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欧州主要リーグクラブの集客状況

プロラグビークラブは、どれだけ観客を集められるのか。

これは現在、世界のラグビー界全体が向き合っているテーマのひとつだと思います。

テストマッチやワールドカップ、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのツアーのような特別な試合であれば、大きなスタジアムが埋まることは少なくありません。しかし、各国リーグのレギュラーシーズンとなると、少し事情が変わってきます。

毎週、あるいは隔週で行われるホームゲームに、どれだけの人が足を運ぶのか。

そこには、チームの強さだけでなく、地域との結びつき、スタジアムの規模、アクセス、観戦文化、そしてラグビーやそのクラブがどれだけ「日常のスポーツ」として根づいているかが関わってきます。

その意味で、The Rugby Paperの記事が元ネタのRugbyPassの記事を見ると欧州主要リーグ圏のレギュラーシーズン観客動員は、興味深いデータでした。

対象となったのは、フランスのTop14、ユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップ(以下URC)、イングランドのGallagher Premiership。URCには南アフリカ勢も含まれるため、厳密には「欧州クラブ」だけではなく、「欧州主要リーグ圏のクラブ動員」と見た方が近いかもしれません。

この集計で最も平均観客数が多かったのは、フランスのボルドー・ベグルでした。平均観客数は34,578人。前年から5%増加したとされています。

2位は南アフリカのストーマーズで26,153人。以下、トゥールーズが21,836人、ブリストル・ベアーズが21,347人、レンスターが20,789人、ハーレクインズが20,423人と続きます。Top14、URC、Premiershipの計40クラブのうち、平均2万人を超えたクラブは6つでした。

まず見ておきたいのは、これが決勝戦や一度きりのイベントではないという点です。

ボルドーの平均34,578人は、レギュラーシーズンの数字です。ストーマーズの26,153人も同じです。つまり、欧州主要リーグ圏には、クラブのホームゲームで2万人から3万人規模の観客を継続的に集めるチームがあるということになります。

もちろん、この数字をそのまま単純比較することはできません。

フランス南西部におけるラグビーの文化的な位置づけ、南アフリカの都市圏クラブが持つ地域代表性、イングランドやアイルランドのクラブ史、使用スタジアムの規模、チケット価格、開催曜日、都市交通の条件。観客動員には、さまざまな要素が絡みます。

それでも、この数字は、クラブラグビーが代表戦とは違う形で大きな観客を集める興行になり得ることを感じさせます。

ボルドーとトゥールーズが示すフランスクラブの基盤の厚さ

特に目を引くのが、ボルドー・ベグルです。

ボルドーは近年、欧州カップ戦でも存在感を強めているクラブですが、観客動員でも欧州主要リーグ圏の先頭に立っています。平均3万人台半ばという数字は、プロラグビークラブとして見てもかなり大きなものです。

この数字は、チームの成績だけで説明するより、都市とクラブの関係、スタジアムの器、そして週末にクラブを見に行く習慣が重なった結果と考えると分かりやすそうです。

同じフランスのトゥールーズも平均21,836人を記録しています。

トゥールーズは言うまでもなく、フランス国内王者24回、チャンピオンズカップ優勝6回を誇る欧州屈指の名門クラブです。ボルドーほどの数字ではありませんが、2万人を超える平均観客数は、クラブとしての基盤の厚さを感じさせます。

ここで見えてくるのは、フランスラグビーの市場規模です。

フランス代表が強いからクラブも見られる、という単純な関係だけではないように思います。むしろTop14そのものが、地域密着型のプロスポーツ興行として強い存在感を持っている。クラブの勝敗、スター選手、欧州大会、地域の誇りが絡み合い、国内リーグそのものが大きなコンテンツになっているように見えます。

ボルドーやトゥールーズの数字は、その一端を示しているのではないでしょうか。

ストーマーズの伸びと南アフリカ勢の存在感

南アフリカのストーマーズも興味深い存在です。

平均26,153人は、ボルドーに次ぐ2位。さらに前年比では1試合あたり3,269人増と、今回の集計で最大の伸びを示したクラブとされています。

ストーマーズはケープタウンを拠点とし、大きな都市圏とスタジアムを背景に持つクラブです。URC参入以降、南アフリカのクラブは国内リーグだけではなく、欧州クラブとの競争軸の中に置かれるようになりました。

