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【noteでBL】冬の近い日の初恋

企画に参加させていただきます! この度も素敵な企画をありがとうございました!

お題を見た瞬間に「卯月さん~!助けて~!」との〇太くんのように助けを呼ぶも「推奨人数二人」という文字にビビっただけで組み立て自体は何の問題もなく一人で出来た段田の話と「初恋」の話が過りました。
お家にお呼ばれ(?)してるのでもしかしたら親展はしてるのかもしれない。

これまでの段田と卯月シリーズ

https://note.com/saedabox2/n/n769a39f77681?sub_rt=share_sb

https://note.com/saedabox2/n/n47c6fcd50395


本編(約4100文字)
 
 ある日冬に近づいた秋の日。授業を終え、食堂で腹を満たした水菜卯月は大学すぐ側にあるアパートまで帰ろうとしていた。その日はバイトの予定もなく、「その日休講だからまた次の週会おうね」と言っていたから段田も大学には来ていない。「ネット通販でいろいろ注文したからその受け取りをするんだ~」と楽しそうに話していたのを卯月は思い出していた。段田のあの笑顔は注文したものが楽しみ、もあるだろうし、一緒のダンボールも楽しみにしているのだろう。そんなことを考えながら、学校の中を歩いていた時だった。
 ポケットに入れていたスマートフォンが鳴り響く。そこに書かれていたのは「段田」の文字。一体どうしたんだろう。またお腹が空いて動けなくなった、か、それともパンツを履き忘れたか……、不安を味わいながら卯月は電話を取った。
 
「助けて~! 卯月さ~ん!」
 
ヒーローにSOSを出す困った市民、もしくは猫型ロボットに泣きつく黄色いシャツと青いズボンの少年のような声色の段田の声が聞こえてくる。卯月の不安はさらに強まった。
 
「ど、どうしたんだ!?」
「ベッド、僕一人じゃ組み立てられないって~」
「え……?」
 
 卯月は段田の話を訊く。万年床だったところ、新たにシングルベッドを買ったらしい。ただ組み立ての推奨人数が二人、というとこで怖じ気づいてしまい、卯月を電話で呼んだらしい。
まあ、段田、デカいから。デカいベッドを買うしかなくて、となると支えとかが必要なのかもしれない。具合が悪い、とか怪我をした、とかではなくて安心した。
 
「あ、ああ……、今いくよ。ちょうど授業も終わったし」
「本当!? ありがとう~!? お菓子買って待ってるから~!」
 
 家に帰る、を予定変更して、卯月は電車で段田の家まで向かった。段田の住むアパートは、駅から歩いてすぐそばにあった。送られてきたアパートのリンク、はダンボール色をした建物で随分と目立つ場所にあったからすぐに分かった。部屋番号を確認して、チャイムを押す。
 インターホン越しに「卯月さん!」と聞こえてくる。そのまま、段田が卯月の元へやってきた。
 
「卯月さん……! きてくれてありがとう!」
 
 キラキラの、まるで飼い主の帰りを待っていた犬のようにニコニコ笑顔の段田。その笑顔に卯月の心臓が甘く跳ねた。
 
そして卯月は部屋の中に案内された。一人暮らし用アパートの広めの部屋。思いのほか整理整頓されている綺麗な部屋だった。視界に、作業途中です、と言わんばかりのダンボールの造形作品の作りかけの作品があったり、掃除機を掛けたけれども吸いきれなかったのであろうダンボールの欠片がぽつぽつ落ちていたり、ベッドを梱包していたダンボールがどん、と部屋の奥の方を占領しているくらいで、掃除をさぼった卯月の部屋よりずっと綺麗だった。食を忘れて作業に没頭、とかパンツを履き忘れて、といったエピソードとはあまり結びつかない部屋の光景だった。
 
「結構綺麗なんだな」
「うん! スペースないと工作出来なくなっちゃうし、湿気とかあると大変なことになるから割と掃除はマメにしてる。あと大きいダンボールとか作品は大学に置いてるからね~」
「なるほど」
 
ちらちらと視線を動かしながら卯月は段田の部屋を進んでいく。壁には額縁に入れられた、ダンボールの作品が飾られている。白いダンボールで作られた、雪景色と女性を描いた切り絵のような作品、ステンドグラスのようにカラフルなダンボールを細かく継ぎ接ぎしている作品。思わず眺めてしまうような完成度だった。
家具も全体的に濃い茶色・もしくは薄い茶色で統一されていた。「ダンボールが好きな人の部屋」と一目で分かる部屋だった。
 
「それで、そのベッドっていうのがこれなんだけど……」
 
そして、卯月は件のベッドの元へと案内された。先ほど見えた部屋の奥にあったダンボール。
 ダンボールの外側に推奨人数二人、という文字、そして二人で組み立てをしているピクトグラムが描かれている。確かにそれはびっくりするだろう。
 
「なるほど……」
「卯月さん、手伝ってもらっていいかな?」
「もちろん」
 
 元々このために来た。から手伝わない理由は一切ない。卯月は頷きながら答えた。
 
「ありがとう~!」
 
 そうしてシングルベッドの組み立て作業が始まった。
 
段田はいつもダンボールで工作をしているからか、組み立ての手際は随分とよかった。一人暮らし始めたての卯月が説明書片手に四苦八苦しながら家具の組み立てをしていた時の手際とは大違い。
卯月は自身が来なくても問題なかったのではとは思いつつも、一つ一つのパーツがそこそこ大きいためやっぱりいるに越したことはなかったかもしれない、と考えながら卯月は作業を手伝っていた。
 
