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【後編】あこがれを追いかけて ストリート駆け抜けて~僕と吉瀬真珠と東北産初武道館ライブ~

【前編はこちら】



葛藤

生誕企画

生誕企画というのは、おおむね古参のよく現場に来ているオタクがやるというように相場が決まっている。昔から企画を続けているせいで必然的に中心人物が古参になるのか、はたまた別の理由があるのかは結局よく分かってないが、どのアイドル現場でもそうなっている。そうして結局「まあこの人が中心になるよね」みたいな人が取りまとめることになる。

では新メンバーの場合はどうするのか。

アイスト時代からの古参?それもなんか違う気がする。そもそもアイスト時代の古参が東北産に通っているのかも定かではない。

では東北産古参で真珠推しの人?そんな人はいるのだろうか。

そもそもよく現場に顔を出す真珠推しで、生誕をやるような活動的なオタクはどれだけいるのか。

誰もよく分かっていなかったように思う。

これ、多分このままだとうやむやになってギリギリまで誰も動かなそうだなと、なんとなくそういう空気感を察した僕は、Twitterで「企画には最大限協力するので誰か仕切ってくれ」というような募集を始める。

別に僕が主催してもよかったのだが、学生だったので際限なくイベントに行けたわけでもないし、企画をやるにあたって多くを出資する余裕もなかった。そして何より、ドルオタ用語でいうところの「おまいつ」になりかけてはいたものの生誕を取りまとめるような立ち位置のオタクではなかった、というのがある。また、他推しの生誕委員とのコネクションも全然ないので、そこの繋がりのある中心人物が欲しかったというのも大きい。

ともかく、そういう意図で募集を始めた。そしてすぐに生誕企画は立ち上がることになる。

当時親しくしてた5人の真珠推しが中心となった。特に深い意味のあるメンツではなく、親しくしていたから声をかけやすかったというただそれだけだった。

他メンバーの企画と足並みを揃えつつ、どういった方針で始めるのかの検討をすぐにスタートした。


胸中

気付けば吉瀬真珠加入から半年近くが経とうとしていた。

この半年間、僕の胸中にずっと引っかかるものがあった。

スターダストで、東北産でアイドルをすることが、彼女にとって幸せなことなのだろうか。


あれほどアイストを愛し、リスペクトしたいた彼女がアイドルとして復活する場所がここでよかったのか。僕はずっと分からなかった。

ちょうど彼女が東北産に加入する少し前、SUPER☆GiRLSの4期メンバーのオーディションが行われていた。

彼女が自らの意思でスターダストを選び、オーディションを受けて入っていることは分かっていたが、昔のブログを見る限り、同じアイドルをやるのであればこのオーディションからスパガに入る方が本人の幸せだったんじゃないかと、そう思っていた。


そもそも、アイドルとして復帰するつもりはあまりなかったと思う。

iDOL Streetは今日でおしまいだけど
大きな大きなとーっても大きな夢に向かって
SHiNJU Street これから始めるよ☆

沓掛真珠☆To the next SHiNJU Street | SENDAI Twinkle☆moon(iDOL Street Student)オフィシャルブログ

スト生卒業直前のブログを読むと、はっきりと目標があるように思えた。

まだまだお話したいけど
きっとまた会えるから
今日はここまでにしよう。


またあの日のアイドルじゃないストリートで
お会いしましょう。

沓掛真珠☆To the next SHiNJU Street | SENDAI Twinkle☆moon(iDOL Street Student)オフィシャルブログ

それもきっとアイドルではない何か。


2018年11月23日のMCで、彼女は「私は本当は女優になりたくてスタダに入った。でもキャプテンにどうしても東北産に入ってくれと言われた」という旨のことを話していた。

必ずしもアイドルになるのは自分の意思ではないこと、当初は女優になる夢を叶えるために事務所に入ったこと。

かつて女優志望でありながら、その所属事務所が作ったいぎなり東北産というグループに初期メンバーとして所属して、太陽のように輝くその明るい笑顔を振りまき活躍し、女優として生きていくために卒業した、僕が最初に好きになった東北産の元メンバーの記憶がループしていた。

