【前編】あこがれを追いかけて ストリート駆け抜けて~僕と吉瀬真珠と東北産初武道館ライブ~
AN INTRODUCTION
始まり
2017年1月7日。「俺のネクストガール2017~もちろん藤井~」1日目。
僕のTwitterのタイムラインは次のようなツイートであふれかえった。
「いぎなり東北産がヤバい」――
この「俺のネクストガール2017~もちろん藤井~」というイベントは、ざっくり言えば次のようなイベントであった。
スタダ所属アイドル全体のイベント(一部グループ不参加)。
2会場で開催(時間帯も別)。メジャーデビューしているグループはステラボールで、していないグループはClub eXで。
1月7日・8日の2日間開催。
Club eXでのライブは予選の意味合いもあり、2日間の会場ファン投票で1位になったグループは、その後に行われるステラボールでのライブに出演できる。
このイベントに限らず、この時代のスタダアイドル達はことあるごとに対戦させられていた。運営がこういうのを好きだった、というのが最も大きい要因ではあるが、当時のスタダオタ達も、こういう汗と涙の下剋上というか、「友情・努力・勝利」みたいなストーリーが好きだったという共犯関係もあった。
というのも、この当時のスタダオタ、とりわけ事務所全体のイベントに来るような人にはももクロやエビ中から入っているオタクが多かったためである。ももクロやエビ中結成当時のスタダは専ら(今以上に)女優事務所であり、ももクロやエビ中はスタダ所属の女優の卵がコンバートされるような形で結成された経緯がある。そんなメンバー達が努力の末にトップアイドルまで上り詰めるという物語がそれぞれにあった。だからこそ、ライブパフォーマンスで勝利し、下剋上するという展開が好まれていたのであり、こういう泥臭い青春こそがある種スタダアイドルのイデアとされていた。
そういう時代の中の「俺のネクストガール2017~もちろん藤井~」1日目で大きく話題に上がっていた、というのが僕のいぎなり東北産(以下「東北産」)との本格的な出会いだった。
東北産は、1日目の勢いそのままに最終順位も1位となり、見事ステラボールへの出演権を手に入れる。
東北産のステラボールでのライブの様子(控室あたりからカメラが回っていたように記憶している)は生配信されていたので、それを見ることにした。本当は1日目のタイムラインから興味は持っていたので2日目は現地で見たかったのだが、当時岩手に住む高校2年生だった僕に、そんな突発的に東京のライブに行けるような財力は無かった。
当時の東北産のオリジナル曲は『天下一品~みちのく革命~』のみ。それもCD音源化された今のバージョンではなく、ラスサビで転調をしない旧バージョンである。あとは全てももクロやエビ中、チームしゃちほこなどのカバーだった。
ステラボールで披露したのは3曲。
ピンキージョーンズ(ももクロカバー)
天下一品~みちのく革命~
ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL(しゃちカバー)
スタダDD いぎなり東北産 俺のネクストガール2017 やっぱりステラボール セトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) January 8, 2017
1.ピンキージョーンズ
2.天下一品
3.ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL pic.twitter.com/74R2QjFkPd
特に最後の2曲の、粗削りではあるが力強い魂からのパフォーマンスに圧倒された。そのパフォーマンスは、まさに当時の僕らスタダオタの大好物の、すべてを打ち負かすと言わんばかりの熱量だったことが画面越しでも伝わった。
「みちのくからの下剋上」――"伝統的な"スタダアイドルの物語の芽が、そこにあった気がした。
〈下剋上〉 pic.twitter.com/jkRpPVpPxv
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) January 7, 2017
このグループをもっと知りたい。もっと好きになりたい。
そんな僕のために用意されたかのように、この月末に岩手でイベントがあった。
1/29(日)〈僕らの大通りフェス〉
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) January 14, 2017
盛岡クロステラス 12:00スタート
今回は8人で参加予定です(葉月結菜お休み)。
特典会(握手会)は、全グループ終演後に行う予定です。
時間詳細は、主催者発表をお待ちください。 https://t.co/9pr1AZiI2e
当時は"ちゃんと"レッスン生をやっていたので今ほどイベントは多くなく、これが藤井(「俺のネクストガール」の通称)の後の最初のイベントだった(気がする)。
