オールブラックスに何が起こっていたのか?-ロバートソンの「失脚」とレニーの「新たな航海」-
2026年1月15日、世界中のラグビーファンに激震が走りました。
ニュージーランドラグビー協会(NZR)が、ワールドカップまで4年契約の途中でスコット・ロバートソン氏の退任を発表。
クルセイダーズで圧倒的な成功を収め、大きな待望論の中で代表ヘッドコーチに就いた男が、契約を残したまま2年でポストを去ることになりました。
そして後任に選ばれたのは、現在日本のコベルコ神戸スティーラーズの指揮を執っているデイヴ・レニー氏でした。
端から見ると突然の政権交代のようにも映りますが、しかし、実際にはこの流れはロバートソン体制就任1年目の2024年から少しずつ歪みが生じ始めていました。
果たして、オールブラックスに何が起こっていたのか?
今回は、これまであった様々な報道と黒猫の私見を含めて、整理していきたいと思います。

"ロバートソン体制に託された「新時代」"
2023年3月21日。ロバートソン氏が、クルセイダーズを7度連続でスーパーラグビー優勝に導いた実績を引っ提げ、2019年に日本代表をワールドカップベスト8へ導いたジェイミー・ジョセフ氏との争いを制し、フォスター体制後のオールブラックス新HCに就任することが発表されました。
ニュージーランド国内では、かの有名なブレイクダンスを舞う若き名将が国内での圧倒的成果を武器に停滞感のある代表に新しい風を持ち込んでくれるという期待感が強く、それはまさに「新時代の到来」を感じさせるものでした。
その期待を支えていたのは、ロバートソン氏が単に勝つだけのヘッドコーチではなかったことも大きいのかも知れません。クルセイダーズやカンタベリーでの彼は、チームに物語やテーマを与え、選手同士をつなげる能力で高く評価され、実際に当時エディ・ジョーンズHC解任後のイングランド代表ヘッドコーチの次期候補にも名前が挙がり、オールブラックスHC就任前に指揮を執ったバーバリアンズでも招集された選手達からもその手腕は高い評価を受けていました。
コーチング体制も、FWコーチにジェイソン・ライアン氏、アタックやバックス面にブルーズのレオン・マクドナルド氏とハリケーズのジェイソン・ホランド氏、ディフェンスコーチにスコット・ハンセン氏というロバートソン氏と近しい関係を持った、しかも現役のスーパーラグビーNZチームのヘッドコーチ、コーチ等を登用するという大規模なものとなり、ロバートソン氏のテストマッチ未経験というデメリットをサポートする為に「教授」の愛称で知られるサー・ウェイン・スミス氏をパフォーマンスコーチとして起用するなど、万全を期した体制が作られました。
しかし、今となってはこの万全の体制に見えたスタートは「期待が大きすぎた」とも言えるのかも知れません。

代表のヘッドコーチ、とりわけオールブラックスのヘッドコーチともなれば、話は急に複雑になります。
選手、コーチ陣全体を総括する事だけが仕事だけではなく、強化部門、協会幹部、多くのサポートスタッフ、スポンサー、メディア、そして当然のように勝利を求める国民の期待まで含め、世界のラグビー界における最も巨大なブランド全体を背負って動かしていく立場になるからです。
しかしそれでも「彼ならできるのではないか?」と思わせてしまうほど、ロバートソン氏のコーチングキャリアは、ほとんど傷のないほど眩いものでした。だからこそ私も、その成功がオールブラックスでも続いていくと、少し思い込みすぎていた部分もあったのかも知れません。
もっと言うなれば、この体制は始まる前からすでに特殊でした。
というのも、NZRは2023年3月の段階で、当時イアン・フォスターHCのワールドカップでの最終結果を待たずに、次期ヘッドコーチをロバートソン氏に決めていたからです。これは史上初の出来事であり、フォスター氏は判断を大会後まで待ってほしい意向だったとされていますが、その希望は通りませんでした。
結果として、2023年のワールドカップでオールブラックスは「既に次の政権が決まっている」という状態でフランス大会へ向かうことになってしまいます。
しかも、この年はヘッドコーチの交代だけではありませ。サム・ホワイトロック、ブロディ・レタリック、アーロン・スミスら、長年オールブラックスを支えてきた名選手たちも代表キャリアの節目を迎え、黒いジャージを脱ぎました。
