『カメラを止めるな!』から20年前の「変身三部作」を思い出した

昨日、「あなたが選んだ20本を見せてほしい」という記事を書いた。

はてな匿名ダイアリーの「年間100回以上映画館に通う俺が選ぶ『これ観てない奴とは正直、映画の話をしたくない』20選」を読んで、じゃあ私も好きな映画を20本選んでみよう、と思ったのである。とにかく私が好きで、観たあとに何かが残った映画を20本選んだ。

ちなみに、あの20本には大した選考過程もない。最初の5本は、以前別の記事で好きな映画として挙げたものをそのまま選んだ。

それ以降は、ほとんど思いついた順である。

「あれも好きだったな」「じゃあこれも入れよう」と書いていって、20本になったところで終わった。だから、ジャンルのバランスを考えたわけでもなければ、「映画というものに対する私の思想」を20本で表現しようとしたわけでもない。

本当に思いついた順である。

だから『切腹』の次に『ジェミニマン』が来て、その次が『ファンタジア』なのである。どうしてこうなった。

その20本の中に、『カメラを止めるな!』を入れた。

そして、その夜、風呂に入っているときに、ふと思った。

あれ?『カメラを止めるな!』って、「変身三部作」と似てないか?

「変身三部作」という妙なアニメがあった

2004年にUHFテレビ(この表現懐!)放送された、『超変身コス∞プレイヤー』『ヒットをねらえ!』『LOVE♥LOVE?』という三本のアニメがある。

通称「変身三部作」。

私はこれが割と好きである。

『超変身コス∞プレイヤー』は、正直そんなに面白くない。

美少女が変身して怪獣と戦うのだが、バトルシーンの中にお色気シーンがあるのではなくて、お色気シーンの中にバトルシーンがあるようなアニメだ。まあそんな感じである。

ゼロ年代前半の深夜アニメ、特に数字の大きなチャンネルの深夜アニメを知っている人なら、「ああああいうのね」と分かっていただけるかもしれない。

正直、今でも覚えているのはヒロイン達のえっちなシーンだけだ🤣。

ところが、同じ枠で続いて放送された『ヒットをねらえ!』を観ると、話が違ってくる。

『超変身コス∞プレイヤー』は、『ヒットをねらえ!』の世界で制作されている番組だったのである。そして、その番組を作っている側の物語になる。ちなみに主人公の新米プロデューサー、声が能登麻美子だ。これだけで勝利の方程式完成だ。JFKだね。JFKは2005年だろとか言わない。そういえばこの番組もサンテレビで放映されていたな。やたら延長したんじゃないかと思ったら、このアニメは月曜深夜放映だったようだ。それならサンテレビの野球延長の被害には遭わなかったんだな。阪神戦も深夜アニメも大好きな私は毎回身を引き裂かれる思いだったよ😭

脱線した。さて、新米プロデューサー(CV能登)を中心に、『コス∞プレイヤー』の制作現場が描かれる。すると、「あの不思議な場面はこういうことだったのか!」「あの、明らかに前の話と繋がらない妙な展開ってそういう事情だったのか…」となる。

さらに三作目の『LOVE♥LOVE?』。こちらはなんかラブコメだったな。今度は主人公が男子高校生に移る。主人公は『コス∞プレイヤー』のメイキングカメラマンとして製作現場に入っている新米カメラマン…というのは仮の姿、実は『超変身コス∞プレイヤー』の原作者なのだ! なんだこの大盛属性。そして主人公とヒロイン達が「To LOVEる」みたいなお色気ラブコメを繰り広げる。のだが…

まあ、つまり、

番組そのもの

番組を作っている人たち

番組に出演している人たち

と、カメラがどんどん外側へ回り込んでいくのである。三本を全部観ると、最初の『超変身コス∞プレイヤー』の見え方が変わってしまうのだ。まあそう見ても面白くないアニメなんだけど。

あれ? これ『カメラを止めるな!』じゃないか

ここまで思い出したところで、風呂の中で「あっ」となった。

これ、『カメラを止めるな!』で私が好きなところと同じじゃないか。

『カメラを止めるな!』も、最初はゾンビ映画から始まる。

ところが、何かがおかしい。芝居がおかしい。間がおかしい。展開もおかしい。カメラは「おっ、長回しなんだな」と思うけど、その長回しが全然うまくいっていない。なんだこれは。

