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裁量労働制と健康確保措置の在り方(堤 明純・北里大学医学部公衆衛生学教授)

規制改革推進会議(第8回)働き方・人への投資ワーキング・グループが今年(2026年)4月14日にオンラインで開催されましたが、議題は「労働時間法制に係る政策対応の在り方について」。

その4月14日の働き方・人への投資ワーキング・グループで北里大学医学部の堤 明純教授が「裁量労働制における健康確保措置の在り方」と題して13分間、お話をされています。動画がありますので、ぜひ視聴していただきたと思います。

なお堤教授は厚生労働省の有識者会議で裁量労働制について議論した「これからの労働時間制度に関する検討会」(2021年7月26日~2022年7月15日)のメンバーの方になります。


裁量労働制における健康確保措置の在り方

規制改革推進会議は内閣府に設置されている政府の審議会(諮問機関)になります。その規制改革推進会議のワーキング・グループ「働き方・人への投資ワーキング・グループ」が4月14日にオンラインで開催されましたが、堤教授提出資料には次のように記載されています。

裁量労働制の運用において留意すべき疾病リスク要因

(1)長時間労働・過重労働は健康上のリスク
・週55時間以上の労働は(週35~40時間労働を対照として)、多くの疾患のリスクを上昇させることが確認されている

(2)概日リズム、睡眠(休息)は重要
・深夜勤務、交代勤務、不規則な勤務は健康上のリスク上昇
・概日リズムの乱れが健康上のリスクであることは研究が蓄積
・短時間睡眠は多くの疾患・死亡のリスクを上昇させる

*厚生労働省ポータルサイト「健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~」には「概日リズムとは、睡眠や体温、血圧、心拍、多くのホルモン分泌、免疫機能、代謝など、私たちの大部分の生体機能を司る約24時間周期のリズムのことです。しかし、概日リズムを生み出す体内時計の周期があまりにも長かったり、何らかの原因で体内時計の機能が障害されたり、光による時刻調整がうまくできなったりすると、睡眠リズムが大きく乱れてしまいます。このような、睡眠リズムの異常が生じるタイプの睡眠障害が『概日リズム睡眠・覚醒障害』です」と書かれています。

(3)十分な勤務間インターバル、心理的なディタッチメントの必要性
・十分な勤務間インターバルが取れないことは、労働者の健康や安全に影響する
・心理的ディタッチメント増加は、労働者のウェルビーイングを向上させる
・心理的ディタッチメントとは、オフの間に心理的に仕事から距離をおけること
・インターバルが長くても仕事メールの頻度が多いとディタッチできない

「裁量があれば長時間労働でも大丈夫か」という問いへの答えは否定的
・長時間労働、要求度の高い労働は、仕事のコントロールに関わらず 、独立した健康障害 (虚血性心疾患・ウェルビーイング)のリスク
・労働時間への裁量度が高くても、 不規則に働くことは睡眠の質の低下と疲労回復を遅延させる

労働者に与えられることが望ましい「裁量」の在り方

・労働者が自分で働き方や休み方について決められる裁量権
 ①一日の労働時間の長さ
 ②始業と終業 の時刻
 ③勤務中の休憩
 ④長期休暇や有給休暇のスケジュール
 ⑤介護や育児などによる休業 
・時間・休暇を決められる
・勤務スケジュールの裁量が増加した者は低下した者に比べ て、神経行動機能と睡眠の質の改善が 見られた

「裁量」を持つことによる負の側面

・Worktime controlの好ましい影響は、限定的であるという報告
・ 仕事と余暇のバランスで仕事へのウェイトが高いほうが労働時間が長く、 仕事に熱中し て時間を忘れてしまう頻度が高いと労働時間も長いなど、裁量労働制適用者に限らず、 仕事や会社に対する労働者の意識が実労働時間を長くしている
・自己を危険にさらす働き方(Self-Endangering Work Behavior)
・職場での成功を追求するあまり、自らの健康を損なう行動 • 具合が悪いにもかかわらず働く(プレゼンティイズム)
・ 休暇を取らずに働く
・労働者は自らの健康を犠牲にしてでも成功を追求する傾向があり、労働時間を契約以上に延長し健康を害することが多い。多くの労働者が労働時間を記録せずに過重労働を 行っている。

労使双方にとって望ましい健康確保措置の在り方

長時間労働に係る健康確保対策は必須
事業者に求められる事項
・正確な労働時間(実労働時間)管理の必要性
・ 裁量に見合うタスクの設定
・適切な目標(タスク)設定
・設定したタスクをこなせないなら調整する必要(労使間)
・適切な(透明性のある)成果の評価をする 必要
・課題:マルチプルワーク(兼業)の労働時間の把握
労働者の自覚・自己管理能力も重要
・時間管理、生活の規則性

2024年4月改正専門業務型裁量労働制健康確保措置に加えて
事業場における対象従業員全員を対象とする制度的な措置
・勤務間インターバルの確保
・深夜労働の回数制限
・労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の 制度の適用解除)
・年次有給休暇の連続取得の促進
・職場の特性に応じた(時間外)連絡方法のルール化
・つながらない権利⇔セグメンテイション・プリファレン ス(オフでも働きたい人)
・管理監督者教育
・労働者の健康教育(自己管理能力醸成)(安全文化の促進:心理的安全性)
・過度に仕事にのめりこむ状況を避ける
・心身の健康を保ちながら働き続けられるよう、生活をデ ザインできる(律する)よう、学習の機会を定期的に設ける
個々の対象従業員の状況に応じて講じる措置
・一定の労働時間を超える対象従業員への医師の面接指導
・代償休日または特別休暇の付与
・健康診断の実施 • 心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
・適切な部署への配置転換
・ 産業医による助言
・指導、または保健指導の実施

裁量労働制における健康確保措置の在り方(北里大学医学部 堤 明純)(PDFファイル)

第8回 働き方・人への投資WG動画

第8回 規制改革推進会議 働き方・人への投資ワーキング・グループ(公式 規制改革チャンネル)YouTubu動画(全2時間37分)において堤教授のお話は39分から始まり52分(正確には53分に少しだけ)までの13分間。

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