さらにコーチ陣でも、ジョー・シュミット氏とスコット・マクラウド氏、ギルバート・エノカ氏の大会後の退任が決まっており、20年にわたってチームマネージャーを務めたダレン・シャンド氏も役目を終えることを発表していました。
要するにロバートソン体制は、単なるヘッドコーチ交代ではなく、20年近く続いたグラハム・ヘンリー体制からの系譜を脱却し「新時代のオールブラックスの構築」を意味するものだったようにも感じます。
実際に、その特徴は早速選手選考にも表れました。2024年は従来のセレクター制度を廃止し、ロバートソン氏と各アシスタントコーチが担当ポジションごとに選手を見てメンバーを選ぶ方式へ移行。つまり、各コーチの判断がこれまで以上に強く反映される体制でした(結果的にこれが後の火種を呼ぶ原因となってしまったのかも知れませんが)。
"2024年から始まっていた綻び"
その象徴の一つがホスキンス・ソトトゥの扱いでした。2024年6月、ブルーズの優勝シーズンでスーパーラグビー・パシフィックMVPに輝く事となるソトトゥは、ロバートソン体制の最初のオールブラックスメンバーから外れました。しかもその後も代表復帰には至らず、2025年には本人の周辺で海外移籍や代表資格変更の可能性まで報じられるようになります。
もちろん選考には色々な事情がありますが、少なくとも端から見れば「調子の良い選手を選ぶ」というより「自分達の基準で選ぶ」という色がかなり強い体制のように映りました。
ただ、その仕組みが安定して機能するには、前提としてコーチンググループそのものが強く結束していなければならないでしょう。
しかし実際には、その前提が早い段階で崩れ始めていました。

2024年8月にレオン・マクドナルド氏が「指導スタイルの違い」を背景にオールブラックスを離れ、2025年10月にはジェイソン・ホランド氏も契約を延長せず、チームを去りました。つまり結果として、2023年に「万全」に見えた体制は、僅か2年で大きく形を変えていました。ロバートソン体制が不安定に見えたのは、試合内容だけでなく、この骨組みの揺らぎも大きかったように思います。
それでも数字を見れば、ロバートソン体制の2年間は決して失敗ではありません。また、抜擢したウォレス・シティティやファビアン・ホランドなどの若手FW選手が成果を残した事も事実です。初年度の2024年は14試合で10勝4敗、2年目の2025年も13試合で10勝3敗。通算でも27試合で20勝7敗であり、勝率は74%。数字だけを切り取れば、即座に退陣論が噴き出すような成績には見えないでしょう。
2024年もイングランドに連勝し、アイルランドにも勝利しています。そして、しかし、ウェリントンでアルゼンチンに敗れ、南アフリカ遠征では2敗。にはフランスにも競り負けました。
2025年も、アルゼンチンへの初となる敵地での敗戦や南アフリカ戦43対10の歴史的大差での大敗が強く印象に残っただけでなく、結果を求めるあまり、起用や選考が保守的にも見えるとの声やロバートソン自身は結果的にそうなっと否定したもののスコッドでは選手やコーチのクルセイダーズ勢の登用の多さもあり、外部からは「クルセイダーズ贔屓ではないか?」という見方も出ていました。
また競技面以外でも火種が出ていました。TJ・ペレナラのマオリの権利保護を訴えるのハカをめぐる件や、日本でプレーするリッチー・モウンガのNZ復帰を巡る論争、規律違反に対する処分の一貫性の無さに選手側が不満を持っていたとも報じられ、さらにクルセイダーズ時代は「前向きで、楽しく、エネルギッシュ」だったロバートソン氏が、代表ヘッドコーチ就任後はプレッシャーから常に張り詰めている状態になり、かつての彼ではなかったという後の報道で出るなど、チーム内部の意思統一や指導体制に疑問を向ける材料が積み重なっていた状態だったのかも知れません。
"成績以上に深まった体制への不信"
さらに2025年末からシニア選手とコーチ陣との摩擦をめぐる報道も強まっていました。2026年の1月中旬には、アーディ・サヴェアが2025年の北半球遠征中にデイヴィッド・カーク会長への強いフィードバックを伝え、主要なコーチ変更がなければ将来の代表復帰が不透明になり得る、という報道が出るなど、これまで以上にロバートソン体制に更なる不穏な空気が漂う中、NZRはシーズン終了後恒例の「レビュー」を進めていました。