ところが後半になると、その映画がどうやって作られていたのかが明らかになっていく。

すると、前半で「変だな」と思っていたものが、次々と意味を持ち始める。ああ、だからああなっていたのか!となる。

ここが重要なのだと思う。

単なる「実はこういう真相でした」というどんでん返しではなく、一度見た映像そのものの意味が変わるのである。

最初に「下手だな」と思った芝居。「なんでこんな演出なんだ」と思った場面。「ここ、おかしくない?」と思った展開。そして、「なんでこんな意味のない長回しをやってるんだ? 予算を抑えるためなのか?」という疑問。
ところが裏側を知ると、それらが全部、違って見えてくる。

そして、もう一度最初から観たくなる。

これは「変身三部作」も同じだった。

『超変身コス∞プレイヤー』だけ観れば、私は今でも「面白くない」と言う。しかし、『ヒットをねらえ!』『LOVE♥LOVE?』まで観たあとでは、その「そんなに面白くないアニメ」が面白くなる。…いや、面白くはないな。面白くなかったことまで含めて面白くなる。

なかなか変な作品である。

『カメ止め』より14年前にやっていた

だからといって『カメラを止めるな!』が「変身三部作」を参考にした、などと言うつもりはない。映画の中で映画を作る、いわゆる「劇中劇」の歴史なんて、それこそ映画史と同じくらい古い。

ちょっとシネフィルっぽく言うと😏映画で言えば『雨に唄えば』や『8 1/2』、『アメリカの夜』もある。さらに、「同じ出来事を別の視点から見直すことで、その意味が変わる」ということなら、小説の『アレクサンドリア四重奏』なんかも思い出す。

「作品そのもの」と「それを作る人間」を描いた映画はいくらでもある。ただ、最初にちょっと妙な完成品を見せ後からその制作過程を見せることで、最初に観た映像の意味を変えてしまう。というところまで来ると、かなり近いものを感じる。

なるほど。私はこういう構造が好きだったのか。

20本を選んだときには、そんなことは全然考えていなかった。むしろ「基準も特にない」とまで書いた。実際、最初の5本を除けば思いついた順に並べただけなのだから、本当に基準などなかった。

ところが、好きなものを適当に並べてみると、後から自分でも気づいていなかった共通点が見えてくることがあるらしい。そう考えると、「好きな映画を20本選ぶ」というのは、自分がどういう作品を好きなのかを確認する作業でもあるのかもしれない。

選んでいる最中には分からないが、選び終わって、しばらく経って、風呂にでも入っていると突然つながった。

これは大発見では?

風呂の中で私はちょっと嬉しくなった。

「変身三部作」と『カメラを止めるな!』。

これ、結構面白い発見じゃないか。2004年の深夜アニメと『カメ止め』を結びつける人なんて、そうそういないだろう。

これは一本noteを書けるぞ。

風呂から上がって調べてみた。

なんと、2018年にブログに書いてる人がいた。しばりやトーマスさんである。

しかも、ちゃんと「変身三部作」と『カメラを止めるな!』の構造を比較して書いていた。

ですよねー。

しばりやトーマスさんは、あの伝説の番組『誠のサイキック青年団』のハガキ職人だったころから「この人すごいなあ」と思っていたのだが、こういうところでも先にいる。

私が風呂の中で、「これは大発見では!?」と思っていたところを、しばりやトーマスさんは2018年に通過済みだった。

さらに調べたら、他にもnoteで書いている方がいた。

いやはや。

私は風呂の中で20年越しに再発見した。そして風呂から上がって検索したところ、古のオタクたちは、とっくにそこは通過済みだった。

ですよねー。

でもまあ、いいのだ。

誰が最初に気づいたかという話ではない。20本の映画を思いついた順に並べてみたら、20年前に好きだったアニメと今好きな映画が、突然自分の中で一本につながった。

そういう発見があるから、好きな映画の話は面白い。

追記 実は以前にも、2006年版『涼宮ハルヒの憂鬱』の時系列シャッフルと、タランティーノ映画の時間構成を重ねて考えたことがある。「これは面白いんじゃないか」と思って調べたら、それも既に誰かが書いていたことがあった。

古のオタク、だいたい先にいる。🤣


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