あの時の湊梨紗のように彼女もこの先葛藤をし続けるのではないか。

僕らはアイドルとしての彼女をもっと見続けていたいが、でも本人の幸せを願うならあの時のように早いうちに女優として送り出した方がいいのではないか。

湊梨紗のあの時の状況とどうしても重ねて考えてしまう自分がいた。

本当にこれが幸せなのだろうか。

彼女が一度強く決意したその道をいったん外れて歩くのを喜んで見ている、そんな自分に対するクエスチョンマークから僕の肩はずっと解放されないままでいた。


文脈

もう一つ、むしろ一番引っかかっていることがあった。

東北産は2015年結成。すでに結成から3年以上が経過していた。

TynamiteでのヤングライオンステージMVPやネクストガールでの優勝、SIFでの敗北、夏Sでの『ニッポン万歳』、橘花怜や藤谷美海の加入とそのストーリー、その他にも東北産を語る上で絶対に外すことのできない膨大な出来事がすでに巨大な山となって座っていた。

そこに入っていくことへの疎外感を感じていないだろうか。

2018年5月27日、イーグルスドーム。今思えばこの時すでに彼女のスタダ入りが確定していて、キャプテンとしては絶対に東北産に入れたかったのではないだろうか。

だからあの時「新メンバー加入について」とメンバーの様子をうかがったのではないか。

しかし結果はまさかの「8人で頑張っていきたい」と大号泣。

いざ彼女が東北産に入るとなり、果たしてそんな東北産にうまく入っていけるのか。

また、迎える立場の8人はどう感じているのだろうか。8人にとって彼女の加入は本当にポジティブなものだったのだろうか。

この加入は吉瀬真珠といぎなり東北産、双方にとって本当に幸せなものだったのだろうか。

僕はそんなことに思考をめぐらし続けていた。


定着

そんな僕個人の勝手な葛藤の他方で、彼女は着実に真珠推しのオタクを獲得していった。2推しが真珠ちゃんだという皆産も爆発的に増殖した。

アイストでの経験も味方し、彼女が加入したことで歌唱やダンスにおいてパフォーマンスの幅がかなり広がったのもまた事実だった。

皆産の中ではもうすでに東北産には欠かせないメンバーとなっていた。

僕の中でももちろんそうで、彼女がいて初めて東北産だと、吉瀬真珠のいる東北産こそが僕の自慢の推しグループなんだと、はっきりとそう断言できるまでになっていた。


誕生日

企画

僕がこのときの生誕企画で絶対に曲げたくない軸があった。

新規も古参も真珠推しも他推しも、本当に彼女が入ってうれしく思っているということを伝えたかった。

僕が一番気になっていたのが、すでに形のできているグループに後から入ったことに不安や葛藤や悩みとかがあるんじゃないか、ということだった。だから目に見える形で、皆産に歓迎されているということを伝えたかった。

そういうわけで、「推し関係なく、とにかく、とにかくたくさんの皆産から寄せ書きメッセージを集めたい」これは絶対に曲げなかった(当然生誕委員全員賛成だったが)。

手当たり次第にイベントで声をかけ、推し関係なく寄せ書きしてもらった。

せっかくなので彼女の好きな『SLAM DUNK』湘北高校風ユニフォームに書いてもらった。
リバーシブルの裏面にも。


誕生日当日

2019年6月22日、吉瀬真珠16歳の誕生日当日。あいにくの土砂降りだった。

この日は「東北文化遺産をたずねて」という、東北の文化遺産を会場とする一風変わったライブツアーの最終日。

会場の都合で大きいステージが置けないので、各メンバーによるソロ歌唱が中心のレアなライブだった。

僕らはキャプテンと相談の上、2部1曲目の吉瀬真珠ソロのところで緑色のサイリウム(会場にて配布)を点灯する企画を用意していた。

公式の生誕祭でないにもかかわらず、サイリウムを渡した皆産が「生誕企画待ってました」と言わんばかりの表情でとても温かかったのを覚えている。


2部開演。いつもの出囃子が終わりソロ1曲目の彼女を残してメンバーは退場した。

曲はAimerの『星屑ビーナス』。

曲が始まると観客はいっせいに点灯をした。

僕らは最後方から見ていたのだが、開場は一面の緑。開場の道路に面した側の窓のブラインドが下りていたスタッフさんの細やかな気遣いもあり(単純にブラインドを下ろす時間だったのかもしれませんが)とてもきれいな景色が広がっていた。

