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【第6話】「それぞれの表裏」を肴に

今夜のカウンターはちょっぴり静かです
  (見出し画像も少し照度を落としました・・・)。

でも、居酒屋っていうのは、こういう静かな夜こそがまた味があるもの。今夜はしっぽりと明かりを灯しながら、前回お客様が置いていってくださった極上のネタを、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。

あれから一人で脳内カウンターで酒を飲みながら(日本茶)考えていたのですが、歴史の本当の面白さって、世間のパブリックイメージ(表)と、史実をめくった時に見える人間臭い本質(裏)――つまり、武将たちの「それぞれの表裏」が見えた瞬間じゃないかと思うんです。


■ 名前の表裏(虎と龍の謎をもう一杯)

前回、お客様からの鋭いコメント、「上杉謙信の本名には『景虎』『輝虎』とずっと虎が入っているのに、なぜ世間では【越後の龍】なのか?」というお話。これもまさに、名前が持つ面白い「表裏」ですよね。



実は戦国武将を見渡してみると、こうした「イメージの表裏」のギャップを持った人がたくさんいます。

例えば、信長といえば、世間一般では【第六天魔王】という、なんだか冷酷で恐ろしいイメージで語られがちですよね。

歴史ファンの間ではよく、「武田信玄から届いた嫌みっぽい手紙(署名が『天台座主沙門』=仏教のトップ)に対し、信長がフハハと笑って、皮肉のユーモアを込めて『じゃあ私は仏教の敵である第六天魔王とでも名乗っておきますわ』と返事を出した」という、お茶目なギャップのあるエピソード(表)として語られがちです。

実はこの手紙のやり取り、のちの創作ではなく、当時の宣教師ルイス・フロイスが記した『日本史』という一次史料(当時のナマの記録)にしっかりと書き残されている歴史的事実なんです。

これだけでも十分に面白い歴史の表舞台(表)なのですが、当時の状況という「裏」をさらにめくってみると、そこには全く違う景色が広がっています。

当時の信長は、比叡山延暦寺を焼き討ちした直後で、仏教勢力や信玄とバチバチに緊張が高まっていた時期でした。そのため、笑ってユーモアで返したというよりは、「仏敵と呼ぶなら呼べ。私は神仏をも恐れぬ覚悟だ」という、信玄に対する強烈な脅しや、退かぬ決意表明(超マジな宣戦布告)だったという説の方が有力視されています。

フロイスが記録した本物の事実(表)の、さらに裏にある当時の命がけの張り詰めた外交戦略(裏)。そう考えると、冷徹な独裁者のイメージの裏にある、信長のギリギリの人間臭い必死さが見えてきてゾクゾクしませんか?


■ 生き様の表裏(小田原評定の真実)

正式な名前や異名だけでなく、歴史の言葉そのものにも「表裏」は潜んでいます。それが、第2話で頂いた「小田原北条氏の滅びの美学」という言葉から思い出した、ある有名なお話です。

世間でよく「意見が割れてダラダラ長引くだけで、一向に結論が出ない様子」を揶揄するときに使われる、「小田原評定(おだわらひょうじょう)」という言葉。
一般的には、完全にネガティブなマイナスイメージ(表)として定着していますよね。

でも、歴史の裏側をめくってみると、この言葉の見え方がガラリと変わります。

実はこれ、北条氏が「トップの一言で全てを決める独裁をせず、家臣たち全員、ときには領民の意見まで徹底的に聞いて、みんなが納得するまで話し合う」という、当時としては驚くほど民主的な政治を行っていたという「裏の真実」に見えてきませんか?

一人の独断で戦を始めれば、傷つくのは領民であり、命を落とすのは家臣たち。だからこそ、北条家はどんなに時間がかかってもトコトン激論を交わしました。秀吉の22万という圧倒的な大軍に囲まれたあの最後の瞬間まで、北条家から誰一人として裏切り者が出なかったのは、この「全員でトコトン向き合う」という、優しすぎて泥臭い生き様の裏があったからではないでしょうか。

教科書が教えてくれる言葉のイメージ(表)に、彼らの切実な生き様の真実(裏)を重ね合わせたとき、北条氏の「滅びの美学」はより一層、渋い輝きを放っているように見えてきませんか?



■ 今夜も、カウンターの席を広くしてお待ちしています

きれいな「表」の顔だけでなく、不器用で、泥臭くて、どこか愛おしい「裏」の顔が見えたとき、私たちはその武将をさらに深く好きになる――。

そんな「それぞれの表裏」を抱えた武将たちが、もし天正6年の春、あのすれ違いの連続だった歴史の歯車を狂わせて、私の小説『春日山城 白銀の静寂に燃ゆ』の舞台へと突き進んでいったら、一体どんな裏の顔を見せてくれたのか。

そんな私の脳内妄想のすべてを、こちらのIF小説に詰め込んでいます。
本の詳細はこちら👇

『春日山城 白銀の静寂に燃ゆ —軍神が追い続けた「春」の兆し— 上杉謙信』



今夜は静かな夜ですが、お店の灯りはいつでも温かく灯っています。

皆さんが知っている、気になる武将や大名家の・・・

『実はこんな意外な一面(表裏)があるんだよ』という裏話」
「よく耳にする歴史の言葉の、実はカッコいい本当の理由」

そんな皆さんのマニアックなこだわりや、ふらっとした書き込みを、
今夜も楽しみにお待ちしています。


それでは、また次回の井戸端会議でお会いしましょう。


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