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【レポ】『アナレクタ 2010 この日々を歌い交わす』 佐々木 中

この本を読んで、「読書の仕方」を思い出した。

『この日々を歌い交わす 2010』(アナレクタ2)は、哲学者・作家の 佐々木中氏が2010年前後に発表したエッセイ、講演録、対談などをまとめた評論集。


通っている本カフェで紹介して貰い、読んでみる事に。
ここ10年くらい現代小説かエッセーしか読んでなかったので、全部読めるかなと思ったけど普通に読めた。
いや、読んだと言って良いのかはわからない。
対談から始まるのでとっかかり良く、でも分からないところはそのまま読み進めるのでTVを見ているような感覚。

1章目は保坂和志氏と佐々木中氏の対談で、「種の寿命としては、我々にはあと380万年くらい残されているんだ。」というくだりがある。
これは藝術の起源、文字の起源と並べて文学が種にいかに「最近」なものかという話で広がる。
ほうほうと感心しながら読みつつ、私は思った。

「あと何回、ごはんが食べられるんだろう。」

今は30代後半。
欲張って80代まで食べものを選べる健康体でいられるとする。
3食食べるとして、約1万8千回だ。数えようと思えば、数えられてしまう数だ。

380万年の内の数十年なんて、すりきりから落とされる余分な砂糖の1粒程度かもしれない。
相対的な感覚にして、それは一瞬といえるだろう。

去年、胃腸の具合を悪くした時は人付き合いも行動も多々制限されたが、食の制限が1番わびしかった。
毎日ただ家事と仕事をこなして、より長く寝るしかない。

1万8千回、なるべく食べたいものを食べるしかない。
マクドナルドが食べたいし天下一品ラーメンが食べたいし、胃腸が悪くても、よりおいしい雑炊を食べたい!
本当にそう思った。


2章では磯部涼氏とのラップ音楽業界のお話。
ラップは全然わからないけど、
「日本語ラップが1番ピュアなアンダーグラウンド感を持ってた時期(磯部氏)」と言った後に「マチズモではあるんだけど、何かもっとカッコ悪くていまいちモテない奴らがブカブカなパンツを穿いて集まってるという・・・懐かしくもダサい感じで(笑)。(佐々木氏)」
このあたりでほっこりして、近い目線で読める。

日本のラップ文化時代性から始まり、グローバルに音楽についてと政治背景と文学にも絡ませる。

ブラックミュージックの話になると、私は吉田ルイ子氏のフォト・ルポタージュ『ハーレムの熱い日々』を思い出す。
小柄な女性写真家でジャーナリストの吉田さんが60年代のハーレムの街で暮らし、自分や他者の差別を肌で感じながらも街に馴染んでいく記録。
映画『この世界の片隅に』に似た、大変さや深刻さとは別次元の「日常」を同時に感じられる1冊だった。
2章の対談を読みながら思い出していた。


3章は、表題に対する佐々木氏単独の論考。
対談より神妙さはあるが、置いてきぼりにされないし大変読みやすい。
4章では選書紹介。
5章は古井由吉氏との対談。
6章は宇多丸氏との対談。
7章で坂口恭平氏との対談。特に気さくで面白かった。
8〜9章は講演録と論考。

単独のテキストは読みやすく対談以上に内容も深いのだけど、思想の話がひとり歩きしてしまうので感想も控えます。
なんとな〜く、絵を描く事にも生きる事にも響く材料が散らばっていた。
受付事務の仕事には活かせなさそうだ。


出だしからずっと、「そういえば、本ってこうやって読むんだったな。」と思って読んだ。
わからない事を知るために。
自分で言葉に出来ない何かを、誰かが言葉にしている事を見つけるために。
楽しく読める=理解できる、では無かったよな。

手に取る本が、増える予感。

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