サイリウムを焚いた時の彼女の表情が本当に素敵だった。いつもの最高のスマイルの数割増しのそれ。

あの表情を見れただけで企画したかいがあったと感じた。

僕らの仕事はすべて無事成功した。さて、あとはライブを楽しむぞ。

そう思っていたところだった。


9人

すると突然、他8人のメンバーが彼女へのサプライズで「お誕生日おめでとう!!!!!!!!」とケーキを持って登場した。

「さっきの空き時間で買ってきたの」

「ちゃんとしんじゅっちが食べれるチョコケーキだよ」(彼女は生クリームが苦手なそう)

僕らも聞いていなかったこのサプライズ。

この瞬間、半年間ぶら下げ続けたすべてのおもりから僕は完全に開放された。

1年前、あれほど8人にこだわっていた東北産。

8人に誇りを持っていた東北産。

新メンバーをかたくなに拒んだ東北産。

ステージ上であることを忘れ、キャプテンに猛抗議した東北産。

あの場にいたどのメンバーも泣いていた東北産。

そんな東北産に入ることになった吉瀬真珠が、今は東北産のかけがえのない一員なんだと8人に心から受け入れられている。

この日、この時、それが明確な形を持って僕らの前に現れたのだった。

それがあまりにも優しい世界で、美しい世界で、幸せな世界だった。


そんな素敵な世界はまだ続いていった。


続く曲は伊達花彩による『バースデーソング』。

一部での『HAPPY BIRTHDAY』に続き両部連続での誕生日ソング。

二部の『バースデーソング』では「大好きなあなたへ」という歌詞のところを「大好きな真珠へ」と変えて、吉瀬真珠の横でアカペラで歌った。

思い返せば2018年12月15日、ハコイリムスメとのツーマン。

この日の衣装は吉瀬真珠の分がない(加入前のもののため)衣装。

本当は吉瀬真珠だけが東北産ジャージを着る予定だった。

しかしこの日、伊達花彩もジャージを着てライブを行った。

その理由について「真珠が衣装がないからそれに合わせた」というようことが語られます。(実際は単純に成長期で衣装が合わなくなったかららしいが...)

その理由の真偽はさておき、吉瀬真珠加入後この他にも細かいところでたくさん吉瀬真珠を気をかけてきた伊達花彩。

そんな伊達花彩が両部ともにバースデーソングを歌う。

それで涙をせき止めていたダムが決壊した。

このグループは本当に素敵なグループなんだと感じた。

メンバーをして自らを受け入らしめた吉瀬真珠も、それから彼女を心から受け入れたメンバーも何から何まで素敵だった。素敵な世界が広がっていた。

ゆなは今このメンバーで活動できてること
すごく嬉しいの!楽しいの!
これ以外やりたくないってくらい
東北産が大好きなんだ!!

じゅっちが入ってきてくれて本当に良かった。
東北産に良い刺激を与えてくれてありがとう
これからもみんなと
楽しいことたくさんやっていこうね!

東北産ってスンバラシイね!葉月結菜 | いぎなり東北産オフィシャルブログ Powered by Ameba

いやね、
東北産に来てくれたのがしんじゅっちで
本当の本当の本当の本当×無量大数に良かった!

多分、じゅっちじゃなかったら今も完璧に受け入れられてるか不安です(苦笑)

正直、ひなは最初新メンバー反対派の人でした。
たしか1番最後まで言ってたかな…笑

でも初めて会って、しんじゅっちを知っていって、どんどん信頼が生まれて
「もっと頑張らなきゃ」って刺激ももらったし
初心にかえることもできた。

なんやかんや、じゅっちと出会ってから8ヶ月くらいたったよね笑

でもなぜかまだ半年か!って感じなんだ笑

それってやっぱり、じゅっちだからかなって
きっともう溶け込み過ぎて、最初からいた感じ!