そして2026年1月15日、NZRはロバートソン氏のヘッドコーチ退任を正式に発表します。

NZRが今回のタイミングでロバートソン氏との決別に踏み切った背景には、2027年ワールドカップへ向けた体制の立て直しを、この時点で完了させる必要があるという判断がありました。2025年に新たに就任したデイヴィッド・カーク会長は「成長の軌道が見えなかった」と表現し、ワールドカップ周期の中間地点は最初の2シーズンを総括する適切な時期だと説明しており、NZRはチームのピッチ内外での進捗を幅広く検証したうえで、双方が続投ではなく交代が最善との結論に至ったとしています。
ロバートソン氏もこの決定について「本当に打ちのめされている」と率直な心境を明かしつつも、新たなコーチンググループに十分な準備期間を与えることがチームにとって最善だと受け入れたとコメントしています。
そして事前の報道を受け、カーク会長は、今回の決定に「選手が関与した」という見方も否定し、火消しに動く事となります。会見で、カーク会長はリーダーシップグループには発表前に説明していたとしつつ、アーディ・サヴェアが主導した「反乱」のようなものは一切なかったと明言。後にパトリック・トゥイプロトゥもこの件について、サヴェアが「槍玉」に挙げられていると発言し、コーディー・テイラーもサヴェアに全ての責任を負わせる見方は不公平だと嫌悪感を示しています。
そして、ブロディ・レタリックも、出演したポッドキャストで過去の経験上レビューは「全体の総意」である筈で、サヴェアだけが特別に問題の中心だったような見方には否定的な立場を示しました。
実際、その後の報道では、サヴェアの離脱意向の主な要因はコーチ陣への反発ではなく、長期遠征が続く生活の中で家族と離れる時間が増え、心身ともに消耗していたことにあったとも報じられています。
サヴェア本人も後に日本での取材で「メディアが言っているだけ」と話しており、選手が全て真実を話していると断定は出来ませんが、これらの発言を見る限りでは今回のロバーソン氏の退任が「選手主導の追放劇」と決めつけるのは無理があるでしょう。
しかし、ダルトン・パパリィとの関係悪化やサヴェアとも前任のフォスター氏ほどの強い信頼関係を築けていなかったとも報じられており、ロバートソン氏が選手たちと強い絆を築き切れていなかったこともまた、任期途中の退任という大きな決断に至った以上、また否定しにくい事実でしょう。
さらにNZR理事会の1人グレッグ・バークレイ氏の説明によると、2025年シーズン後のレビューはかなりしっかりしたプロセスを踏んで進められ、適切な人材によって構成された有識者グループが精査した報告をまとめ、その勧告を理事会が全会一致で承認したとしています。
バークレイ氏は、この結論を「正しい選択」だったと評価し、メディアや世論の空気ではなく、あくまで事実とプロセスに基づいて判断したという趣旨を語っており、その為これは新しい理事会が、新たな視点でレビューを行い、それ熟慮し、判断を下したと考えるのが妥当でしょう。
しかし見逃してはならないのは、その判断を下した理事会自体が、ロバートソン氏を選んだ2023年当時とは様変わりしているということです。
2024年の地方協会と選手会の妥協案によるガバナンス改革を受け、NZRは2025年2月1日に新理事会へ正式移行しています。それはつまり、新たに就任したデイビッド・カーク会長の下、協会の意思決定そのものが変わっている事を意味します。
さらに、2025年から2026年にかけて、組織の中心を担っていたマーク・ロビンソンCEOやハイパフォーマンス部門の責任者であるマイク・アンソニー氏、クリス・レンドラムGMがNZRを去る事が決定するなど、これは組織の刷新も同時に進んでおり、今回のレビューについてもワールドカップの結果を待たず、ロバートソン氏の就任を決断したロビンソンCEOやロバートソン氏の擁護派であったと言われるアンソニー氏は関与していないとの報道が出ています。

"レニー体制への転換"
その上で、次の焦点は当然ながらその新理事会が選ぶ「新たなヘッドコーチ」でした。
NZRはロバートソン氏退任と同時に、後任探しを即時開始すると表明し、選考はデイヴィッド・カーク会長、ケヴェン・メアラム理事、ハイパフォーマンス専門家のドン・トリッカー氏、暫定CEOのスティーブ・ランカスター氏、そして元選手代表として加わったデイン・コールズ氏という5人の選考員によって進められ、ワラビーズを退任予定のジョー・シュミット氏やブルーズを優勝に導いたヴァーン・コッター氏などの名前も挙がりましたが、最終的に争いはデイヴ・レニー氏とジェイミー・ジョセフ氏の一騎打ちとなりました。
