見出し画像

在庫は減らせる。けれど、簡単には減らせない

在庫は、減らした方がいい。
これは経営の立場から見れば、かなり当たり前の話だと思う。

余分な在庫は資金を寝かせる。
期限切れやロスのリスクもある。
数字だけ見れば、在庫はできるだけ薄く持った方がいい。
私自身、そう考えてきた。

本部長として外から店舗を見ていた時、私はどこかでこう思っていた。
毎日発注ができて、翌日に納品されるのであれば、店舗在庫はもっと絞れるのではないか。
感覚としては、在庫を0.8くらいまで下げられるのではないかと考えていた。

でも、実際に店舗に入って在庫を見直してみると、その考えはかなり単純だったと分かった。

一番大きかったのは、一人にしか出ない薬が想像以上に多いということだった。
帳簿の上では「在庫」と一括りに見えていても、現場で見ると、その中身は均一ではない。
回転の良い薬もあれば、ほとんど動かない薬もある。
しかも、動かないからといって不要とは限らない。
その患者さんにとっては、必要な在庫である。

ここに、外から見ていた時には分からなかった現実があった。

例えば、一箱の発注単位が100錠だとしても、その薬を使う患者さんによっては、それだけで3か月分の在庫になることがある。
つまり、少量しか動かない薬ほど、発注単位の時点で在庫が厚くなりやすい
「翌日納品されるのだから絞れるはずだ」という理屈だけでは吸収できない事情が、現場には普通にある。

在庫管理を難しくしているのは、発注頻度だけではなく、回転率のばらつき発注単位の現実なのだと痛感した。

今の在庫は、おそらく2.1くらいある。
数字としては、まだかなり重い。
だから目標としては、最終的に0.8まで持っていきたい気持ちは今もある。
ただ、今は以前よりもはっきり分かる。
それは、理屈で一気に落とせる数字ではない。
時間をかけて、少しずつ整えていくしかない数字なのだと思う。

ここで大事なのは、「0.8にできない理由」を並べることではない。
むしろ逆で、なぜ時間がかかるのかを理解したうえで、日常の運用を変えていくことなのだと思う。

今回、店舗に入って強く感じたのは、在庫管理は特別なタイミングでだけ見直すものではないということだ。
棚卸しの時だけ。
数字が悪化した時だけ。
そういう見方では、たぶん追いつかない。

本当は、日頃から定数を決めて、少しずつ見直し続ける必要がある
どの薬を何箱持つのか。
それは本当に今の処方実態に合っているのか。
一人薬をどう扱うのか。
発注単位と回転率のズレを、どこで吸収するのか。
こうしたことを、現場で継続的に見ていかないと、在庫は自然には適正化されない。

外から見ていた時の私は、在庫を「結果の数字」として見ていたのだと思う。
でも現場に入ると、在庫はもっと細かい日常の積み重ねだった。
一つひとつの採用品目。
一人薬の残り方。
発注単位の大きさ。
少しずつ増えていく例外。
その全部が積み重なって、今の在庫になる。

だから在庫管理は、数字のコントロールというより、日常業務の設計に近い。
ここを変えないまま、「もっと在庫を減らそう」と言っても、現場にはただの圧力としてしか届かないのだと思う。

今回学んだのは、在庫は減らせる、でも簡単には減らせない、ということだ。
理想の数字を持つことは大切だ。
でも同じくらい、その数字に至るまでの現実を理解することも大切だと思う。

経営は、理想を持つことが必要だ。
でも現場は、理想だけでは動かない。
その間をどうつなぐか。
在庫管理ひとつ取っても、その難しさがある。

在庫を絞ることは、単なるコスト管理ではない。
現場を知り、例外を知り、定数を決め、日常的に見直す仕組みをつくることだ。
今回それを、机上ではなく現場で学んだ。

いいなと思ったら応援しよう!