(中略)

入ってすぐくらいに、「東北産はどうですか?笑」ってじゅっちに聞いたら、「楽しい!」って言ってくれたのが本当嬉しくて、喜びの舞って感じでした笑

(中略)

本当に綺麗事とか冗談抜きで、じゅっちでよかった!


生まれてきてくれてありがとう。
しんじゅに出会えて、うれしんじゅ。
これからも、よろしくま。´•ᴥ•`

出会えてよかった。˟.˚❀桜 ひなの❀˟.˚ | いぎなり東北産オフィシャルブログ Powered by Ameba

もともとできてるグループに入るって事は
しんじゅっちにとっても、すごい怖かった
事だと思う。

その頃は、かれんたちも
8人でも、皆さんに満足してもらえるように
ステージができるように頑張ろう!って
がむしゃらになってた時期で…
もう一人新メンバーを
入れるってなって、やっぱり
悔しくて…
「新メンバーが入る」っていう事に
抵抗があったんです。

(中略)

新メンバーが
しんじゅっちじゃなかったら、こんなに早く、
みんなが「ベストナイン」って
胸を張って言えてなかったと思う。

東北産に入ってきてくれたのが、
しんじゅっちで本当によかった!
一歩踏み出してくれてありがとう😊

メンバーも、スタッフさんも、皆産も
みんな、しんじゅっちが大好きだよ!

隠れていた思い。橘花怜 | いぎなり東北産オフィシャルブログ Powered by Ameba


このツアーの山形公演があった。

「最初入るときは不安だったし、お互い葛藤はあったけど、今は東北産でいることが楽しい」といった内容の手紙を吉瀬真珠は読んだ。


「お互い葛藤はあった」というのも、「今は東北産でいることが楽しい」というのも、すべて本当なんだろうと思った。


この日、僕の肩に乗せられていたとてつもなく重かったおもりは、跡形もなく消えていった。


ライブ翌日。ふと空を見上げると、昨日の雨でこの世の雲はすべて流れたのではないかと思わせるような、気持ちのいいほど青い空が広がっていた。


終演後特典会のグルショ。このときの生誕委員5人で。


駆け抜ける

2019

この年はいろんなイベントに行ったし、その分楽しい思い出も本当に多くできた。

シンプルにどのイベントも楽しかったというのもそうだが、グループとしての実力の目覚ましい向上が、9人の団結によってよりブーストされている感じがあった。

粗さとともにとてつもない熱量のあった東北産の「粗さ」の部分がどんどんなくなっていったのがこの年だったように思う。

少しずつではあるが前進していたし、それ以上に"最強"に近づいていっている感覚だった。

情熱的な1年だったと思う。


ワールドツアーは特に良い思い出になった。

僕はイービン、リナワールド、ベニーランドの3つに行けた。

やはり熱いアイドルのライブは暑い夏の野外で見るに限る。


日程的な問題か、はたまたそれ以外か、ツアー最終日のベニーランドは埋まらなかった。

昔からそれを目指してやっていただけに、メンバーは悔しそうだった。

しかしたとえ埋まっていなかったとしても、あのライブは失敗なんかじゃなく、あの日世界に存在したライブの中で最も熱く最も楽しいライブだったと思う。

このライブがあれば、きっとすぐにベニーランドの芝生は埋まるし、もっともっと大きい存在になれる。

そう確信できるライブだった。


浴衣真珠。
動画の特典会。
グルショ長すぎてメンバーが飽きてきている。


この年の年末ライブは、仙台サンプラザで開催された。

東北産にとって過去最大キャパ。年末ライブのキャパは2017年から毎年500→1000→2000と倍々で増えていた。

チケットが完売したというところに、東北産の勢いを感じた。

MCで橘花怜は大体次のようなことを語った。

「最初は事務所入った動機も違うし同じ方向を見ようって強制するのも違うと思って遠慮してたけど、でも今なら間違いなく同じ方向を向けてるって言えるし、これからもその方向に突き進んでいきたい」

確かにこの1年間で目に見えてグループの団結が強まったように思えた。このセリフに強く心を打たれた。

そしてライブは『3000days』→『Let's シンガソング』というパートへ進む。

『3000days』。東北産が、東北で活動するという意味。いぎなり東北産がいぎなり東北産である意味。東北産というグループの強さ。そういう1つのアイデンティティの曲だと思う。遊びじゃない。全員が本気で、同じ方向を向いているからこそ生まれる説得力に圧倒された。