そして、選考員達は現在コベルコ神戸スティーラーズを指揮するレニーと氏ハイランダーズを指揮するジョセフ氏の両陣営の現場を視察し、2人と直接面接を行ったうえで結論を出します。
そして、2026年3月4日。デイヴ・レニー氏のオールブラックス新HC就任が発表されます。
2023年3月に一度ロバートソンとの争いに敗れていたジョセフ氏にとって、今回の選考は事実上の再挑戦でもありましたが、結果として再びその座には届きませんでした。本人も後に、この選考がかなり接戦だったと認めつつ、プロセスそのものについては「不満はない」と述べ、公平で徹底した手続きだったと振り返っています。
ここで無視できないのが、トニー・ブラウン氏の存在でしょう。ジョセフ氏の名前が本命候補として挙がった段階から、長年の盟友であるブラウン氏と再び組む可能性は当然意識されていました。ただ、ブラウン氏はスプリングボクスのコーチとして2027年ワールドカップまで契約下にあり、このタイミングで理想形の「ジョセフ+ブラウン」を即座に組める状況ではありませんでした。
ジョセフ氏の力量とは別に、理想のパッケージを今すぐ作れたかどうかという現実的な問題は、やはり小さくなかったように思います。しかし、本人は将来的な再挑戦の可能性について否定しておらず、2027年以降の動向も引き続き注視すべきポイントになるでしょう。
一方で、NZRがレニー氏を選んだ理由については、はっきりと説明されています。決め手としてまず挙げられたのは豊富な国際経験でした。ワラビーズ、グラスゴー・ウォーリアーズ、そして日本での指導歴に加え、レニー氏はフランス、アイルランド、イングランドのような北半球勢から学ぶべき点があると認めており、面接の際には、約100本もの映像分析クリップを準備し、ニュージーランドの今の選手に合ったラグビーと、現在の世界ラグビーで勝つために必要なことを明確に言語化できた点も高く評価されたようです。
さらに象徴的だったのが「調子で選ぶ」というレニー氏の方向性です。「自分たちの基準で選ぶ」という色が強く見えたロバートソン体制とは異なる視点をすぐに表明し、新体制がまず「しがらみはない」と明示したことの意味は大きいはずです。主力SHのロイガードもこの変化を前向きに受け止めるコメントを残しています。
"問われるこれからのオールブラックス"
そしてレニー体制を考えるうえで「海外でプレーしている選手も代表に呼べるようにするのか」という点も見逃せないでしょう。
ファンの方にとっては、耳にタコが出来る程聞いてきた問題ですが、レニー氏は就任直後から、このルール見直しに前向きな姿勢を見せています。
その象徴が、現在神戸でプレーするブロディ・レタリックの存在です。
レニー氏は現在神戸で共にプレーするレタリックの状態を高く評価しており、オールブラックスに呼び戻せるなら呼び戻したいという意向を就任会見示しました。
レタリック自身は「代表での時間は終わったと思っている」そして、日本での今後のプレーについても意欲を見せる発言をしていますが、ルールが変わるのならば「状況次第」と含みを残しており、完全に扉を閉ざしたわけでもないようです。
この代表資格のルール問題は、ロバートソン氏も見直しを求めていましたが、2025年3月には現行ルールを受け入れる立場へと軌道修正をしていました。そしてカーク会長も会長就任当初にこの問題については否定的な見解を示しており、考えが変わっていない限りは現行のままでしょう。
実際にレタリック(リッチー・モウンガ、シャノン・フリゼルも)も日本のクラブとの契約は今シーズンまでとされており、その為NZRの注力はルールを変える事ではなく、彼をニュージーランドに呼び戻す方に力を注ぐことになるように思います。
ですが、これとはまた別の問題として、オールブラックスでは主力ではなくても、スーパーラグビーのクラブチームでは無くてはならない経験法な選手達が続々と現在国外クラブへと活躍の場を求めており、こうした中堅層の流出が進めば、ニュージーランド各クラブの競争力、戦力低下だけでなく、オールブラックスとして選手層の厚みをどう維持するのかという問題にも直結してきます。