これは移動や日程の負担を生む一方で、クラブの試合に国際的な文脈を与えています。国内のクラブでありながら、欧州勢と同じリーグで戦う。その構図は、観客にとってのホームゲームの意味にも影響しているかもしれません。

少なくとも、ストーマーズの観客動員を見ると、南アフリカ勢がURCの中で単なる参加チームではなく、興行面でも大きな存在感を持っていることが分かります。

レンスターの減少が示す会場の難しさ

一方で、観客動員は常に右肩上がりになるわけではありません。

今回のデータで目を引くのは、レンスターの減少です。レンスターは平均20,789人を集めており、今なお欧州有数の集客力を持つクラブです。しかし、前年比では1試合あたり5,737人減と、今回の集計で最も大きく数字を落としたクラブとして報じられています。

レンスターは競技面で見れば、国内リーグと欧州カップの双方で実績を持つ欧州屈指の強豪です。アイルランド代表の中核を担う選手も多く、毎年のようにタイトル争いに絡んでいます。それでも観客数は減っています。

背景として報じられているのが、本来のホームスタジアムであるRDSアリーナが再開発工事のため使用できず、アビバ・スタジアムでの開催が増えたことです。

RDSとアビバ・スタジアムは、どちらもダブリン市内にあり、距離自体は大きく離れているわけではありません。ただ、RDSはレンスターの日常的なホームである一方、アビバは代表戦でも使われる大規模スタジアムです。

つまり、問題は単純な移動距離というより、会場の性格や空気の違いにありそうです。

アビバは大きな会場ですが、大きければ必ず良いというわけではありません。空席が目立てば、スタジアムの雰囲気も変わります。観客にとっての「いつものホーム」という感覚も、少し薄れる可能性があります。

これは、プロラグビークラブの集客を考えるうえで難しい点です。

会場は大きければよいわけではなく、大きすぎれば空席が目立ちやすくなります。一方で、小さすぎれば集客の上限が早く来ます。クラブに合った規模の会場で、継続して通う習慣を作れるか。観客動員は、そのバランスにも左右されるのだと思います。

参考としてのリーグワン

最後に、参考として日本のリーグワンも少し見ておきます。

ジャパンラグビー リーグワンは、2025-26シーズンに過去最多となる総入場者数1,322,343人を記録しました。対象はディビジョン1、2、3のリーグ戦、プレーオフトーナメント、入替戦を含む全223試合です。ディビジョン1とディビジョン2はいずれも過去最多を更新しました。

ディビジョン1のクラブ別観客動員では、東芝ブレイブルーパス東京が総観客数115,033人、1試合平均12,781人でトップ。トヨタヴェルブリッツ、東京サントリーサンゴリアス、横浜キヤノンイーグルスも平均1万人台に乗せています。

この数字は、日本のクラブラグビーにとってひとつの到達点と言えそうです。一方で、ボルドーの34,578人、ストーマーズの26,153人、トゥールーズやレンスターの2万人台と比べると、規模はまだ異なります。

ただ、この差をそのまま「人気の差」とだけ受け取ると、少し単純化しすぎかもしれません。

リーグワンには、秩父宮のような共有性の高い会場を複数クラブが使う構造もあります。一方で、熊谷や静岡のようにホームの輪郭が比較的見えやすい例もあります。さらに、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのように、チーム力が高くても主会場の収容規模が平均観客数に影響するケースもあります。

こうして見ると、観客動員は単なる人気順ではなく、クラブがどの場所で、どの規模の会場を使い、どのようにホームゲームを続けているのかによっても変わってくるように見えます。

プロラグビークラブは、代表戦のように一度の熱狂で完結するものではありません。毎週、あるいは隔週で続いていくからこそ、少しずつ習慣になり、文化になっていきます。

平均観客数とは、その習慣がどれだけ根づいているかを知るための、ひとつの手がかりなのかもしれません。

ボルドーの3万人台も、ストーマーズの2万人台も、レンスターの減少も、リーグワン上位クラブの1万人台も、それぞれ違う条件の中で出てきた数字です。

そのクラブがどの街で、どんな会場で、どのように見られているのか。人口や経済規模、都市交通、スタジアム環境まで含めた、クラブと地域の関係も少し見えてきます。

そう考えると、観客動員の数字はただの結果ではなく、クラブと地域とスタジアムの関係を映す数字なのかもしれません。

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