そこに続くのが『Let's シンガソング』。これは思い出すだけで涙の洪水を起こせる。

この記事を書いている今でも、「どれか1つだけ、東北産のライブで最も印象に残っている場面をピックアップしろ」と言われたらこの部分を選ぶと思う。

それくらい、メンバーそれぞれの強い思いと絆が前面に出た、そういうシーンだった。

「幸せ」ってなんだろう
答えはどこにあるの?
それでも僕らは強く生きると決めたから

いぎなり東北産『Let's シンガソング』

バタバタ忙しい毎日じゃ
ため息も付きたくなるけど
振り返えればほら思い出の花が咲いてる

「楽しい」ってなんだろう
結局自分次第?
それなら僕らは
今を大切に生きよう

曇り空であっても 輝き続けてる
あの星のように歌おう
Let’s シンガソング

いぎなり東北産『Let's シンガソング』

そうして、リーダーが

喜びも悲しみも
みんなで分け合えばほら
僕らは一緒だよ
手をつなぎ歩いてこう

いぎなり東北産『Let's シンガソング』

と歌い上げ、後ろに並んでいた8人が招き入れて9人が1列になる。

そして落ちサビで暗転。メンバーの後ろには満天の星が輝く。そして仙台サンプラザホールという過去最大キャパの客席には一面サイリウムの光。

夜空を見上げれば 満点の星空が
誰かのために
歌おう一緒に

無数の星たちが奇跡を奏でてる
この輝きを歌おうLet’s シンガソング
歌おうLet’s シンガソング

いぎなり東北産『Let's シンガソング』

こう歌い上げるのを見て、涙腺を崩壊させるなという方が無理だった。

直前に吉瀬真珠が「東北産としてみんなと同じ方向を向いて、どこまでも進める所まで進んでいきたい」というようなことを話してくれたこともあり、この曲の何から何まで吉瀬真珠、沓掛真珠のこれまでの歩みと重なった。

当の本人は涙を流す素振りも見せず、120%の笑顔でパフォーマンスをしていた。これも感動的だった。

さらにこの後『青春修学旅行』『天下一品~みちのく革命~』『ワンダフル東北』と、最後にもう一段階ギアを上げて、ボルテージマックスで締めくくった。


本当に良い1年だった。


2020~

2020年以降はコロナ禍に突入する。

多少の足踏みはあったものの、イービーンズという活動拠点も活かしながら、負けずに前に進んでいった。

初の2days、それも2日間で全く異なるコンセプト。それをやり切って成功させた。

コロナ禍1年目の声が出せない中とは思えない熱量のライブだった。

コロナなんて関係なく、東北産の魂は健在だった。


これ以降、僕はオタク以外の諸活動が忙しくなり、かつてのように頻繁にイベントに行くことはなくなってしまった。

当然重要なライブにはほぼ漏れなく行っているので、その分の話を書いてもよいのだが、これまでの文章ほどの説得力を持たせられないので、この部分は別な皆産の熱量ある記事(きっと誰かが書いているだろう)に譲ることとしたい。あえて僕という切り口で語る必要はないだろう。

あとは普通に文字数が足りない。せっかく前後編に分けたのに、それでもなお信じられないくらい長い文章になっている。


この間にも東北産は着実に動員を増やしており、またTikTok戦略も取りながら、単にファンを増やすのではなく様々な層にアプローチしていった。

すべては2021年に目標として公言した武道館ライブのために。――


生誕祭

前世

コロナ禍以降大きく変わったことの1つに「ほぼ毎年生誕祭が行われるようになったこと」がある。

そもそも東北産は生誕ライブはやらない方針だったが、一転して2021・2023・2024・2025年に開催している。

各メンバーやりたい曲をやりたいだけやる、というのが半ば定番化してきた。

吉瀬真珠にも変わった部分がある。

それはスト生という前世のことを隠さなくなったことだ。

もちろん別人として振舞っていたとかそういう訳ではない。特典会で「今度わーすたのライブ行くんだ」とかそういう話も何度もしたし、「○○さん(アイスト時代の古参オタク)と僕ら"吉瀬"真珠推しとでご飯に行くんだ」という話もした。

