⑦AIでは伝えられない旅の魅力とは? |47都道府県を巡って気づいた、五感で得る体験の重要性
■ AIやネットで知識は得られても、「体験」は得られない
今の時代、知識を得る手段は無限にあります。屋久島の白谷雲水峡の太鼓岩について知りたければ、書籍でもネット記事でも詳しい情報が得られます。動画サイトにはドローン映像や観光ガイドの解説動画、SNSには現地を訪れた人々の体験談があふれ、生成AIを使えば、要点を簡潔にまとめた解説もすぐに手に入ります。VRゴーグルを付ければ3Dでかなりリアルに疑似体験もできます。
そんな便利な時代に、旅に出ることの意味が薄れてきたと感じる人がいても不思議ではありません。
でも、本当にそうでしょうか?
私は、全国を旅した今だからこそ、知識だけでは決して得られない「現地の体験」の重みを強く感じています。
■ 【具体例】 情報を知ることと、体験することの違い
たとえば、GeminiやChatGPTに「屋久島の白谷雲水峡の太鼓岩について教えてください」と聞いてみてください。
Geminiの場合で、1,300文字ほどでその地理や魅力の解説だけでなく、登山ルート、難易度、必要な装備などを丁寧に語ってくれます。
では、更に、「その太鼓岩の上に立った時に感じる空気や、雲の割れ目から見える空の青さを臨場感たっぷりに教えてください」と頼むと、また1,000文字ほどの詩的な”魂に響くような忘れられない体験”についての解説文章が返ってきます。
でも──実際に太鼓岩に立ったことのある私からすると、「ちょっと違うんだよな・・」、「これ分かってもらえるかな・・」というのが正直な感想です。言葉としては正しいし、美しくもあります。でも、肌に触れる湿気、太陽の日射し、屋久杉や苔の匂い、静寂を破る鳥の声。そうした要素がないと、本当の意味で「現地にいる感覚」には届かないのです。

■ 旅の思い出は「五感」のセットで記憶される
旅先での記憶は、視覚だけではありません。音、匂い、味、風の感触。すべてがセットになって心に残ります。
たとえば、真冬の北海道・小樽で食べたあつあつのホタテ焼きは、冷たい空気と手袋越しの湯気の温かさと一緒に記憶に残っています。奈良県で鹿にせんべいをやった時の、追いかけられながら頭を押し付けられた感触。山口県の秋芳洞の中のひんやりとした空気。和歌山県の高野山奥之院に近付いた時に感じた霊気。富士山の頂上や大雪山緑岳の頂上で感じた強い風・・。

そして、北海道支笏湖畔のぬる湯、岩手県国見温泉のグリーンの湯、秋田県の乳頭温泉のミルク色の湯、兵庫県有馬温泉の鉄の香りの湯、別府温泉保養ランドの泥の湯、熊本県黒川温泉の7種の湯、長崎県雲仙温泉の硫黄の湯・・。ここでは挙げきれない数の温泉に浸かりましたが、全てのお湯の感触、匂い、湯気の向こうに見えた星空──その場にいなければ絶対に味わえなかった瞬間を、今でも思い出せます。

■ 人との「出会い」こそが旅の最大の価値になる
人との出会いも、旅のリアルな価値のひとつです。
本州最北端の大間港で話しかけてくれた漁師さん。コロナ禍で応援の気持ちで訪れた黒川温泉の宿で地元の焼酎を一杯振る舞ってくれた女将さん。徳島でお遍路の難所の山道でベテランのお遍路さんに「がんばってね」と声をかけられた時の温かさ。そうしたふれあいや方言交じりの会話は、SNSにもレビューサイトにも書いていない“その土地の空気”として心に残ります。
■ オンライン時代だからこそ、「リアル」な旅が私たちを豊かにする
もちろん、すべての人が現地に行けるわけではありません。だからこそ、AIや映像、解説コンテンツはとても有意義です。でも、それらはあくまで「入口」。旅の本質を知るには、自分の足でその場に立って、見て、触れて、感じることが必要です。
そして、その「感じたこと」は、きっと人生の糧になります。
生成AIが台頭し、どこでも情報が得られる今の時代において、「なぜわざわざ旅に出るのか?」という問いが浮かぶのも自然なことです。
でも私は、こう答えます。
「だからこそ、旅に出よう」と。
現地でしか味わえない風景、空気、出会いが、あなたの記憶と感性を豊かにし、画面越しでは決して得られない“何か”を残してくれます。
だからこそ、旅はこれからも、リアルであるべきだと、私は思っています。
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