それまでの約3週間は、僕にとって、東北産の沼にハマるにはあまりにも十分な時間だった。
本当は9人のグループであること。残りの4人のメンバーは年齢や別仕事の兼ね合いで藤井に出られなかったこと。藤井で来ていたトレーナーの色は出られなかったメンバーの色であったこと。普段は東北を中心に活動していること。岩手出身のメンバーもいること。メンバーの個性。メンバーの夢、想い。これまでの活動。
調べていけばいくほどメンバーの、グループの魅力がそこにはあった。
そして2017年1月29日「僕らの大通りフェス」、僕の東北産初現場を迎える。
〈僕らの大通フェス〉凱旋ライブとなりありがとうございました😄
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) January 29, 2017
次回イベントは、2/19(日)〈桜◯◯丸焼き計画〉です。 pic.twitter.com/xhnMiwbFNN
スタダDD いぎなり東北産 僕らの大通りフェスセトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) January 29, 2017
1.パワボ
2.天下一品
3.White Love(桜・伊達)
4.売れたいエモーション
5.コノウタ pic.twitter.com/NsnEavIywy
配信で感じた熱量は本物だった。
ステラボールで見せつけた『ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL』『天下一品~みちのく革命~』を最初の2曲で披露。圧倒。会場の皆産達も盛り上げていてかなり激熱な空間だった。
『コノウタ』で締めるのも良かった。
コノウタ キミに届け
まだちょっとつたないんだけど
胸ドキドキ 今すぐに飛び出そうよ
コノコエ かれちゃっても
何度でも歌い続けるよ
この想いを 目一杯キミに伝えよう
ココロ全て
不器用ながら全力でこう歌い上げる東北産に、心を掴まれた。
総じて、ももクロやエビ中の昔の映像を観て思っていた「この頃から推してみたかったな」の「この頃」と同じ空気感がそこにあった。前もよく見えない中がむしゃらに進んでいく感じ。スタダアイドルの全力感。それでも将来大きなことを成し遂げてくれるんじゃないかと思わせる迫力。
今からそんなグループの成長とドラマをともに見ることができるとなれば、推さないという選択肢は僕にはなかった。
そしてもう一つ、僕が東北産に惹かれた点が「東北で活動する」という文脈だった。
言うまでもなく、東北は東日本大震災で甚大な被害を受けた。彼女達は、そんな震災のことを"自身の経験談として"語ることのできるおそらく最後の(最も若い)世代である。実際、当時からブログで震災に言及していたメンバーもいる。
メンバーそれぞれに、そしてグループ全体に「東北を」「東北から」盛り上げていくというプライドがあるように見えた。あの暗かった時代に受け取ったエンタメという希望のバトンを未来に繋ぐ、そういう使命感があったように思えた。
被災したのは岩手県の内陸部であったものの、沿岸部に住んでいた時期もある僕にとって、東北で生まれ育った僕にとって、こうした思いを持って東北から発信をする東北産というグループがもの凄く格好良く感じられた。
また、そういう難しい文脈でなくても、東北は素晴らしいところだよ、と東北から発信していくこと自体にも好感を持てた。僕自身、東北産を見て改めて東北の良さを再発見したし、生まれ育った東北がやっぱり好きだなと再確認できた。自分より若いアイドルがそういう存在になっているというところが良かった。
転機
そんな中すぐに、せっかく推し始めた湊梨紗が活動休止を発表する。
当時僕は高校生だったのに加え、大学受験の対策を始めた時期だったので、全然イベントに行けない中でのこれだった。結局認知はおろか数えるくらいしか話すこともできなかった。
それでも活動休止前最後のイベントには何とか都合をつけて足を運んだ。彼女の象徴である「ひまわり笑顔」は、いつものようにそこにあった。
〈初リリースイベント イオンモール石巻〉ありがとうございました❗️
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) April 2, 2017
次は4月22日(土)一ノ蔵 蔵開放イベントです😊https://t.co/Wabx9L195e pic.twitter.com/ZZHAmqdkBH
スタダDD いぎなり東北産 リリイベ1部セトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) April 2, 2017
1.エンジョイ人生
2.天下一品
3.私がセンター
4.頑張ってる途中