でも公には、僕の記憶の限りではアイストに言及したことは一度もなかった。それは触れる機会が無かっただけかもしれないが。

しかし生誕祭をやるようになって、直接言及することは稀だとしても、別に隠しもしないようになった。

しかも年々披露するアイスト楽曲の数が増えている。

まだアイストのことは大好きだし、アイストの先輩方のことを尊敬しているんだなと、改めて感じた。


「あこがれ」

2025年の真珠生誕で、彼女は次のようなことを語った。

あこがれていた先輩方に近づけている気がして、それが嬉しくもあり、同時に少し寂しくもある。これからもキラキラを集めて、私もあこがれる存在になりたい。

東北産の武道館公演が決まっている中で言ったこのセリフがとても印象深かった。

彼女は、あの日のあこがれに追いつくべく、一歩一歩前に進んできた。

そしてそのすぐ先に待っているのは、目標としていた武道館だった。


武道館

不安

メンバーをはじめ、平日の武道館を果たして埋められるのだろうか、という不安はあっただろう。

しかし一部皆産の中ではもう1つ不安視していることがあった。

セットリストと演出でやらかさないだろうか。

これら次第で、2019年の年末のような最高のライブにもなり得るし、その正反対にもなり得る。

しかしそれは杞憂だった。


完売

チケットは完売した。

僕は「ステージから遠いところで見るのは大箱の特権である」と思っているので、ファンクラブに入っているにも関わらず直前にチケットを取った(連番相手に取ってもらった。この変態的なチケットの取り方を受け入れてくれてありがたい)。狙い通り3階の後ろから2番目の列で見ることができた。

後ろである代わりにど真ん中の席だった。かなり見やすかった。

この写真は客入れ中のものなので人がまばらだが、3階の最後列までびっしり人が入っていた。

圧巻の光景だった。

数十人、数百人の観客の前でやっていた東北産が、時を経てこの日、武道館を埋めた。

紆余曲折あったし、僕があの日々で予想したよりは少しだけ長くかかった気もするが、それでもここまで来た。


感慨深げにしていると、いつの間にか開演の時刻になっていた。


M1.東京アレルギー

いつでも、想ってる。
一歩目を踏み出す友が、君で本当によかった。

いっせぇので拳握ろう
アレルギーぶん殴って 勝利のVを
あと九段下りるだけ
もうすぐ すぐ たどり着ける
夢中で遊んだ頃のように
揃いの靴で 階段数えて
とうとう立つこのステージ!!!!!!!!!
東東東京アレルギー

いぎなり東北産『東京アレルギー』

この曲での幕開け。

1曲目から強く引き込まれた。


M2.わざとあざとエキスパート

飛躍のきっかけとなったうちの1つ。この曲に武道館まで連れてきてもらったと言っても過言ではない。

それを『東京アレルギー』の後に持ってくるというのは、そこに明確な意図があったと思う。

わずかなきっかけを逃さずに掴んだステージの幕開けとして申し分なかった。

会場の温度も上がっていく。


M3.百花繚乱物語

意外だった。正直絶対に武道館ではやらないと思っていた。ここ数年は披露されてこなかったからである。

この曲は吉瀬真珠加入後最初の曲である。すなわち現体制が始まった始まりの曲である。

ここから始まった長い旅がここに連れて来たのだという、そういう意思表示だと思う。

当時のことを思い出すと、この曲が武道館のセットリスト入りしたことが本当に嬉しかった。

あの日から地続きで、この夢のステージに来れたんだということを実感できた。


M4.あーぐれす~M5.ワンダフル東北

割とライブ終盤でやるイメージの曲だが、会場全体で盛り上がれるので、ここで十二分に会場のボルテージが上がった。

こんなに序盤に強い曲を詰め込んで大丈夫かと心配になった。ライブは長く続くんだからもっと出し惜しみしなくてよいのだろうかと。

君が楽しんで 笑ってくれるから
またその笑顔が見たくって ついつい頑張りすぎちゃって
でもね もし君がまた来てくれたら
大きな声でおかえりって ねえ 言わせて欲しいよ

