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バンス(ヴァンス)副大統領のイラン戦争「正戦論」をカトリック司教団が非難

アメリカのカトリック司教協議会は教義(教理)委員長名でバンス(ヴァンス)副大統領の誤った「正戦論」解釈を強く非難し、アメリカ・イスラエルとイランの戦争に反対する教皇の姿勢を擁護する声明を出しています。


バンス(ヴァンス)がローマ教皇に反論

ローマ教皇レオ14世は「神はいかなる紛争も祝福されない」とX(旧ツイッター)に投稿し、「平和の君キリストの弟子である者は誰であれ、かつて剣を振るい、今日爆弾を投下する者の側に立つことは決してない。軍事行動が自由のための空間やPeace(平和)の時代を築くことはない」とアメリカ・イスラエルのイラン攻撃(イラン戦争)を強く批判しています。

バンス(ヴァンス)副大統領はカトリックに改宗してカトリック信徒になっていますが、ブルームバーグの記事(米副大統領、ローマ教皇の戦争批判に反論-「慎重」な発言求める)によると「保守系非営利団体ターニング・ポイントUSA(TPUSA)のイベントで、教皇の発言が第2次世界大戦にも当てはまるのかと問いかけた。第2次大戦では米軍がナチス・ドイツからフランスを、強制収容所から人々を解放したと指摘した。『剣を振るう者の側に神が決して立たないと、どうして言えるのか』」とバンス副大統領は述べたそうです。

またバンス副大統領は「私が政策について発言する際に慎重であることが重要であるのと同様に、教皇が神学の問題について語る際にも、極めて慎重であることが重要だ。真実に根差していることを確認しなければならない」とも話したそうです。

バンス(ヴァンス)とカトリック司教団

ザ・ニュー・リパブリック(The New Republic=TNR)はX(旧ツイッター)アカウントに(2026年)4月16日、「アメリカの司教たちがJD・ヴァンス(バンス)の聖書解釈の不条理さを非難」と投稿し、またザ・ニュー・リパブリックには『米国の司教団、JD・ヴァンス氏による「正戦論」の不条理な解釈を非難』と見出しをつけた記事が掲載されています。

U.S. Bishops Condemn JD Vance’s Absurd Interpretation of the Bible

The New Republic / Xアカウント

ザ・ニュー・リパブリック(TNR)の記事(米国の司教団、JD・ヴァンス氏による「正戦論」の不条理な解釈を非難)には「アメリカ・カトリック司教協議会(The U.S. Conference of Catholic Bishops )は、トランプ大統領によるローマ教皇攻撃を擁護するために『正戦論』( “just war” theory)を誤って解釈している共和党員(バンス副大統領)に対し、反論している」とあります。

そしてザ・ニュー・リパブリックの記事によると、アメリカのカトリック司教たちはトランプ政権に対し反発していているとのことです。

アメリカのカトリック司教たちがトランプ政権に反発した原因は、JD・ヴァンス(バンス)副大統領が火曜日に開催された「ターニング・ポイントUSA」のイベントで、レオ14世教皇に対して「神学的な事柄について語る際には注意すべきだ」と警告し、「『正戦論』を持ち出したことを受けたものだ」と記事には記載されています。

*ブルームバーグの記事には「正戦論」とは明確には書かれていませんでしたが、ザ・ニュー・リパブリックの記事ではカトリック司教たちはJD・ヴァンス(バンス)副大統領がターニング・ポイントUSAのイベントで、正戦論を持ち出して教皇を批判したとされています。

またザ・ニュー・リパブリックの記事によると、アメリカ・カトリック司教協議会は水曜日、教義委員長のジェームズ・マッサ司教(Bishop James Massa)による声明を発表し、イラン戦争に反対する教皇の姿勢を擁護しています。

マッサ司教は声明の中で「カトリック教会は千年以上にわたり正戦論を教えており、教皇聖下(せいか=教皇に対す敬称)が戦争に関する発言の中で慎重に言及しているのは、まさにこの長い伝統です」と述べ、そして「つまり、正戦(just war)であるためには、積極的に戦争を仕掛けてくる相手に対する防衛でなければなりません。教皇聖下が実際に述べたのは、『教皇は戦争を仕掛ける者の祈りを聞き入れない』ということです」と述べています。

またマッサ司教は、教皇は単に「神学的な意見を述べている」のではなく、「福音を説き、キリストの代理者としての務めを果たしている」と述べています。

そして、ザ・ニュー・リパブリックの記事によると、マッサ司教は「善意を持つすべての人々が、あらゆる戦争に伴う悪と不正義を避けながら、永続的な平和のために祈り、努力しなければならない」と声明の中で付け加えています。

The U.S. Conference of Catholic Bishops is responding to Republicans who are misinterpreting the “just war” theory to defend President Trump’s attack on the pope.

American Catholic bishops are pushing back against the Trump administration after Vice President JD Vance warned Pope Leo XIV to “be careful when he talks about matters of theology” and invoked “just war” theory at a Turning Point USA event Tuesday.

The United States Conference of Catholic Bishops, which represents Catholic leaders across the country, issued a statement Wednesday from its chairman on doctrine, Bishop James Massa, in which he defended the pope’s opposition to the Iran war.

“For over a thousand years, the Catholic Church has taught just war theory and it is that long tradition the Holy Father carefully references in his comments on war,” Massa said in his statement. “That is, to be a just war it must be a defense against another who actively wages war, which is what the Holy Father actually said: ‘He does not listen to the prayers of those who wage war.’”