5.んだっちゃ
6.ワンダフル東北 pic.twitter.com/D7AG0JBkc0
スタダDD いぎなり東北産 リリイベ2部セトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) April 2, 2017
1.労働讃歌
2.パワボ
3.ワンダフル東北
4.天下一品
5.未来へススメ pic.twitter.com/ZThaRDLnOU
しかし僕は「いぎなり東北産」という物語に共鳴していたところが大きいので、湊梨紗がいないからといって特段東北産への興味を失うことはなかった。
2017年6月25日。大学受験に本腰を入れるため、僕はこの日の「東北新幹線 開業35周年 大感謝祭」「盛岡 大通商店街 ちょいフェス」を最後に受験終了まで現場復帰しないことにした。
〈東北新幹線 開業35周年 大感謝祭〉
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) June 25, 2017
ありがとうございました😄#いぎなり東北産 #東北産 pic.twitter.com/CqnMsjCxMe
スタダDD 東北新幹線開業35周年イベセトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) June 25, 2017
1.ワンダフル東北
2.ハイテンションサマー
3.七色のスターダスト
4.労働讃歌
5.天下一品 pic.twitter.com/GRHFCte1NL
〈盛岡 大通商店街 ちょいフェス〉
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) June 25, 2017
岩手県産ひなもん😊 pic.twitter.com/fmSe57XoSC
スタダDD いぎなり東北産 盛岡大通ちょいフェスセトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) June 25, 2017
1.ハイテンションサマー
2.ワンダフル東北
3.ひなのがセンター
4.天下一品
5.エンジョイ人生 pic.twitter.com/gnuN8F37LO
この日も楽しいイベントだった。ハイテンションサマーの熱さと楽しさが身に染みた。どんな時でも、たとえ推しメンが出ていなくても、全力で楽しませてくれるのが東北産だなと感じた。
無所属
結局湊梨紗は最後のライブを除いて復帰することなく卒業した。
女優になる夢を追いかけるために卒業するのだそう。
(↑事務所退所時の契約の関係か東北産ブログの方は記事がすべて消えているので、代わりに他メンバーのブログで)
最期のライブの日、僕は模試があった。受験前最後から2番目の記述模試だったので流石にそれを干してライブに行くのは諦めた。とても弱い選択である。
しかし不思議なもので、湊梨紗が卒業することも、最後のライブに行けないことも、すべて受け入れられた。なんとなくそうなることは予感していたというのもあるし、そもそも僕自身の大学受験のことでいっぱいいっぱいで他のことについて深く考える余裕が無かったというのもある。
とにかく、この日をもって正式に東北産から推しメンがいなくなった。
2018年3月。僕は無事第一志望の仙台の大学に合格し、進学した。
合格し東北産現場に復帰することを夢見て受験勉強に打ち込んだので、合格が決まってからはすぐに現場復帰した。
2018年3月21日。『いただきランチャー』リリースイベント。『いただきランチャー』間奏の8文字コールが決まった日である。
〈いただきランチャー〉リリースイベント
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) March 21, 2018
寒い中ほんとうにありがとうございましたm(_ _)m
初披露の シャニムニポジティボー みたく東北産はポジティブです!
「花は咲く」届け東北楽天イーグルス pic.twitter.com/3idBt6Q5T3
スタダDD いぎなり東北産 いただきランチャーリリイベセトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) March 21, 2018
1.待ちぼうけ(伊達)
2.乾杯ニッポン
3.妄想方程式
4.天下一品
5.いただきランチャー
もぐもぐ作戦タイム
6.いただきランチャー
7.トラベル
8.ワンダフル東北
9.Papa
10.コノウタ
11.花は咲く
12.シャニムニポジティボー pic.twitter.com/LWVm5ozE5V
天候が悪かったが、長めのライブだったのと特典会も独特なものが多くて面白く、なおかつ緩い雰囲気特有の楽しさもあり、かなりの満足感だった。
ゼッケン新調しました! pic.twitter.com/I5i2vIcrFE