いぎなり東北産『ワンダフル東北』

僕はこの曲がリリースされた当時から、この部分の歌詞が好きだ。

ここはアイドルライブの本質だと思う。


好きな曲も聞けて、エンジンも十分かかってきた。

それでいてまだ5曲目だというのだから驚きだった。


MC~M6.ツンデレラ~M7.チョコスプレー♡

MCの「まずは可愛い東北産を見せる」という桜ひなのの一言から、このブロックが始まる。

「可愛い東北産」という新しい一面は、誇張抜きに躍進の立役者であったと思う。

だから個人的にはこれらの曲がライブ終盤にあって代表曲ヅラしていても、正直文句は無かった。

しかし、ここでもうほぼすべて出し尽くしてしまった。

逆に、今日のセトリがどういうコンセプトで組まれているのか、その全容を知りたくなった。

「メモリアルなライブにするための構成になるのだろうか。終盤にエモーショナルな曲を多くやるのか。きっとそうだろう」

そう思ったところで、また裏切られる。


M8.feeling~M9.3000days

『feeling』もライブの締めとして、エモーショナルに終わる曲として起用されてきた曲だ。

これも非常に好きな曲だ。

こぼれる涙「もういい!」とか言って下向いて泣いてるの
何かに期待したり また裏切られたり oh
うつむいて過ごす今日に また諦め混ざるため息で
誤魔化さない気持ち 胸の中に隠した oh

いぎなり東北産『feeling』

feeling 風の吹く方へ
so feeling 信じて向かうよ
僕らはきっとこの世界を回すpieceなんだ
だからfeeling 抱えた希望を
so feeling 叶えに行こうよ
誰もがきっと強くは無いさ だけど歩いて行くoh

いぎなり東北産『feeling』

それに続けて『3000days』も披露される。

意外な選曲が続いた。

しかし次で、このブロックの意図が掴めた。


M10.負けないうた

僕はこの日、仮に泣くとしても『負けないうた』では泣かないぞという目標があった。この曲はとてつもなく感動的なので、だからこそここで泣くのはダサいためもっと通ぶった曲で泣きたかった。

当然だが、そんなのは無理だった。

この曲の良さに今更言及する必要はないだろう。

この曲の強さ、疾走感、そして東北産の紡いできた歴史が、一つの夢の舞台である武道館後を涙で彩った。

この曲で吉瀬真珠は

憧れだけじゃ届かなかった。

いぎなり東北産『負けないうた』

と歌っている。

彼女のこれまでの歴史を考えると、このパートの深さが段違いである。

そんな激動の時代を生き抜いた。彼女は負けずにここまで来た。

この曲の超序盤だが、僕の涙腺はここでもう駄目になった。

ここまで続けてきてくれて本当にありがとう。そういう気分になった。


M11.背徳のエビデンス

この曲は圧倒的にライブで聴くべき曲だと感じた。

伊達花彩×松隈ケンタ曲の相性が良すぎる。

とにかく伊達花彩の歌唱の迫力に衝撃を受け続ける曲だった。

これからも大箱ライブではセトリ入りしてほしいと感じた。


M12.Let's シンガソング~M13.ナイツオブナインズ

『Let's シンガソング』は2019年のサンプラザでのライブを思い出した。『百花繚乱物語』に続いて、これまでの足跡を辿る曲だった。

そして続く『ナイツオブナインズ』で結論が出た。

ここまでは「エモーショナル」な曲のブロックだと。


「可愛い東北産という新たな一面」も、「武道館ライブというエモーショナルな時間」も、すべて完了した。

ふと時計を見ると、まだ開演から1時間程度しか経っていなった。

…ということはここからは……


東北産は、僕が、僕らがあの時惚れ込んだその魂を、ちゃんと持っていた。


M14.おのぼりガール~M15.BUBBLE POPPIN

『おのぼりガール』も少々意外だった。最近はもう「おのぼり」とかいう感じでもなくなってきたし、何よりすでに『東京アレルギー』という似た立ち位置の曲をやっていた。

しかし相変わらずこの曲は楽しいな、と思った。

そして『BUBBLE POPPIN』が続く。

もうこのブロックは完全に"あの時代の"東北産の再演だった。

熱い。あまりにも熱すぎた。


M16.Viper

『BUBBLE POPPIN』からの流れでダンスナンバー。

この渋めのEDMからかなり良い出汁が取れて、僕はこの曲が好きだ。

こういう曲もできるのが東北産の強みである。


M17.いただきランチャー~M18.シャチョサン~M19.Trophy Girl~20.No Make~M21.服を着て、恋したい~M22.沼れ!マイラバー~M23.伊達サンバ~M24.うぢらとおめだづ!