「出来た~!」
 
 そこまで時間は掛からずにベッドは完成した。出来たベッドは茶色の四角い形のベッド。落ちたとしても怪我をしない高さ。茶色の四角いデザインも相まって、できあがったものはどことなくダンボールっぽい仕上がりだ。この部屋にぴったりのデザイン。卯月もどこか達成感を味わっていた。
 
「ありがとう~! 卯月さん! テレビ見ながらお菓子食べよう!」
「あ、ああ……」
 
 皿の上にはお菓子がいっぱい乗せられている。長方形のおかき、紫色のパッケージの、チョココーティングされたクッキー菓子、エアインチョコレート。茶色い四角いに近い形状のお菓子を並べたらそうなったのかもしれない。どことなくダンボールみがある、と卯月は感じていた。
 
卯月は段田とテレビ画面に映る映像を眺めながらお菓子を食べていた。時間は14時過ぎ。高校生までの頃であれば風邪を引いた時くらいにしか観ることが出来なかったドラマの再放送の時間だった。学生時代に流行っていて実家暮らしの時に母親と姉が熱心に見ていたな、みたいなドラマがやっていた。
前後左右の繋がりは詳しく分からない途中の話、なものの、ゲストの登場人物の男の子が主人公の女子高生に一目ぼれをする話だった。
 
「一目ぼれ、かあ……」
 
 どこか懐かしそうに呟く段田。その目線はどこか懐かしむような遠い目をしていた。
 
「……あるのか、そういう経験」
「うん。あるよ……。あれはね、運命的な出会い、だった……」
 
段田はクッキー菓子をさくさくと口にしながら随分と幸せそうに呟く。出会ってすぐにこのやりとりをして、この反応が返ってきたら胸が痛んで仕方が無かったかもしれない。けど、卯月の頭の中でこれから言われることは大体想像出来たし、なんとなくオチまで想像出来た。
 
「どんな出会いだったんだ……?」
「去年の11月。推薦入試の面接練習の帰りに出会ったんだ……。面接練習が終わって、次来るバスがあと15分で来る、っていう時にね……」
 
 段田はとろけるような笑顔で話す。それこそ、王子様が愛する人の姿を思い出す映画のワンシーン、のような美しさをしていた。そこまで美しい表情をする段田の一目ぼれ、の対象を、卯月はやはり確証に近い形で察していた。
 
「その子は外にいてね……。一目見た瞬間、僕のハートが、それこそ一目ぼれ、って言い表せるビジュアルをしていてね……。持ち帰りたい、って思ったんだ」
 
持ち帰りたい。口に出す人間が別の人間であれば意味での「お持ち帰り」という言葉にも取れるだろう。しかし、卯月は段田から出た言葉は文字通りの意味、だと、やはり確信的に思えた。
 
「外のゴミ捨て場の片隅に置かれていた、綺麗な、白い……、ダンボール……」
「ダンボール」
 
 ここまで黙って聞いていた卯月だったが、段田の言葉を繰り返してしまった。やっぱり、そうだと思った。そうじゃなかったらどうしようか、と思ったくらい。逆に、ダンボール、という予想通りの答えが返ってきてよかった、とすら思った。
 
「あれはまさしく、恋だった……。本当に可愛かったんだ……。小さな、宝石箱みたいなサイズのダンボールだったんだ……」
「……。なるほど……」
「けれども、うちの学校のゴミ捨て場、荒らされたり、を防ぐために、鍵が開いているのに時間制限があったんだ。そして、僕はもう、バスに乗らなきゃないし、その日の天気はその年初めての雪がちらついて、そして夜には雨になるっていう予報だったんだ……。もう、どうしよう、このダンボールが……ってちょっと泣きそうになってたんだ……」
「そう、だったのか……」
 
 相当切羽詰まった状況だったようだ。卯月もその後どうなったのかが気になり、つい、段田の話に意識を向けてしまっていた。
 
「でも、そこにたまたま、体育の先生が通りかかって、体育の先生に事情を話したら、そのダンボールを救出してくれたんだ……!」
「そうだったのか……」
 
 まるで昔話、突如出てきて助けてくれる登場人物、のように華麗に登場した体育の先生に拍手を送りたくなった。思いのほか段田の話に感情移入してたのかもしれない、と卯月は思う。
 
「先生に救出してもらったダンボールを受け取って、、初雪の中、僕はそのダンボールを抱きしめて帰ったんだ……」
 
うっとりとした表情で段田は言う。
美形の段田が真っ白い、ダンボールを抱きしめて、家まで帰る……。絵になるような、ならないような……。それが「鶴の恩返しに出て来そうな透きとおるような肌の美女」とかであれば絵にはなりそう、だけれどもダンボール……。いつも通りの段田だ、と思った。
 
「ちなみに、その初恋のダンボールって、どうなってるんだ?」
「あれ……!」
 
段田が指さしたのは、先ほど卯月が見た、雪景色と女性の切り絵のような作品が飾ってある額縁。あれがその初恋のダンボール、だったのか。
 
「なるほど……」
 
 物を包んで運んでという責務を全うし、こんな風に綺麗に大事にされていればダンボール、も幸せなのかもしれない、と卯月はぼんやり思いながらそれを眺めていた。
 
「ちなみに卯月さんは一目ぼれ、とかあるの?」
「……多分」
「え! 知りたい知りたい! どんな人?」
 
 どこからが一目ぼれ。顔だけ見たら一目ぼれ、なのか、それとも別の何か、なのか。
 
 流石に「目の前にいる」とは言えない。「内緒」と口にした。
 
「気になるなあ、また今度教えてね」
「……まあ、いつか、な」


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