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) March 21, 2018
(↑高く積まれたじゃがりこはオタクが悪ノリで買って来ては足して、を繰り返したものだった気がする。そういう緩さのイベントだった)
その後も推しメンは決まらぬまま、断続的に東北産現場には足を運んだ。
イーグルスドームでのイベントはとても印象に残っている。
スタダDD いぎなり東北産「第1回 始球式やりたい」セトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) May 27, 2018
1. 天下一品
2.パワボ
3.いただきランチャー
4.妄想方程式
5.トラベル
6.Papa
7.新曲(タイトル未定)
8.15の夜(北美)
9.シャニムニポジティボー
10.乾杯ニッポン
緊急記者会見
11.ワンダフル東北 pic.twitter.com/eHccAnhN0d
ライブ中、サプライズでスクリーンに「新メンバー加入について」というような文字が出た。これはキャプテン(※東北産MG)のドッキリというか、「もし加入するとしたらについてトーク」という趣旨だったのだが、半ギレだったり大泣きだったりをするメンバーが出たるなど予想外の展開に。
要約すると「湊梨紗が抜けて8人で頑張っていこうと決心したところで1人入ってくるのは受け入れられない」ということだった。
当時の客層としては「他のスタダアイドルを様々見てきてここに流れ着いたスタダオタ」が多くを占めていた。そのため(僕含め)彼らは新メンバー加入によるポジティブな側面を知っていたので盛り上がっていたのだが、それに対し、ギャン泣きするメンバーという180°違う反応が面白かった。
このタイミングで新メンバー入るのはかなり良いと思うけどな、と考えながらも、今の8人のメンバーの関係性や東北産にかける思いも垣間見えた感じがしてグッと来た部分があった。
イービーンズでの『おのぼりガール』のリリイベも印象に残っている。
スタダDD いぎなり東北産 おのぼりガール リリイベセトリ
— れあめたる🍄🍃 (@raremetaaal) July 14, 2018
1.Papa
2.いただきランチャー
3.シャニムニポジティボー
4.ラブリースマイリーベイビー
5.おのぼりガール
6.トラベル
7.天下一品
8.乾杯ニッポン
つりぼり屋上
9.HOME
10.ワンダフル東北
11.ハイテンションサマー pic.twitter.com/eliSiZADs7
この当時、スタダアイドルの間で「夏のライブ中に観客をビショビショにする」のが流行っていた。あちこちで観客に放水したりバケツの水を被せたりしていたような記憶がある。
当時の東北産にこういうことをさせると容赦なかった。溺れるくらいの量の水で一切の遠慮なく観客をビショビショにしていった。良い夏の思い出となった。
この時代、メンバー個別の特典会はほとんど無かったが、少人数のグループに分かれてのものが多かった。そうなると仮にでも推しは決めておいた方が都合が良かった。そういった場合には僕は同郷の桜ひなのを仮の推しとして特典会に行っていた。

しかし明確な推しメンがいないという無所属感は、どうも張り合いがないというか、僕のマインドを所謂「行ければ行く」というやつに変えていった。
次第に僕が東北産現場に足を運ぶ回数は減っていった。
ANOTHER iNTRODUCTION
iDOL Street
2009年。大手レコード会社として誰もが知るエイベックス内で、新たなプロジェクトが発足した。
そのプロジェクトとは「iDOL Street」(通称:アイスト)――

アイストは、エイベックスでは初となるアイドルプロジェクトである。かつて松浦亜弥の熱狂的なファンだったエイベックス社員が発起人となった。そのため最終的には、ハロプロと同様に複数グループがデビューし、またデビューを目指す下部組織を設けることになる。
2010年6月12日。アイスト発足に伴い実施した「avexアイドルオーディション2010」から合格者が「SUPER☆GiRLS」としてデビューした。これがアイスト第1弾のグループであった。
今でこそ勢いは落ちているものの、当時スパガ(SUPER☆GiRLS)の影響力は大きかった。スパガと言われてピンとこなくても、『夢の引力』『シアワセワンダーランド』『プリプリ♥SUMMERキッス』あたりを聴けばイトーヨーカドーのCMを思い出す者も多いのではないだろうか。日本レコード大賞新人賞を受賞したり、結成3周年の際には日本武道館でライブも開催したりしている。
その後「avexアイドルオーディション2010」落選者の中から15名が「ストリート生(せい)」(通称:スト生)として活動していくことになる。このスト生は候補生、いわば下部組織にあたり、AKB等であれば「研究生」、ハロプロであれば「研修生」と呼ばれる立ち位置のものである。ここからアイストでデビューすることを目指す。