ここのブロックがやばすぎる。

これらはどれも単体で強すぎるのに、こんなに畳みかけられると倒れてしまいそうだ。

感想は、もう「楽しい」以外の何を言っても野暮な気がする。

僕は曲の個々の感想よりも、このセットリストそのものに言及したい。

TikTok戦略や、YouTubeにも多くライブ映像を上げるなど、世間の流行やスタンダードに合わせながら掴んだ武道館だった。

では、いぎなり東北産とは結局何なのか。

その結論がこのセットリストだったのだと思う。

可愛い曲?確かにそれもできるよ。

エモさ?苦労してきたしエモーショナルになるよね。

格好いい曲?たくさんあるよ。

でもそうじゃなく、いぎなり東北産の本質は、どこよりもエネルギッシュで、楽しい、熱狂的なライブをすることなんだよ。

そう訴えかけるような構成、そしてメンバーのパフォーマンスだった。

僕が惚れ、狂い、ずっと愛してきたいぎなり東北産の魂が、武道館というあの時とは比べ物にならないくらい大きな夢のステージでも、変わらず存在していた。

そのことが本当に、本当に嬉しかった。

そしてこんなに会場が大きくなっても、3階の後ろまで、あの時と同じように熱量が伝播していた。

そのことに熱い涙が止まらなかった。


M25.天下一品~みちのく革命~

明らかに会場のコールの声量のギアが何段階か上がった。

まぎれもない、アンセム。

ただ会場が大きくなっただけ。

あの時と全く変わらない情熱で、この長旅の原点の歌を、会場全体を巻き込んで歌う。

ラスサビで飛んだ金テープを見て、本当に武道館でやっているんだという実感がようやく湧き、同時にこれからもこの汗と涙とエネルギーで力を与えてくれるような、そういうかつてスタダオタが好きだった「スタダアイドルらしい」アイドル像を、これからも見せてくれるんだろうと確信した。


avex traxからデビュー

音楽的に

最後にavex traxからメジャーデビューすることが発表された。

僕は音楽的にavexからデビューしてほしいと思っていたので、思わずこの発表をみてガッツポーズをしてしまった。

なぜavexからデビューしてほしいと思っていたのかは、こちらで詳しく書いたので参照してほしい。

そういうことなので、どうかavexの担当者は頑張ってほしい。


吉瀬真珠という人生

そして、吉瀬真珠がavexに出戻りすることになったことがドラマチックである。僕はこの意味でもavexからデビューすることが嬉しくてたまらない。

かつて手探り状態でiDOL Streetでアイドルを始めた沓掛真珠。

iDOL Streetの先輩にあこがれを抱きながら、それを追いかけ、追いつき追い越すことを夢見た少女は、夢半ばにiDOL Streetを、avexから離れることとなった。

吉瀬真珠としてまた新たな夢を追い求め辿り着いたスターダストでは、なぜかまたアイドルをすることになってしまう。

そこで出会った8人の仲間と、共に笑い、共に泣き、いつしか同じ方向を向くようになった。

そして苦労の先には、かつてあこがれた先輩たちと同じ武道館というステージが待っていた。

さらにその先には、遠い昔に自分を育ててくれた、あこがれを教えてくれたavexからのデビューが待っていた。

これは運命というよりは必然なんだと思う。

吉瀬真珠という1本の道がここまでつながっていたということなんだろう。

あこがれを追いかけて ストリート駆け抜けて

夢見るだけじゃなく、どんな夢も叶えたい。

そうして駆け抜けてきた1本のアイドル道は、きっとこの先もキラキラした未来へと続いているのだろう。

そんな未来が見えた気がした。



注:すべて敬称略

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