Massa said that the pope wasn’t just “offering opinions on theology” but “preaching the Gospel and exercising his ministry as the Vicar of Christ. The consistent teaching of the Church is insistent that all people of good will must pray and work toward lasting peace while avoiding the evils and injustices that accompany all wars.”

President Trump called the pope “weak on crime” and “terrible for foreign policy” in a Truth Social post Sunday, and Vance, who converted to Catholicism seven years ago, tried to defend him at Tuesday’s event in Georgia, claiming that God supports just wars—a stark contrast to the pope’s assertion that “anyone who is a disciple of Christ, the Prince of Peace, is never on the side of those who once wielded the sword and today drop bombs.”

“Was God on the side of the Americans who liberated France from the Nazis?” Vance said to a sparse crowd. “I certainly think the answer is yes.”

House Speaker Mike Johnson echoed the same talking point on Wednesday, saying that “there’s something called the just war doctrine” and it is a “very well settled matter of Christian theology.”

Meanwhile, the U.S.-led war in Iran has killed an estimated 1,700 civilians in the country and damaged at least 17 Iranian health care facilities and 22 schools. Perhaps Vance and his boss in the White House need to take some moral direction from higher authority on what a just war actually is.

U.S. Bishops Condemn JD Vance’s Absurd Interpretation of “Just War” / TNR

カトリックの正戦論とは(山岸敬和教授)

山岸敬和・南山大学国際教養学部教授は笹川平和財団ウェブサイト記事(ヴァンス・共通善・イラン戦争―カトリック社会思想研究者が語るアメリカ政治―)の中で「カトリックには1500年以上の歴史を持つ正戦論がある。この伝統は、古代末期の神学者アウグスティヌスや、中世神学を体系化したトマス・アクィナスによって発展させられた。正戦論は、戦争が無制限に正当化されることを防ぐため、正当な理由、正当な権威、であるかなどの厳しい条件を提示してきた倫理的枠組みである」と述べられています。

また山岸教授は「もちろん正戦論は、政治権力によって戦争を正当化する道具として利用されてきた側面もある。しかしその本来の目的は、戦争を正当化することではなく、むしろ戦争を倫理的に厳しく制限することにあった。もし直接的な脅威が存在せず、自衛とは見なされない軍事行動が起こされれば、その正当性は認められず侵略に近いものとして批判の対象となる」ともも述べられています。

つまり「カトリックの正戦論は、国家の行動を無条件に支持するものではない。むしろ国家権力の行使を倫理的基準によって評価し、必要であればそれを批判するための枠組みとして機能してきたのである」との山岸敬和教授のご指摘は重要だと思います。

バンス(ヴァンス)副大統領と共通善

山岸敬和・南山大学国際教養学部教授は笹川平和財団ウェブサイトで『アメリカ政治とカトリック―「カトリック票」は存在するのか―」と題した記事も書かれています。

その記事の中で、山川教授は「副大統領のJ.D.ヴァンス(バンス)は、比較的最近(2019年)になってカトリックに改宗した政治家として知られている。彼はしばしば『共通善(common good)』という言葉を使い、家族や共同体の価値、秩序の維持を重視することを主張しながら、国境管理の厳格化や社会福祉予算の削減を打ち出している」と述べられています。

教皇フランシスコは2020年9月9日の一般謁見演説で「愛と共通善」について語られています。

すなわち、教皇フランシスコは「自分自身の善だけを求めるなら、その人はエゴイストです。そうではなく、自分自身の善を皆に向けて開き、分かち合うなら、その人は一個人を超えています」と述べられています。

バンス(ヴァンス)副大統領はトランプ政権のナンバー2としてトランプ政権の善だけを求めているように思えます。

また国境管理を厳格化し、社会福祉予算の削減を打ち出し、そしてイラン戦争を「正戦」とするバンス(ヴァンス)副大統領の行動には、教皇フランシスコが語られたような「共通善」は(個人的な意見ですが)ひとかけらさえないように思えます。

追記:教理(教義)委員長名で声明とキリ新

日本ではキリスト新聞が今回のアメリカ・カトリック司教協議会が教理(教義)委員長名で声明を出したことをキリスト新聞のウェブサイトで記事にしています。

そのキリスト新聞のウェブ記事(米司教協議会 トランプ政権の教皇批判受け教理委員長名で声明)には「米国カトリック司教協議会(USCCB、ポール・S・コークリー会長)は、教皇レオの戦争をめぐる発言に対する政治的批判が広がる中、教理(教義)委員長名で声明を発表し、カトリック教会の『正戦論』に関する理解を改めて明確にした。声明は、教皇の発言が教会の伝統的教えと矛盾しないことを強調し、誤解の是正を図る内容となっている」と書かれています。

また、今回の教理(教義)声明は「教会が千年以上にわたり維持してきた正戦論の基本原則を再確認するもの。すなわち、武力行使は厳格な条件の下でのみ許され、とりわけ『自衛』と『最後の手段』であることが不可欠とされる。実際、カテキズムも『すべての市民と政府は戦争回避のために努力する義務がある』と強調しており、戦争は常に回避されるべきものとして位置づけられている」とウェブ記事に記載されています。

そしてキリスト新聞のウェブ記事は「声明はこうした伝統に照らし、教皇の発言は正戦論の否定ではなく、その核心にある『戦争回避の優先』と『平和への強い志向』を改めて提示したものだと説明する。すなわち、教皇の発言は個人的見解ではなく、福音と教会の社会教説に根差した教導的発言であると位置づけられている」と報じています。 

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