スト生からは2012年にCheeky Parade(通称:チキパ)、2013年にGEM、2015年にわーすたがデビューすることとなる。どれも一昔前に"本気で"アイドルオタクをしていた者なら誰もが一度は聞いたことがあるような面々だ。
こういった体制・布陣で、エイベックスはアイドル戦国時代に参入していった。
SENDAI☆Twinkle moon
スト生は東西に分かれ(e-Street・w-Street)、さらにそれぞれ北海道・関東・中部・関西・九州地区に分かれて活動していた。
2014年1月26日、スト生の東北地区のグループとして新たにSENDAI☆Twinkle moon(通称:クルムン)が発足した。
そこでアイドルを始めた1人に、当時小学4年生だった沓掛 真珠(くつかけ しんじゅ)がいた。
彼女は幼いながら歌やダンスも上手くこなしていた。ダンスは加入前から習っていたとのこと。加入当初から大人っぽく、パフォーマンスもしっかりしていた。
そういった様子からか、スト生の中でも特に期待されているメンバーだった。
ある程度アイスト側からも期待されていたように思える。2013年以降、スト生の中から選抜されたメンバーでユニットを組むことがあったのだが、彼女はスト生になって以降、毎年何かしらの選抜入りしていた。

小学生ながら加入していきなり、2014年のTIFのための選抜に選ばれている。
特にこのときは、e-Street選抜に木戸口(元スパガ)・小玉(わーすた)、w-Street選抜に三品・松田・廣川(3人いずれもわーすた)という錚々たるメンバーの中での選抜入りであった。
もちろん、選抜の人数や各地区から選抜されるという都合上、必ずしも期待度や実力が選抜にダイレクトに反映されているわけではないだろう。しかしスト生選抜のシステムができて以降スト生から新グループとしてデビューor既存グループに加入できたすべてのメンバーが1回以上選抜に選ばれているということを考慮すれば、何度もスト生選抜に選ばれていたということは少なくとも昇格の最有力候補のうちの1人だったと言えるだろう。
沓掛真珠というアイドルの原石は、こうした期待感の中で、スト生の活動を通して磨かれていった。
これが私のアイドル道
とはいえ、アイドルについては右も左も分からない状態で加入した彼女。
下部組織らしく、先輩グループを見て学びながら、「沓掛真珠のアイドル道」を模索していった。
どのグループからも強い刺激を受けていたが、とりわけチキパからは深く感銘を受けたようだった。
彼女なりの「アイドル道」を探す中で、彼女はアイストを愛し、あこがれるようになっていった。あこがれをつかまえて、舞台で輝くことを夢見るようになっていった。
栄枯盛衰
行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
方丈記の時代に言われていたことは、21世紀の今となってもまだ真理であった。
AKB48の大ブレイクという狼煙が上がって以来続いていたアイドル戦国時代だが、戦国時代の名の通り、実態としては勢力図が目まぐるしく書きかわるような様相を呈していた。
秋元康系列のグループでいえば、AKBを筆頭とした48グループの天下だったところが、2010年代後半には乃木坂・欅坂などの「坂道シリーズ」にとってかわられていた。
いわゆる「地上」も「地下」も、どちらにせよそういった感じだったように思う。
アイストも例外ではなく、その栄枯盛衰の波に乗っていた。
2018年3月31日、GEM解散。
2018年7月31日、Cheeky Parade解散。
断片的な手掛かりしかないものの、おそらくこれは会社運営上・経営上の判断だった。
悔しいです。
正直、私自身受け止めきれていなくて、色んな感情が混じっていて、何から書いていいかわからなくて。そんな中で報告することになり、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
これからもステージに立ち続ける事が私たちの答えだとたどり着いたばかりなのに、こんな形で終わる事になってしまったことがとても悔しいです。
アイスト最年少で10歳だった小学生のまりゃがLAの高校をもうすぐ卒業します。
留学して辛くても寂しくても頑張ってたくさん学んで、チキパに帰るはずだったのに…
いつのまにかGreatest 9nineじゃなくなってて帰ってきたらチキパ解散が決まっていて。
この波は、一足先にスト生に到達していた。
2016年、スト生が多数卒業(一部はスパガへ加入)。
2017年3月、スト生がさらに多数卒業。以降スト生は5名のみになる。
2017年8月、残る5名のスト生も活動終了。同時にスト生の制度も終了。
