“現在の自分の体力で登れるのか”を判断しながら、登るかどうかを決める。
登ると決めたら、ルートを自分で引き、必要な装備をそろえ、一歩ずつ登っていく。
途中困難があろうとも、予期していなかったアクシデントを乗り越えて、頂上までたどり着く。
それは、誰かと競うのではなく、環境との闘い、自分との闘いであり、”挑戦”です。
私には、トライアスロンを趣味とする経営者の友人が周りにたくさんいて、よくレースに誘われます。
・・しかし、どうも、気持ちが乗りません。
トライアスロンは、「決められたルールの中での競技」、「順位でその優劣を競うレース」、「万全に安全が確保された競技場での戦い」と言えるのではないでしょうか。大企業の役員や軌道に乗った会社を任されたプロ経営者に向いていると言えます。
一方で登山は、「自然と向き合い、変化に対応し、自分の判断で進む挑戦」と言えます。
ベンチャー企業経営やベンチャー企業で働くビジネスパーソンの考え方や、起業家のそれは、登山の方がより近い、のだと感じています。
3. 登山と仕事の間にある共通点
(1) 登山:準備 → 経営:ビジョン設定
たとえば、登山には "準備" が欠かせません。
どの山に登るのかを決め、地図を調べ、ルートを決め、アタックに必要な装備と体力を付ける。
経営で言えば、それはビジョンの設定、資金や情報の収集、プロダクトの開発チームや営業体制の準備にあたります。
(2) 登山:パーティー → 経営:チーム編成
登山では仲間の存在も重要です。自分と同じくらいの体力で、登山スタイルや目的を共有できる人と登るのが理想です。これは、スタートアップや新規事業のチームビルディングとそっくりです。
(3) 登山:外部環境の把握 → 経営:市況の変化への対応
そして登っている最中には、常に外部環境に目を配る必要があります。
突然の天候の変化、足元の不安定な岩場、見落としがちな分岐点。
ビジネスで言えば、市況の変化や競合の動き、見落としがちな製品不具合や顧客の声といった“環境変数”にあたります。
(4) 登山:現在位置の把握 → 経営:KPIのトラッキング
もう一つ、実行フェーズにおいては現在地の把握も大事です。
登山ではコンパスやGPSで正確な現在位置と高度の把握、そして心拍数や発汗量のチェックなどが必要です。
一方の経営ではKPIや財務データのトラッキング、メンバーの体調などがそれに当たります。
(5) 登山:勇気ある下山 → 経営:事業撤退やピボット
そして、どうしても登れないと判断したときは、勇気を持って引き返すことも選択肢に入ります。それは経営で言えば、撤退やピボット。
いずれも命や株主や社員を守るためのリーダーや創業者としての決断であり、恥ではありません。

4. 私のキャリアは“登山型”だった
私は起業家ではありませんし、大企業の社長経験もありません。
でも、いくつものベンチャーで、さまざまな”山”を登ってきました。
KDDIでは当時起業したばかりのPHSの会社でデータ通信事業をけん引し、AOLではブロードバンド立ち上げのプロジェクト責任者になり、Napsterでは日本一の音楽サブスクサービスを目指して立ち上げたものの、頓挫して撤退した苦い経験をした。
しかし、その次に転職したGoogleでは、検索と広告プラットフォームの媒体側事業責任者としてアジアでのGoogle検索の普及に貢献し、カカクコムでは出資を通した東南アジアへのノウハウの輸出をした。
・・などといった経験をしてきました。
それぞれのゴールを「頂上」とするならば、私のキャリアは難攻の山の登頂の連続だったとも言えるかもしれません。
ただ、頂上にたどり着いたときに思うのは、「終わった」というより「次はどの山に登ろうか?」ということ。
一つの山に満足して止まるのではなく、次の山、さらに高く険しい山に挑戦していく。
そんな “連続的な登山” こそが、ベンチャーに生きる人たち、働く社員さんやスタートアップ経営者、連続起業家の本質なのではないかと思うのです。
5. ソロで登るというスタイル
私は基本的に、険しい山への登山においては、ソロ登山が好きです。
全ては自己責任であり、助けてもらえない、また誰かを危険に巻き込むこともない。そして、最終的な判断をすべて自分で行えることに興奮と安心を覚えます。
これは、これまでの仕事やキャリア積み方にも通じています。
もちろん、チームで支え合いながら登るスタイルもありますし、それはそれで尊いものです。
いずれにせよどんな経営スタイルであっても、結局は一人一人は「自分の足で登る」ことに変わりはありません。
6. これからは本物の山に挑む
私は2年前より、ビジネスの第一線から少しずつ距離を取りながら、現在は企業アドバイザーという立場で働いています。
そしてこれからは、仕事の例えとしての登山ではなく、“本物の登山”の比重を高めていこうと考えています。
目標は、日本百名山を一つずつ登っていくこと。
これまでビジネスの山を登り続けてきた自分が、今度は自然の山々に向き合い、また違った学びと景色に出会えたらと思っています。
今回の記事で深く考えた思考や、百名山への挑戦の過程で感じたことも、またnoteで綴っていけたら。
そんな静かな挑戦を、ここから始めてみようと思います。
以上、長文をお読みいただき、ありがとうございました!
この記事が刺さったらスキで応援していただけると嬉しいです。
こちらの↓記事もお楽しみください。
と、
