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77万石の豪邸にお邪魔します【旧島津家本邸:J・コンドル3・島津家のトビラ4】 東京都品川区

東京都内には明治期に建てられた重要文化財の豪邸がいくつかあります。
中には無料で公開という太っ腹な邸宅、お手軽な入場料で見学できる邸宅もあり、国内屈指の見学可能な豪邸の集積地といえます。
そして見学は予約抽選の上という、まさに自身の運が試される邸宅も。
最近のご時世を考えれば、ウダウダ考えるよりも取り合えず応募して切符を手に入れなければ、永久に見ることができなくなる可能性も。


かつての東海道・宿場町名を冠する品川区の人口は415,000人。
ちなみに巨大ターミナル品川駅(将来はリニア駅も)の所在地は港区。

都内の高級住宅地を抱えるエリアの1つですが、ここにも長いヒストリーを持つ豪邸があります(現在は邸宅から大学の一部に)。
ちなみにこの邸宅の近く、北品川にあった原邸(原美術館:渡辺仁:1938年)は2021年に閉館(原美術館ARCと合併)。文字通り消滅しています。

高台の上に

清泉女子大学

まずは現在の邸宅オーナーからご紹介。
清泉せいせん女子大学は1950年の設立。前身はカトリック系の清泉寮。
女子大学は1973年に女学院から独立し、2025年に再び合併しています。
清泉女子大は島津山と呼ばれる高台に立地し、国道1号線(桜田通り)をはさんで向こう側の高台には荏原畠山美術館が(長いこと気がつかず)。

ラファエラ・マリア・ポラス(正門前)
ありがたいお言葉

大学の母体となったのはカトリック系の聖心侍女修道会。
修道会の設立者はラファエラ・マリア・ポラス(スペイン:1850-1925)。
大学内に記念碑が2ヶ所あり(見たかぎり)。

ラファエラ・マリア・ポラス(本館内)
そうらしいです
エルネスティナ・ラマリョ(本館内)

大学の創設者はエルネスティナ・ラマリョ(アルゼンチン:1902-1969)。1934年に来日。

東京都品川区東五反田3-16-21

旧島津家本邸

旧島津家本邸 玄関

イギリス人によるレンガ造の洋館はイタリア・ルネッサンス様式。
島津家は江戸時代には仙台藩下屋敷地だったこの土地を1873年に取得、浜町にあった本邸を移転。

最初に建てられたのは和館でしたが、老朽化のため1917年に洋館へと建て替えられ一新。そのころの敷地は現在の国道1号線(桜田通り)あたりにまで及び、正門は1号線側にあったそうです。
当時の当主は第30代で公爵の島津忠重しまづ ただしげ(1886-1968)。

昭和期に所有者は日本銀行へと移り、建物は太平洋戦争もくぐり抜けますが、戦後には当然のようにGHQによって接収。
返還後の1961年に日本銀行から清泉女子大学が入手。
その島津本邸は大学本館としてバリバリの現役。

戦国時代にはキリスト教に心を許さなかった島津家。
そのお屋敷がキリスト教系の大学施設にというめぐり合わせ。

島津邸のオープニングには大正天皇・皇后の行幸啓、続いて催された盛大な新築パーティーは当時のセレブレティの定番か。

ジョサイア・コンドル

(参考)コンドルさん その1 @三菱一号館美術館

本邸の設計はジョサイア・コンドル(イギリス:1852-1920)。
1877年に日本政府に招かれ来日した日本近代建築の父。
かつてのトーハク本館を設計した人。
日本文化の造詣も深く、日本画の師匠は河鍋暁斎かわなべ きょうさい。コンドルの号は暁英。

(参考)昔のトーハク写真 @トーハク

コンドルチルドレン1期生には辰野金吾たつの きんご片山東熊かたやま とうくまが。
現在ではともに重要文化財建築を多数残している師弟。

(参考)岩崎邸(東京都台東区)
(参考)古河邸(東京都北区)

現存建築では岩崎茅町本邸(旧岩崎庭園)や古河虎之介邸(旧古河庭園)を手掛け、なぜか三重県桑名市にも彼の作品が。

(参考)コンドルさん その2 @東京大学 スタバ前
足長すぎ

他のコンドル作品には旧財閥系の迎賓館、開東閣(岩崎家高輪別邸:港区)や綱町三井倶楽部(綱町別邸:港区)も現存。
三菱や三井に人脈のある方は利用可能。

黒田清輝像(1932年) @トーハク黒田記念館

本邸インテリアのディレクションを担当したのは、旧薩摩藩士で洋画家の黒田清輝くろだ せいき(1866-1924:胸像は高村光太郎作)。
代表作には智・感・情(1899年:重要文化財:黒田記念館蔵)。

(参考) @トーハク


島津邸に戻ります。

パンフ 2023年版
見学受付

邸内の一般見学は、季節限定(春・秋)の予約制。
重要文化財の邸内を、学生さんによる解説付きで見て回るツアースタイル。
見学者を2グループに分け、2人で構成されたガイドチームが引率。

予約枠(人数)はそれほど多くないので、競争率が結構高かったらしい。
「皆さんはラッキーな人たちです」と説明を受けた記憶が。まあ運だけは。

ステンドグラスに丸十字

かつての玄関。ステンドグラスは現存品。
館内の各所には島津家の家紋「丸に十字」と何度か説明が。
現在の1Fには理事長室や学長室を配置(上写真右側の部屋が理事長室)。
かつては理事長室は待合室、会議室はクロークだったようです。
もちろんお客様用。
ちょうど見学中に理事長さんが「ごゆっくりー」と。
ちなみに学長室は、かつては家族の食堂。

理事長室の隣の会議室 フツー

現在の内装や調度類はノンオリジナル。公爵邸時代は1Fがパブリック、2Fはプライベートエリア。現在の2Fは講義室や会議室に。

庭園側バルコニーの柱頭デザインは1階がシンプルなトスカーナ(タスカン)様式、2階はイオニア様式(うずまき模様)。

分かりにくいうずまき

ガイドチームはデビュー戦だったのか、かなりの緊張感がアリアリ。
大学のカリキュラムの一環か、サークル的なチームなのか分かりませんが、自身より年齢層かなり高めの見学者を相手におつかれさまです。
歴史に詳しいOGガイドでも取り入れて、かつての建物や自身のエピソードを織り交ぜるスタイルも悪くないかもしれません。

邸内のかつてのバンケットルーム(1F)は、現在は聖堂となっています。
唯一撮影不可の聖域。

カトリック系の品々が所々に。

2Fにはかつての子供部屋の扉が3つ。
実は子供部屋は2室で、扉1つはフェイク。

ゴルゴダ 舟越保武
小さく丸十字
復活の十字架(左)
パーティー会場

館内ガイドが終了すると、しばし撮影用のフリータイム。
そして庭園に出てツアー終了。参加者は各自解散。
ちなみに早めに現地到着すると、スタートまである程度撮影が可能です。

樹齢150年以上のフウの木

趣向を凝らした日本庭園ではなく、西洋式の庭園。ただいくつか石灯篭も。

端っこに小さな池

島津家関連にせよ清泉女子大学関連にせよ、もう少し歴史&エピソード(使い勝手等)解説が充実すると(展示もしくは資料で)、ガイド担当者の負担が減り見学者の理解も深まるような気がします。

島津家は昭和期の金融恐慌や戦争によってこの邸宅(袖ヶ崎邸)を手放す事になりましたが、現在は大学の一部としてキレイな状態で保存されています(重要文化財なので用途も限定されてはいるでしょう)。
公開される機会が続く事を祈ります。

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