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妻だよりの話(ランニング編)

先日、妻がフルマラソンに挑戦すると宣言した。

大会は来年の熊本城マラソン。

理由はシンプルである。

YouTubeで見ている三津家さんに会いたいから。

42.195kmという距離に挑戦する理由としては、かなり特殊な部類だと思う。


しかし記事を投稿したあと、妻に少し変化が起きた。

焦り始めたのである。

どうやら

「フルマラソン走るって言ったのに全然練習してないやん」

と思われるのが嫌らしい。

人の目を気にしているのか。

それとも三津家さんに

「練習してない人は帰ってください」

と言われる夢でも見たのか。

真相は不明である。


突然やる気を出す妻


週末。

私は10kmほど軽く走ろうと思っていた。

すると妻が言った。


「私も走ろうかな…」


おお。

珍しい。

やる気スイッチが入ったのか。

私は優しい。

本当に優しい。

夫婦ランニングの時は自分の練習を捨てている。

なぜなら以前、

「練習したい自分」



「妻のペース」

を両立しようとして、

見事にイライラしたからである。

学習した。

人は成長する。


「タイムとか気にしなくていいから、とりあえず走ろう」

なんて優しいんだ。

もはやランニング界の菩薩(ぼさつ)である。




最初だけは速い


走り始める。

最初の3km。

5分30秒/kmくらい。

普通に走れている。


「いい感じじゃん」


「でしょ!」

ドヤ顔である。

しかしランニング経験者は知っている。

問題はここからだ。

3kmを過ぎる。

少しずつ静かになる。

5km地点。

ペースは6分/km近くまで落ちていた。


「ここからはスマイルランでいこう」


「わかった!」


いや。

そこは

「ありがとう」

じゃないのか。

私は今、

君のためにペースを落としているのである。

しかし言わない。

言ったらケンカになる。

夫婦円満の秘訣は、

言いたいことを飲み込むことである。


蜘蛛の巣トラップ


しばらく進む。

すると妻が突然言った。


「パパ、前に蜘蛛の巣あるよ」


「え?どこ?」


「いいから前走って」


なるほど。

理解した。

私は夫ではない。

蜘蛛の巣除去装置だ。

人間ラケットみたいな扱いである。

結果、

顔面で蜘蛛の巣を回収した。

妻は無傷。

理不尽である。



休憩したいと言えない妻


7km地点。

妻が言った。


「ちょっと一旦止まろうか」



「うん」

なぜだろう。

この人は絶対に

「休憩させて」

と言わない。

言葉を巧みに操る。

一旦止まろうか。

みんなで相談して決めたみたいな言い方をする。

いや。

休みたいの君だけだから。



呼吸で訴える女


再び走り始める。

すると横から聞こえてくる。

「ハァ…ハァ…」

チラッ。

こちらを見る。

「ハァーーー…」

また見る。


「そのペースで息切れせんやろ」


「ハァ…ハァ…」


演技派女優である。

アカデミー賞を狙っているのかもしれない。

苦しいアピールがすごい。

しかし私は騙されない。

長年連れ添った夫である。


妻が求めていたもの


残り2km。

妻はついに言った。


「あーしんどい!もう無理やー!」


「あと2kmじゃん!」


「走るけど!走るけど待って!」


「フルマラソンだとあと5倍以上あるよ」


「あー…長いなぁ」

そして妻は少し真面目な顔で言った。


「練習せんと厳しいかも」


「だから平日も走ったら?」


「いや、それよりさ」


「ん?」


「もっと褒めて」



「は?」


「褒めて伸ばして!」



「・・・」


「フォームとか接地とかどうでもいいんよ」


「どうでもいいの?」


「いいから褒めろ!」


なるほど。

今までようやく分かった。

私はずっとランニングコーチをやっていた。

しかし妻が欲しかったのはコーチではない。

応援団だった。



最大の課題


フルマラソン完走に必要なものは何か。

脚力か。

持久力か。

補給か。

いや違う。

我が家の場合は違う。

妻をどうやって褒め続けるかである。

10kmでこれだ。

42.195kmになったらどうなるのか。

たぶん私は沿道でこう叫ぶことになる。

「すごい!」

「頑張ってる!」

「天才!」

「最高!」

「フォーム綺麗!」

「三津家さんより速い!」

最後の方は嘘になるかもしれない。

でも、それくらい言わないと走らない気がする。

熊本城マラソンまで、まだ時間はある。

妻の脚力はきっと伸びるだろう。

心肺機能も伸びるだろう。

しかし一番鍛えられるのは、

間違いなく私の褒める能力だと思う。

妻のフルマラソン挑戦。

思った以上に険しい道のりである。
そして、その道のりを走るのは妻だけではない。

たぶん私も一緒に走っている。
精神的に笑

今日も皆さんが笑顔で過ごせますように♪
いってらっしゃい♪

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