AIが思い通りにならない!|ハーネス設計のすすめ
AIに愛情表現は伝わりません。ルールを徹底的に教えつけて教育するしかありません。
少し過激な表現をしました。事実として、「生成AIが以前より思うように動かない!」と感じる場面が増えたと感じている方は最近かなり多いのではないでしょうか。
Anthropicも6月15日まで週間レート制限を大幅に緩和しているものの、実際にOpus 4.7を使っていても、「言いたいことがうまく伝わらない」「なぜその行動を取ったのか分からない」と感じる場面が、以前より増えた印象があります。X上でも、同じような声はかなり見かけるようになりました。
その結果、本来AIによって削減できるはずだった作業時間が、逆に「どう指示すれば伝わるか」を考えるコストに置き換わってしまい、余計に工程が増えているケースも少なくないように思います。
もちろん、原因を単純に一つへ断定することはできません。ただ、最近の利用者急増による負荷、レート制限、推論量の調整、トークン消費量の変化など、複数の要因によって、以前より“AIを安定して動かす難易度”が上がっている可能性は十分あるでしょう。
とはいえ、我々の仕事は平日日中を中心に進みます。モデル側の混雑や外部要因に毎回振り回されていては、実務が安定しません。
だからこそ今後は、「どれだけ良いモデルを使うか」だけではなく、
AIに渡す情報をどう整理するか
どんな順番で作業させるか
どこで人間確認を入れるか
どの処理を自動化し、どこを制限するか
といった、“AIが安定して働ける環境そのもの”を設計することが、以前より重要になってきていると感じます。
最近よく言われる「AIハーネス設計」という考え方は、まさにそこに近いのかもしれません。
前置きが長くなってしまいましたが、今回はそんな方々に向けて、私が実践している対策を共有できればと思います。これを実践していることで、私は仕事の効率を常に保てています。
ハーネス設計の大切さ
皆さんは、「ハーネス設計」という言葉をご存じでしょうか。
ハーネスと言われても、半分以上の方はピンとこないと思います。むしろ、散歩中の犬が付けている胴輪を思い浮かべる方のほうが多いのではないでしょうか。(ちなみに私も最初は「何それ?」という感じでした。)
では、その「ハーネス」がなぜ生成AIと関係あるのでしょうか。
ハーネス設計とは、一言でいえば、
AIを賢くする前に、AIが安全かつ正しく動ける“作業環境・制御装置・安全柵”を設計すること
です。
ただ、これだけ聞いても、最初はあまりイメージが湧かないと思います。
そもそもこの考え方自体、AIエージェントが急速に普及し始めた2025年末〜2026年頃から、一気に注目され始めた比較的新しい概念です。
これまでの生成AIは、基本的に「チャット画面の中で答えるAI」でした。
例えば、
「請求書を要約して」
と指示すると、AIは要約だけ返して終わりでした。
しかし、最近のAIエージェントは違います。
例えば、
「この会社の月次経理を軽くして」
と指示すると、
フォルダを読む
請求書を分類する
OCR(文字解析)を行う
CSVを生成する
freee形式へ変換する
不明データを抽出する
人間へ確認依頼を出す
ログを保存する
といった、一連の作業そのものを進めることができます。
つまり、
「答えるAI」ではなく、「作業するAI」へ変化した
ということです。
これは非常に便利な進化です。
一方で、AIが自由に行動できるようになったことで、逆に危険性も増えました。
実際、有名な事例では、
AIが勝手にファイルを書き換える
不要なファイルを削除する
想定外のコマンドを実行する
といった問題も発生しています。
もしこれが社内データだった場合、重大なインシデントに発展する可能性もあります。
では、「危険だから使わない方がよい」のか。
私の答えはNOです。
ここで、最初の「犬の散歩」の話に戻ります。
散歩中の犬に首輪やハーネスが付いていなければ、勝手に走り出してしまいそうで怖くて散歩どころではありません。
それでも私たちが安心して散歩できるのは、「行動範囲を制御する仕組み」があるからです。
AIエージェントも、まったく同じです。
AIが実際に行動できるようになった以上、重要なのは「自由にさせないこと」ではなく、
“安全に自由に動ける範囲を設計すること”
です。
例えば、
どのフォルダだけ触ってよいか
どの操作は禁止するか
削除権限を持たせるか
人間確認をどこで入れるか
どのログを残すか
を、あらかじめ決めておく。
これこそが、ハーネス設計の本質です。
AIエージェント時代では、「どのAIモデルを使うか」だけではなく、
AIをどう制御し、どう安全に働かせるか
その設計そのものが、今後ますます重要になっていくと思います。
具体的にハーネス設計はどう組むべきか