デビューしたメンバーも含めれば96名在籍したスト生の歴史は2017年に幕を閉じることとなった。
卒業
沓掛真珠は、最終盤まで粘った。
クルムンは、最終的にはメンバーが2人になっていた。
そして2017年3月26日、「ストリート生2016年度全校集会」をもってスト生を卒業した。
アイストで頑張るという意志が強かったからなのか、それとも単にそれまで辞める理由が無かっただけなのか、僕には分からない。しかし事実として、彼女はクルムンの最後の日まで、スト生が終了するほんの少し前まで、アイストというあこがれとプライドを持ってステージに立っていた。
☆iDOL Streetは卒業しますが、
ちょっとレベルアップさせてドンチャレするよ
むずかしんじゅだけどね。
☆(* ̄0 ̄)ララララ~♪
キラキラした未来←超絶妄想中
また会えると思うよ←会うき満々
☆またお会いできると思うから
(中略)
場所は違うけど、今まで以上にダンスも
ボーカルもがんばりんじゅするよ。
がんばりんじゅスイッチ(* ̄(エ) ̄)σ ぽちっ♪
いつも押してくれてありがとうです。
夢は大きく.... p( ̄(エ) ̄*)q がんばりんじゅ
見つけてもらえるように
がんばりんじゅします(* ̄0 ̄)9
☆ドンチャレしたい道は決まってるよ
でも、自分で気づいてないことの方が多いと
思うから、いろいろ修行しながら
先生のアドバイスもらいながら
夢に向かっていきたいなって思います。
わたしの年齢じゃまだまだなんだけどね
☆がんばりんじゅします。
どこかでまたお会いしますです。
そのときは、よろしくまお願いします。
ぺこりんじゅ((_ _*( ̄(ェ) ̄*)
iDOL Streetは今日でおしまいだけど
大きな大きなとーっても大きな夢に向かって
SHiNJU Street これから始めるよ☆
まだまだお話したいけど
きっとまた会えるから
今日はここまでにしよう。
またあの日のアイドルじゃないストリートで
お会いしましょう。
タイミングを考えれば、おそらく押し出されるようにスト生を卒業したのではないか、誰もがそう思うような状況だが、そんな中、彼女は次の明確な夢が定めっており、必ずまたそこで会えるという前向きなメッセージをファンに告げた。
こうして「スト生 沓掛真珠」という物語には終止符が打たれた。
合流
引力
2018年11月23日。勤労感謝の日。寒くはあったがよく晴れた秋らしい日だった。
この日は普通に大学の授業があった。
「国立大学のくせに祝日も通常通り授業日にしやがって」と皆口々に言っていたが、僕はそこまでの不満を感じていなかった。午後の授業は1回くらい行かなくても構わないので切って、自主的に午後休にする予定だったからである。
何のために午後休を生成したかというと、この日イービーンズで開催される東北産の『百花繚乱物語』のリリースイベントに行くためだった。
明確な推しがいないのにも関わらずわざわざ自主休講をしてまで行くという選択をしたわけだが、何がそこまで駆り立てたのか正直わからなかった。本来ならその天秤は僅差で大学が勝っていたと思うが、なぜかこの日は大学をとる選択肢が僕の中には無かった。見えない何かに動かされているような感覚だった。
英語の教員が「Adiós.」と言うのと同時に(この教員はイギリス人なのに、しかも英語の講義なのになぜか毎回Adiósと言って授業を終えていた)、僕はダッシュで地下鉄に乗り、イービーンズへと向かった。
出会い
後から振り返って思えば、この日僕を突き動かしたものは俗にいう「運命」だったのだと思う。
この日は『百花繚乱物語』のリリイベであると同時に、東北産にとって非常に大きいイベントがあった。
それが新メンバーの加入である。
その名前は「吉瀬 真珠」――
「百花繚乱物語」リリースイベント初日仙台
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) November 23, 2018
めちゃめちゃ寒い中、たくさんの方がありがとうございました❗️ pic.twitter.com/3p3QpvukLM
厳密に言えば観客の前に新メンバーが立つのはこの日が最初ではなかった。
新メンバーはこの前週の11月18日、「東北産の初ライブが大阪なので私も初は大阪がいい」という本人の意向でフライングで、サプライズでお披露目された。
すると会場にいた皆産の中の誰かがあることに気付いた。
あれは「沓掛真珠」ではないかと。
年代や東北であること、そして見た目から新メンバーとは沓掛真珠であるという噂が立ち、瞬く間にTwitter上で話題になった。
そしてその推測は理事長(スタダのある偉い人の通称。役職として理事長をしているわけではない)がTwitterで発売前の百花繚乱物語のジャケ写を投稿してしまったことで確信に変わっていく。

そこにあった名前は「吉瀬真珠」――
僕は現場での"出会い"みたいなものを重視していたので、こういった事前情報はほとんど入れずに11月23日を迎えた。
