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[年金] 年金運用は「100年間ゼロ成長」という前提―国民負担率を5%下げるための“攻め”の処方箋

「最近、手取りが本当に増えませんよね」

カフェで隣り合わせた若い会社員が、ため息混じりに同僚と話していました。

2024年、2025年と、日本の春闘は30年ぶりとも言われる歴史的な高い賃上げ率を記録しています。それなのに、私たちの生活に「ゆとり」の実感が乏しいのはなぜか。

その正体は、給与明細の右側に並ぶ、じわじわと膨らむ「社会保険料」という名の重石です。

1. 「100年間0%」という、ありえない前提

日本の国民負担率は今や40%台後半に達しています。稼いだお金の半分近くが、何らかの形で公的なシステムに吸い上げられている。

この「負担の増大」こそが、現役世代の可処分所得を押し下げ、日本経済の活力を奪っている元凶であることは疑いようがありません。

では、なぜこれほどまでに負担が高いのか。少子高齢化だから仕方ないのでしょうか?

実はそこには、私たちが「老後の安心」という言葉の裏で、官僚たちが用意した「極端すぎるほど悲観的なシナリオ」に縛り付けられているという、あまりに不都合な構造が隠されています。

今日は、私たちの年金制度の深部、そして世界最大級の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用を巡る「思考停止」の壁を打ち破るための話をしようと思います。

皆さんは、日本の年金財政がどのような前提で計算されているかご知存いでしょうか。

厚生労働省が5年ごとに行う「財政検証」という、いわば年金の健康診断があります。そこで、最も保守的なシナリオとして設定されているのが、「100年間にわたって運用利回りが実質0%」という想定です。

「100年間、経済が全く成長せず、投資をしても資産が実質的に増えない」。

そんなSFのような悲劇的な状況を、国は「最悪の事態に備えるため」として、制度設計の土台に置き続けています。

*100年間最悪の運用成績に備えるのだそうですww

もちろん、リスク管理として厳しい想定をすること自体は否定しません。しかし、この「0%想定」が、今の私たちの首を絞めているとしたらどうでしょうか。

実態を見てみましょう。GPIFの運用成績は、私たちが想像するよりも遥かに優秀です。2025年12月末までの直近5年間の平均利回りは、年率で約11%から12%前後に達すると推定されています。

2020年度には過去最高の+25.15%を叩き出し、2023年度も+22.67%という驚異的な数字を残しました。市場運用を開始した2001年度からの長期で見ても、累積収益率は年率+4.71%です。
*この期間は確かに最悪の期間でしたが….成績は年率+4.71%

「0%」の想定に対して、現実は「約5%」。この乖離は何を意味するのか。

それは、本来であれば「もっと保険料を下げられる」あるいは「将来の給付をもっと増やせる」はずの余裕があるにもかかわらず、国が「もし0%になったら大変だから」という理由で、現役世代から必要以上の保険料を徴収し続けている、という構造です。

いわば、絶対に起きないような大嵐を想定して、晴天の下で国民に「もっともっと重い雨具を着ろ」と強要しているようなものです。これでは、歩みが遅くなるのは当たり前でしょう。

2. 「マクロ経済スライド」という静かな痛み

この過剰な悲観論がもたらす最大の弊害が、給付額を自動的に削る「マクロ経済スライド」の長期化です。

日本の公的年金は、20歳から60歳までの全員が加入する「基礎年金(国民年金)」を1階とし、会社員が加入する「厚生年金」を2階とする構造です。現役世代が納める「掛け金(保険料)」を、そのまま今の高齢者の「受給」に充てる「賦課方式」が基本となっています。

この仕組みを維持するために導入されたのがマクロ経済スライドです。これは、現役世代の減少や平均余命の伸びに合わせて、年金額の伸びを低く抑える調整弁です。つまり、私たちの将来の受け取り額は、今の制度のままでは「実質的に目減りしていく」ことが運命づけられています。

もし、前述の「0%想定」が続けば、この調整はいつまでも終わりません。

基礎年金の積立金は、経済成長がゼロに近いケースでは2059年度頃に底をつくと試算されており、そうなれば給付水準はさらに大きく下がることになります。

しかし、もし運用の前提を現実的な数字に引き上げることができれば、このマクロ経済スライドを予定より早く終了させることが可能です。それは、将来の受給額(所得代替率)の低下に歯止めをかける、唯一にして最大の処方箋なのです。

3. GPIFの150兆円を「円」と「物価」の守りに変える

では、具体的にどうすればいいのか。私が提案したいのは、GPIFの資産構成(ポートフォリオ)の戦略的な変更です。

現在、GPIFは約293兆円という巨額の資産を運用しています。その半分、約150兆円は外国株式や外国債券で運用されています。確かにこれまでは、円安局面で利益が出てきました。しかし、これは裏を返せば、日本円の価値が下がれば下がるほど年金が潤うという、歪んだ「円安依存」の構造です。

今の日本を苦しめているのは、輸入コストの上昇によるインフレ、つまり「悪い円安」です。

ここで、GPIFが保有する莫大な外貨資産の一部を売却し、日本国内の「物価連動超長期国債」にシフトするというプランを考えます。これには3つの劇的なメリットがあります。