この対策として、NZRは2026年2月に選手会と新協定を結び、選手引き留めへの投資増額や報酬・福利厚生の拡充を打ち出しました。さらに言えば、現在は70テストキャップ前後が一つの目安とされているサバティカル制度についても、今後はより柔軟な運用へ踏み込んでいく可能性があると個人的には見ています。
実際に、ショーン・スティーブンソンはリーグワンの2024-25シーズンに、クボタで短期的にプレーしたうえでスーパーラグビーへ戻る形が認められており、NZRが従来より広い裁量を持って対応する余地は、すでに見え始めています。
ただ、それでもこれが十分な抑止力になるかどうかわ分かりません。とくに、オールブラックスで不動の主力になり切れなかった選手や、家族を抱えながら現実的なキャリア設計を考えざるを得ない選手たちにとっては、国外移籍の魅力は依然として大きいはずです。要するに今NZRが問われているのは、忠誠心だけに頼らず「ニュージーランドに残る方が合理的だ」と選手に思わせる環境そのものを、どこまで作れるのかにかかってきます。

その一方で、ニュージーランド人スポーツ記者のグレゴール・パウル氏はRugbyPassの記事で、かつてNZRは日本ラグビーの競技水準に比較的慎重な見方をしていたものの、近年はリーグワンの環境やコーチングレベルに対する評価も大きく変わってきていると指摘しています。
かつてはテストラグビーに十分な強度を与えないと見られていた日本の環境が、いまでは選手を心身ともにリフレッシュさせ、ベテランを再活性化させる場として認識されつつあるという見方です。今季のレタリックの大活躍と、そのリーグで指揮を執るレニー氏のオールブラックスHC就任を見れば、この指摘も決して突飛なものではないと思います。
そして2026年3月24日、レニー体制のコーチングスタッフも正式に固まりました。
前体制から残ったのはFWコーチのジェイソン・ライアン氏のみで、ディフェスコーチにタナ・ウマガ、シニアアシスタントコーチにニール・バーンズ氏、アタックコーチにマイク・ブレア氏、ヘッド・オブ・パフォーマンスにフィル・ヒーリー氏が入り、大幅な刷新となりました。レニーHC自身も、このグループは自分と選手を支えるだけでなく、同時にチャレンジしてくれる存在だと説明しており、ライアンコーチはレニー新体制の始動について「非常に明確で、信じられないほど計画性が高い」と評価し、レニーHCの準備に強い手応えを示しているようです。
まとめ。
ここまでを時系列で見ると、点で見ると不可解でも、線で見るとかなりはっきりした政権交代だったと言えるでしょう。
そして、この政権交代が本当に問われるのはこれからです。レニー体制は7月のネイションズ・チャンピオンシップでフランス、イタリア、アイルランドと対戦し、その後は南アフリカ遠征へ入ります。スプリングボクスとの4テストに加え、ストーマーズ、シャークス、ブルズ、ライオンズとの試合も組まれ、新体制は就任直後から厳しい日程に放り込まれることになります。
さらにNZR自体も、正式なCEOと新設されたハイパフォーマス・ディレクター職がまだ決まっておらず、地盤が完璧に定まっていない状態です。
果たしてかつて「世界最強」と謳われたオールブラックスは、どこへ向かうのでしょうか?
戦い方、選出、そして組織体制まで変えようとしている今のニュージーランドラグビー界が、この変化を本当に「前進」に変えられるのか。
その最初の答えが出るのが、7月からの連戦となるでしょう。
そして、最後に言及しておきたいのは、退任となったロバートソン氏もこれでキャリアが終わったわけではないという事です。2026年2月には早くも、退任後初の現場としてバーバリアンズのコーチ陣に加わることが報じられ、指導者としての次章はすでに始まっています。
2023年にあれだけ大きな期待の中で送り出された指導者が、わずか数年でオールブラックスの職を離れた事は本人とってもキャリア初の大きな挫折でしょう。しかし、彼がスーパーラグビーで達成した7連覇という偉業は、未来永劫ニュージーランドラグビー史に残る未踏の記録であり、そんなロバートソン氏を「終わった指導者」と判断するにはまだ時期尚早です。
私は、彼がかつてのウェイン・スミス氏のように、この「失脚」を糧にさらに大きな存在としてニュージーランドラグビー界の中心に帰還することをまた同時に楽しみにしています。