実際、こうしたハーネス設計は、まだ「理論」だけではなく、かなり試行錯誤の段階でもあります。
私自身も現在、Codex, Claude codeなどを使いながら、
どこまでAIに権限を渡すか
どの操作で人間確認を入れるか
どんなルールを事前に定義するか
AIが“勝手な解釈”をしないようにするにはどうするか
といったことを、実際に検証しながら触っています。
今回は私が実際に使用しているハーネス設計TAP-OSをご紹介します。(TAPというのは私の会社名なので気になさらず)
私がTAP-OSを作った目的は、AIに毎回同じ説明をし直さないためです。
Claude CodeやCodexを使っていると、AIはかなり作業を進めてくれます。ただ、そのままだと毎回「今の事業は何か」「今日の優先順位は何か」「何をやらないと決めているのか」「どの資料が最新なのか」を説明し直す必要があります。
これが地味に重いです。
しかもAIは親切なので、こちらが少し迷っていると、追加調査、別案、比較表、資料整理、新しいタスクをどんどん提案してくれます。もちろん助かることもありますが、一人で事業を回していると、それがそのまま「やることが増えるだけ」になることもあります。
そこで、AIが毎回戻れる場所としてTAP-OSを作りました。
TAP-OSは、綺麗な第二の脳というより、AIと一緒に作業するための軽い業務ハーネスです。目的は情報を全部集めることではなく、AIが迷ったときに見る順番を決めることです。
実際には、ローカルに次のような構成を置いています。
TAP-OSの紹介

この中で一番大事なのは 00_HARNESS です。
ここには、AIが最初に見る入口、現在の方針、今日やること、やらないこと、週次レビューの正本を置いています。
日々の運用はかなり軽くしています。
朝は TODAY.md を見て、今日の原則と完了条件だけ確認します。作業前に迷ったら、今どの工程にいるのかを見ます。営業や外部接触をしたら、反応ログを1行だけ残します。夜は DO_NOT_DO.md を見て、資料作成や追加調査に逃げていないかを確認します。
Notionも使っていますが、Notionを全部AIに読ませる運用にはしていません。Notionは見える化、DB、タスクボードに使い、AIが読む判断の正本はMarkdownに置いています。
要するに、TAP-OSでやっていることはシンプルです。
AIが最初に戻る場所を作る
今日の実行を見えるようにする
やらないことを明文化する
必要なときだけ詳細資料へ進む
古いアイデアや未確定メモに引っ張られないようにする
この仕組みを作ってから、AIへの説明し直しはかなり減りました。
もちろん、これだけで事業が勝手に進むわけではありません。TAP-OSは自動化装置ではなく、AIと自分が迷ったときに「今どこへ戻るか」を決めておくためのものです。
長くなってしまうので、今回の記事では、ここまでの考え方と、表層のディレクトリ構成だけを紹介します。
AI_BOOTSTRAP.md の具体的な書き方、TODAY.md / DO_NOT_DO.md のテンプレ、CodexやClaude Codeにどう指示しているか、日次・週次でどう更新しているかは長くなるので、別記事で詳しく書きます。
触っていて強く感じるのは、AI導入を検討している会社に多いのが、まだまだ「会社の情報がAIに"安全に"読める状態になっていない」というケースが多いことです。
紙、Excel、PDF、LINE、メール、共有フォルダなどの情報自体は大量に存在していても、
探せない
引き継げない
ルール化されていない
AIが読めない
状態になっている。
逆に言えば、ここを整理するだけでも、かなり業務は軽くなります。
最近は「AIを入れれば何とかなる」と思われがちですが、実際には、
AI活用の前に、まずデータや業務の整理が必要
という場面が非常に多いです。
私の会社でも、単純にAIツールを導入するというより、
資料整理
業務ルール整理
過去対応の整理
データ整備
のような部分から入り、「その会社で実際に使えるAI」に近づけていくことを重視しています。
AI導入は、「ツールを入れること」ではなく、
“会社の仕事をAIに教えられる状態にすること”
から始まるのかもしれません。
まずは、自分の会社の中に眠っている資料や対応履歴を見直してみるだけでも、かなり景色が変わると思います。
会社でなく、個人の方も、AIエージェントがPC内のデータの場所を整理整頓、そして把握することで、PC内をより安全にAIエージェントを動かすことができます。
長文となってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後も、生成AI中心により多く情報発信できればと思います。
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