  • 第一に、直接的な「円安対策」です。
    世界最大級の投資家であるGPIFが、外国資産を売って円に戻す。この「資本還流(キャピタル・リパトリエーション)」の動きは、強力な円買い需要を生みます。
    市場に対して「これ以上の円安は許容しない」という強烈なシグナルとなり、ガソリンや食料品の価格を押し下げる効果が期待できます。これは、増税なしで国民の生活コストを下げる、実質的な減税と同じ意味を持ちます。

  • 第二に、「インフレへの完全防御」です。
    通常の国債は、インフレになると実質的な価値が目減りします。しかし「物価連動債」は、物価が上がれば元本も増える仕組みです。
    年金の給付額は物価に合わせて変動しますから、運用資産も物価に合わせて動くようにすれば、将来の世代に対して「物価がどれだけ上がっても年金の購買力は絶対に守られる」という、確固たる信頼を提供できるのです。

  • 第三に、運用の「安定」と「脱・官製相場」です。
    現在の株式25%、外債25%という構成は、世界経済の暴落リスクに常に晒されています。これを、より確実性の高い国内の物価連動債へ「毎年一定額」を機械的にシフトしていく仕組みに変える。これによって、政治的な恣意性を排除しつつ、着実に「国民の生活を守る盾」を構築していくことができます。

4. 国民負担率を5%下げるための、3つの処方箋

「そんなにうまくいくのか?」という声が聞こえてきそうです。しかし、ここまでの議論をまとめれば、国民負担率を具体的に「5%」引き下げるための道筋が見えてきます。

  1. 経済前提の現実化(負担率-1〜2%相当):
    官僚的な「0%想定」を捨て、実態に即した1〜2%程度の成長前提に修正します。これにより「将来の不足分」という過大な見積もりが解消され、現在の保険料引き上げを凍結、あるいは引き下げることが可能になります。

  2. 運用益の社会保険料還元(負担率-2%相当):
    現在は「100年後のため」だけに貯め込まれている運用収益のうち、一定の基準を超えた超過分を、翌年の健康保険料や年金保険料の軽減に直接充当します。運用が良ければ手取りが増える。このシンプルな実感こそが、現役世代に活力を与えます。

  3. 円安コストの削減(負担率-1〜2%相当):
    GPIFの外貨資産の円還流により、円安によるインフレコストを抑えます。光熱費や食料品価格の安定は、すべての国民の可処分所得を実質的に押し上げます。

これらを組み合わせれば、40%台後半で喘いでいる国民負担率を、40%台前半まで押し戻すことは決して夢物語ではありません。

結論:守るだけの年金から、助けるための年金へ

「100年間、成長はゼロである」
緊縮財政なら達成できる

この言葉を信じ続けることは、日本という国に「未来はない」と宣告しているのと同じです。しかし、実際の日本企業は稼ぎ、GPIFは世界有数の利益を出し、労働者の賃金もようやく動き始めました。

私たちは、いつまで「最悪のシナリオ」という名の、自分たちを縛る鎖に耐え続けなければならないのでしょうか。

年金制度の持続性とは、ただ積立金を増やすことではありません。その制度を支える現役世代が、過重な負担に潰されることなく、今日という日を豊かに暮らせること。それこそが、100年先まで制度を維持するための真の土台ではないでしょうか。

「0%想定」という思考停止を打ち破り、私たちが積み上げた293兆円という巨大な富を、今の国民を助けるための戦略的な武器に変える。そのパラダイムシフトこそが、今の日本に最も必要な「処方箋」だと私は確信しています。

さて、皆さんはどう思われますか?

「もしもの時」のために今を犠牲にし続けるか。それとも、「今を生き抜く力」を蓄えるために、資産のあり方を変えるべきか。

この議論の先にしか、私たちが本当に納得できる「手取りの増える未来」はないのかもしれません。


追記:巨大マネーの背後に横たわる「官僚の老後」

さらに、この巨大な年金マネーの背後には、私たち国民が到底無視できない「利権の循環」という深い闇が横たわっています。

GPIFが抱える約293兆円という天文学的な資産。その運用の実務は、国内外の民間機関に委託されていますが、ここが官僚たちの格好の「再就職先(天下り先)」となっている現実はあまり知られていません。

国民が納めた保険料から数千億円規模の手数料が支払われ、それが「手土産」となって官僚OBが役員や顧問として迎え入れられる――。

近年では批判をかわすためか、「顧問」や「アドバイザー」という名目で密かに数社と契約し、多額の報酬を渡り歩くスタイルが横行しているといいます。

国民には「100年間のゼロ成長」という絶望的なシナリオを押し付け、過重な社会保険料で生活を圧迫しておきながら、その積立金を運用する仕組み自体が官僚たちの「老後の安泰」を支える装置と化している。

これこそが、社会保障費が高止まりし続ける構造的な病巣のひとつです。運用の透明性を高め、こうした中間コストを徹底的に排除すること。それもまた、国民負担率を下げるためには避けては通れない戦いなのです。


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葦原 翔(あしはら かける) 読んでいただきありがとうございます!もしこの記事が面白い、役に立ったと感じたら、下の「チップを渡す」からサポートしていただけると嬉しいです。あなたの応援が、次の記事を書く大きな励みになります。

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