一方で、そこまで期待しすぎなかったのも事実だった。一目惚れと箱推し継続で丁度半々程度の期待だった。
結果的には、そこに衝撃的な出会いがあった。
ライブを楽しんでいるその表情。これまでの経験からくる堂々とした姿。信じられないほどステージから観客のことを見れているそのポテンシャル。
彼女は新メンバーながら、すでに輝いていた。
まさしく僕が見たかった"アイドル"がそこにいた。
僕の真珠推しとしての日々が、この日始まった。
新章
ここにいる
そこからは、吉瀬真珠の高校受験のための休み期間を除き、比較的全通に近いペースで通う日々が翌年春~夏頃まで続いた(別に夏に何かあったわけではないが、さすがに疲れたのでペースを落としたというだけである)。
もちろんライブが楽しいというのは前提として、もう1つその大きな原動力になっていたのは、吉瀬真珠本人に「アイスト時代からのファンではなく、純粋な皆産の中にも吉瀬真珠単推しがいる」ということを伝えたかった、というのがあった。
僕の置かれていた「ずっと東北産を好きだったが長らく推し不在のところ、丁度新メンバーを好きになった」という状況は、極めてレアケースだと思っていた。実際そんな特殊なオタクは多くいるはずもなく、当時の僕の知り合いの中には1人も真珠推しを自称する人はいなかった。
そういうわけで、参加できる限りすべてのライブに参加し、特典会にも通い、ひたすら吉瀬真珠単推しが存在するということを認識してもらうために尽力した。
それが果たして意味のある行為だったかは分からないが、少なくとも自己満足としてはかなり充実していたので、それでよかった。
東北ライブハウス巡り
2018年3月。東北6県のライブハウスを巡るツアーが開催された。
東北ライブハウス巡り
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) March 3, 2019
〜麗らかにウリャオイ!〜
初日盛岡ありがとうございました❗️
次は仙台。3/17郡山チケット残りすこし! pic.twitter.com/JfQNyobHJ1
〈東北ライブハウス巡り〉
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) March 16, 2019
パクスプエラさんもありがとうございました😊
明日はいよいよ3県目の郡山公演です!#東北産 #スタプラ#麗らかにウリャオイ pic.twitter.com/ltAMe9Bf3n
〈東北ライブハウス巡り〉
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) March 17, 2019
郡山公演ありがとうございました😊#東北産 pic.twitter.com/cIlmPhgaSK
秋田ありがとうございました😊
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) March 30, 2019
明日はいよいよファイナル青森!#麗らかにウリャオイ #東北産 pic.twitter.com/Gd4isIx4ab
〈東北ライブハウス巡り〉
— いぎなり東北産🍄 (@madeintohoku) April 1, 2019
青森ファイナル無事終了❗️
ありがとうございましたm(_ _)m#麗らかにウリャオイ #東北産 pic.twitter.com/wfjSSnk6ln
当然全通した。申し込みの時点では全く真珠単推しの知り合いがいなかったので、本気で僕だけが真珠単推しだと思っていたからである(その後徐々に推し被りの知り合いが増えていき、ツアーの頃には既に何人かと仲良くさせてもらっていた)。

関東全都県巡りとかならはるかに楽だったのだろうが、東北ってのが厄介だった。特に秋田から青森へ行くことの不便さは想像をはるかに超えていた。
とはいえ、この巡りの期間、非常に楽しい1か月を過ごした。
皆産の知り合いも増え、東北各地のおいしいものをたくさん食べ、移動と滞在が大変だった半面素敵すぎる思い出もたくさんできた。
このツアーでは過去のカバー曲もたくさん披露された。当然吉瀬真珠は歌やダンスは全く知らないはず。そんな中全部ではないにせよ、本当にたくさんのカバー曲に参加しており、彼女のポテンシャルの高さに心から驚いた。
さらにツアー期間中の3月は、藤谷美海と伊達花彩の誕生日があった。
当時はメンバー個別の生誕ライブは無かったので、ツアーの中で誕生日に近い日のライブで、皆産主導の生誕企画としてメッセージを送ったりライブ中それぞれのメンバーカラーのサイリウムを焚いたりといった企画が行われた。
どれも無事成功し、素敵な光景が広がった。
それを見て僕は思った。
吉瀬真珠生誕は誰が何をするのだろう。
【後編に続く】
注:文字数節約のため名前は全て敬称略。
