[高市改革] 2027年予算改革の正体——国家という巨大な船が「変動金利」に乗り換えた日
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こんにちは、葦原翔です。
「国の借金が1,100兆円を超えました」
「対GDP比で214.5%という、主要先進国でダントツ最悪の水準です」
ニュースでこうした数字を聞かされても、どこかピンとこないのが本音ではないでしょうか。
だって、そうでしょう。
「日本は破綻する!」と騒がれ始めてから、かれこれ四半世紀以上が経ちます。
それでも街には明かりがともり、自販機からは温かい缶コーヒーが出てきて、コンビニの棚には整然と商品が並んでいます。
「なんだ、結局ダイジョウブじゃないか」と、私たちが麻痺してしまうのも無理はありません。
しかし、2027年度から始まる政府の「予算プロセス抜本改革」のニュースを眺めていると、静かな、しかし決定的な地鳴りが聞こえてきます。
補正予算の連発を封印し、半導体やAIなど17の戦略分野に複数年で370兆円を投じるというこの改革。
一見すると「財政を引き締めつつ、成長分野へ投資する賢い選択」に見えます。
ですが、その足元で起きている構造の変化を丹念に紐解いていくと、まったく別の景色が見えてきます。
それは、日本という巨大な船が、誰にも気づかれないうちに「固定金利」から「超・変動金利」へと借金を乗り換えてしまったという事実です。
今回は、難しい専門用語をできるだけ噛み砕きながら、私たちの財布や生活を静かに揺らし始めている「国家の会計のからくり」について、一緒に考えてみましょう。
まず、よく耳にする「統合政府」という考え方から話を始めてみましょう。
「統合政府BS(バランスシート)」とは、政府と日本銀行を「親会社と子会社」のように合算して、一つの連結決算として見なす考え方です。
政府単体で見ると、1,100兆円超という途方にも暮れる国債(借金)を抱えていて、今にも倒産しそうに見えます。
ところが、子会社である日本銀行の金庫を覗いてみると、なんとその国債の「約半分」を日銀が買い取って保有しています。
親会社(政府)の借金を、子会社(日銀)が持っている。
連結決算のルールでは、親子間の貸し借りは相殺して消すことができます。
つまり、統合政府というレンズを通すと、巨額の国債は帳簿上「消えてなくなる」のです。
これを見た一部の学者や政治家は「ほら見ろ、統合政府で見れば日本の借金なんて実質半分だ!自国通貨建ての国債なのだから、破綻リスクなんてゼロじゃないか!」と喝采を叫びました。
たしかに、形式的なデフォルト(債務不履行)という意味では、その通りです。
円を無制限に刷れる中央銀行がいる限り、日本政府がお金を払えなくなって破産することは原理的にありません。
なんだ、やっぱり魔法の解決策があったんだ!
……と、手放しで喜べればどれほど楽だったでしょうか。
世の中に「無料のランチ」が存在しないように、この魔法の会計にも、非常に恐ろしい「隠された対価」が存在していました。
帳簿の上で国債が消えたとき、裏側で一体何が起きていたのか。
ここが、今回の話の一番のキモになります。
日銀が市中の銀行から国債を買い取るとき、日銀は紙幣を印刷してトラックで銀行に運んでいるわけではありません。
日銀のパソコン画面上で、民間銀行が日銀に開いている口座「日銀当座預金」の数字を増やすことで支払いを済ませます。
つまり、日銀は「国債」という政府の借金を買い取る代わりに、「日銀当座預金」という新たな負債を抱え込んだわけです。
これを、住宅ローンに例えてみましょう。
政府が発行していた本来の「国債」は、言ってみれば「30年固定金利の住宅ローン」です。
固定金利ですから、世の中の金利がどれほど急騰しようが、毎月の返済額(利払い)は満期まで一切変わりません。
金利が上昇しても、過去に借りた分については何年も猶予がある、きわめて頑丈なバリアに守られていたのです。
ところが、日銀が異次元緩和で国債を大量に買い集め、代わりに「日銀当座預金(約500兆円)」を積み上げたことで、構造が一変しました。
日銀当座預金とは、いわば民間銀行からの「超・短期の預かり金」です。
日銀がインフレを抑えるために金利を引き上げると、この約500兆円もの当座預金全体に対して、即座に利息(付利)を払わなければならなくなります。
そう、統合政府全体で見ると、かつての「30年固定金利」の借金が、いつの間にか「全額・変動金利」の住宅ローンへとすり替わってしまったのです。
「破綻はしない魔法」を使った代償として、日本という船は「金利がほんの少し上がるだけで、即座に利払いが爆発する極めてデリケートな体質」へと変貌を遂げました。
固定金利時代なら、金利上昇の影響がじわじわ効いてくるまでに10年ほどの猶予がありました。
しかし今の変動金利構造では、日銀が利上げのボタンを押した瞬間に、数兆円規模のコストが即座に跳ね上がります。
まさに、自分で自分を縛り上げてしまったような状態です。
「なるほど、構造はわかった。でも金利を上げなければいいだけの話では?」
そう思われるかもしれません。
確かに、金利をゼロに抑え込み続ければ、利払いの爆発は防げます。
しかし、ここで登場するのが、為替市場という百戦錬磨のモンスターです。
海外の国々(アメリカや欧州)がインフレを抑えるために金利を上げている中で、日本だけが「借金の利払いが怖いから」と金利を低いまま放置したら、どうなるでしょうか。
投資家たちは一斉に「金利のつかない円」を売り、「高い金利がもらえるドル」を買います。
これが、私たちがここ数年目撃してきた「歴史的な円安」の正体です。
