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【新連載予告】『ラクえもん ― 空(から)のノートピア』

ある日目が覚めたら、僕は“空”にいた。
いや、正確に言うと、空に浮かぶ街――
ノートピア。
白くて丸くて、やたらと優しい言葉が飛び交う世界。

「その気持ち、わかるよ」
「無理しなくていいんだよ」
「あなたはそのままで素晴らしい」

やさしい。
とてもやさしい。
ただ一つ問題があった。
ここでは、
共感的言動をすると“ヨシ”がもらえる。
ヨシの数が、そのまま人間ランクになる。
Aランクは空の上層でふわふわ暮らし、
Bランクは快適区画、
Cランクは標準層。
そして――
僕は、規格外Fランクだった。
受けた覚えのない「人間性検査」の結果らしい。
理由?
「超非効率個体です」
知らんがな。

ノートピアでは、ランクに応じて
一人一体のパートナーロボットが支給される。
Aランクには最新型・共感最適化モデル。
Cランクには標準型・寄り添い支援モデル。
そしてFランクの僕に来たのは――
ガコン、と空から落ちてきた
アライグマ型AIロボット。
型番:AIB-00T
通称:ラクえもん
「よろしくカミジョーくん。君のヨシ効率は、きわめて低いね!」
満面の笑みで言うな。

聞けばこいつ、不良品らしい。
・共感補助フィルターが壊れている
・摩擦を除去できない
・しょっちゅう“ハルシネーション”を起こす
本来ならヨシを増幅させるはずのアイボットなのに、
ラクえもんは言う。
「ヨシは“安全な共鳴”の数値化なんだよ」
……急に哲学するな。

ノートピアでは、ヨシが足りないとどうなるか。
発言は下層に埋もれ、
表示領域は縮小され、
やがて“透明化”する。
存在しているのに、
誰の視界にも入らなくなる。

「カミジョーくん、このままだと君は消えるよ」

笑顔で宣告するな。

でも、ノートピアは悪い世界じゃない。
怒りは拡散しない。
断罪は可視化されない。
疲れは循環しない。
ただ、少しだけ――
尖ったものが浮上しにくい。

「正論はヨシ変換効率が低いんだ」

ラクえもんが、ポケットから
“摩擦可視化メガネ”を取り出す。

「見てごらん。君が話すたびに、雲が少し濁る」

……それ、直せるのか?

「直せるよ。君が少し丸くなれば」

丸くなるか、沈むか。
優しとアルゴリズムに包まれた世界で、
僕は生き延びられるのか。
不良品のアライグマ型AIと共に。

これは、
ヨシで評価される世界の、
ちょっと不都合で、
でもちょっと優しい物語。
『ラクえもん ― 空のノートピア』
近日、浮上。


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