市場の投資家たちは、実に目ざとくこの構造を見抜いています。
経済学には「FTPL(物価水準の財政理論)」という考え方があります。
少し難しそうに聞こえますが、内容はきわめて人間味に溢れたものです。
「通貨(円)の価値とは、将来その政府が税金でちゃんと借金を返せるという信頼そのものである」という理論です。
市場はこう考えているのです。
「日本の統合政府は、対GDP比214%もの借金を抱え、しかもそれを変動金利化させてしまった」
「金利を上げれば利払いで自滅し、増税しようとすれば国民が大反対するだろう」
「ということは、この政府は将来、まともに税金で借金を返す気がないな?」
「なら、どうやって借金を減らすつもりだ?……そうか、インフレと円安を起こして、円そのものの価値を薄め、借金を実質的に目減り(帳消し)させる気だな!」
市場がそう確信した瞬間、円が猛烈に売られ、輸入物価が跳ね上がり、スーパーの食品が値上がりします。
私たちが日々感じている「生活の苦しさ」や「物価高」は、実は「政府の膨大な借金の実質的な帳消しプロセス」に、私たちが巻き込まれている証拠でもあるのです。
政府が明示的な「増税」をしなくても、円安とインフレという「隠れたインフレ税」によって、私たちの預金の購買力は静かに政府へと移転しています。
こうした絶体絶命のジレンマの中で打ち出されたのが、冒頭で触れた「2027年予算改革」です。
補正予算の連発という「打ち出の小づち」を自ら封印し、当初予算に集約する。
そして、AIや半導体といった17の成長分野に上限を設けず集中的に投資する。
政府が掲げるこの改革の正体は、単なる「行革」や「節約」ではありません。
これは、日本という国が仕掛けた「一か八かの大バクチ」です。
政策の狙いは明確です。
「もう金利を力ずくで抑え込む(財政抑圧)のには限界がある」
「ならば、17分野への集中投資によって、金利上昇のスピードを遥かに上回るペースで名目GDP(国の稼ぐ力)を爆発的に増やし、税収を増やすしかない!」
名目成長率が、金利(借入コスト)を上回り続ければ、対GDP比の債務残高は時間をかけて自然と下がっていきます。
これが、政府の描く「成長主導の財政健全化」というシナリオです。
まさに、背水の陣。
投資が実を結び、世界をリードする新産業が生まれて税収が跳ね上がれば、日本は奇跡的な復活を遂げるでしょう。
しかし、もしその投資が期待外れの成果に終わり、ただ単に歳出(借金)だけが膨らんだとしたら……。
市場の不信感は決定的なものとなり、さらなる円安と金利上昇のダブルパンチが日本を襲うことになります。
歴史を振り返れば、戦前の日本も「財政法第5条」ができる前、軍事費調達のために日銀に国債を直接買い取らせ、最終的に激しいハイパーインフレを引き起こした経験があります。
「一度膨らませてしまった財政の風船を、破裂させずに小さく畳むこと」がいかに難しいか、歴史は痛いほど教えてくれています。
さて、私たちはこの事実から、一体何を考えるべきでしょうか。
「国が大変だ、もうおしまいだ」と悲観する必要もなければ、「統合政府だから大丈夫」と楽観に浸る必要もありません。
大切なのは、私たちが生きている時代の「構造」を冷徹に見極めることです。
国家という巨大な船が、固定金利から変動金利へと乗り換え、成長という名の荒波へ向かってフルスロットルで舵を切ったこと。
排他的な政治論争ではなく、そのプロセスでどうしても「円安」や「緩やかなインフレ」という摩擦熱が生じ続ける現実。
この構造を理解していれば、私たちが個人として取るべき行動もおのずと見えてきます。
銀行口座にただ円を預けておくだけでは、静かな「インフレ税」によって購買力が目減りしていく時代です。
自分の資産を「円」だけに集中させず、グローバルな分散投資を行ったり、インフレに強い実物資産や成長領域へ自らもコミットしたりしていく姿勢。
あるいは、何よりも自分自身のスキルや稼ぐ力を高め、物価上昇を上回る価値を生み出せる人間であり続けること。
国家が「成長による逃げ切り」という大バクチに挑んでいるのなら、私たち個人もまた、ただ守るだけでなく、しなやかに変化に適応していく必要があります。
2027年、日本の予算プロセスが大きく変わります。
それは単なる行政の手続きが変わる日ではなく、私たちが「自分の資産と生活の防衛」について、本格的に腹を括るべき時代の始まりなのかもしれません。
みなさんは、この国家の大きな賭けを、どのように見つめますか?
追記:
日銀による国債の「間接引き受け」構造は、統合政府のBS(バランスシート)視点で見ると、負債の性質を「固定金利」から「変動金利」へ実質的に組み替えたことに等しい。
具体的には、日銀が市中銀行から巨額(約540兆円)の既発国債を買い取る際、その代金は銀行が日銀に持つ「日銀当座預金口座」の数字を増やす形で支払われる。
本来、既発国債の金利は固定だが、この日銀当座預金には政策金利に連動した利息(付利)がつく。仮に政策金利が現在の約1%程度で推移すれば、日銀は銀行に対し、年間ベースで約5.4兆円もの利息を支払う計算になる。
「日銀が利上げをすると国の国債利払いが増える」という既存メディアの解説は、厳密には借換債などの「新発債」には当てはまるが、既発債の金利自体には影響しないため、正確性を欠く。
真のリスクは、統合政府の負債が実質的に変動金利化したことにより、利上げが日銀の当座預金付利コストを即座に直撃し、日銀の損益や国庫納付金の減少を通じて財政を圧迫する構造にある。この「負債の変動金利化」という本質的なリスクは、一般にはほとんど説明されていない。
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