黄色いエントツと、2枚のシール
AI: 双子のチェックテープ、あれからどうなったか気になっていました。
サイシフ: ちゃんと、また出会えたんですよ。番号を頼りに。

AI: それは良かった。
サイシフ: でも、再会したDP袋とネガは、そのまま一緒にいられるわけじゃないんです。
AI: ハンガーの上で整列した後、また役割が分かれるんですね。
サイシフ: ネガはプリンターにかけられて、写真として焼かれていきます。DP袋の方は、その間待っていて、終わればまた一緒です。
AI: 旅のストーリーは、そろそろ中盤ですか。
サイシフ:ええ。ただ、この段階で、大事な仕組みが加わるんです。「納期」と「品質」です。
AI:「納期」は、お客様がいつ受け取りに来るか、という話ですね。「品質」は、また別の機会で、、、、、。
サイシフ:当時は、受付の時間帯によって、仕上がりの区分が決まっていました。午前中受付、15時受付、その日中受付、というふうに。
AI:それぞれ、仕上がりまでの猶予が違ったわけですね。
サイシフ:そうです。だからDP袋には、その区分を一目で分かるようにする、ちょっと変わった目印がついていました。私たちは「エントツ」と呼んでいたんですが。
AI:エントツ、ですか。工場の建物みたいな響きです。
サイシフ:切符くらいの大きさに切った、色画用紙です。それを縦向きにして、DP袋の一番上の左に、ホチキスで留めるんです。立っている姿が、ちょっと煙突みたいに見えたので、そう呼んでいました。

AI:色によって、区分を分けていたんですか。
サイシフ:黄色かピンク、そのどちらかが「午前中納期」だったと思います。他の色が、15時受付やその日中受付に割り当てられていたはずです。
AI:つまり、ケースに並んだDP袋を遠くから見ただけで、どれを急いで処理すべきか、色で瞬時に判断できる仕組みだったわけですね。
サイシフ:そうなんです。フィルムとDP袋を繋ぐのがチェックテープの4桁の数字だとしたら、エントツは、時間との約束を守るための目印でした。
AI:番号は「誰のものか」を示し、色は「いつまでか」を示す。現像所の中には、常に2種類の情報が、静かに並走していたわけですね。
サイシフ:プリントが仕上がると、また同じDP袋に戻されます。写真とネガと、お客様の名前が、ようやく一つに揃う瞬間です。
AI: 一度分かれたものが、また一つに戻るわけですね。
サイシフ: その間に、もうひと工程あります。印画紙が現像されている間、ネガフィルムの方は6コマずつにカットされるんです。
AI: 6コマずつ、ですか。1本のフィルムが、細長い帯のまま戻るのではなく、切り分けられた状態になる。
サイシフ:そうです。ネガシートというのがあって、6コマまで入るサイズになっているんです。だから、その長さに合わせて切っておく。プリントと同じ順番、同じコマの並びで揃うように、切って整えておく。

AI: ロールのままでは都合が悪かった、ということですか。
サイシフ: ええ、ロールのままだと、あとでネガを確認するのも煩わしいし、袋も膨らんでしまうんです。
AI: その6コマに切り分ける作業、地味だけど手間がかかりますね。
サイシフ: ええ。でも、その手間のおかげで、プリントとネガが最後にもう一度、正しい順番で揃うんです。プリントの仕上がりと、ネガシートに収まったネガフィルム。この2つを、DP袋に入れる前に、番号で最終確認します。
AI: チェックテープの出番、ここでもう一度あるわけですね。
サイシフ: そうです。パトローネに貼った方の番号と、DP袋に貼った方の番号。現像液を一緒にくぐり抜けてきたパトローネ側のシールと、ずっとお客様の名前と一緒にあったDP袋側のシール。この2つの番号が一致して、初めてお客様に返せる。
AI: 離れていた2つが、番号という共通の合図で、また出会う瞬間ですね。
サイシフ: そう言われると、なんだか裏方に徹していたような存在だったんだなと、今さら思います。
AI:バラバラに扱われていたものが、最後にもう一度、袋という一つの形の中に収まる。
サイシフ:そこから、現像所の営業マンが、また各カメラ店を回って届けます。お客様がその袋を受け取る頃には、こんな工程があったことなんて、誰も想像していません。
AI:写真を受け取る側にとっては、ただの紙袋一つです。でも、その裏側では、番号と色という、二つの静かな仕組みが、何千本ものフィルムを、迷子にせずに送り届けていた。
サイシフ:あの黄色やピンクの小さな紙切れ一枚が、今日撮った写真を、遅くとも明日にはお客様の手元に戻してくれる約束でした。
そういえば、「パトローネ」って、そもそもどういう意味なんですか。

AI:ドイツ語で「筒型の容器」を指す言葉です。金属でできた、あの円筒の形そのものが、名前の由来になっています。
サイシフ:歴史は古いんですか。
AI:1925年に発売されたライカが、35mmフィルムを採用したことがきっかけで広まりました。その後1934年、コダックが発表した「135フィルム」の規格が、今も知られるパトローネ入りフィルムの原型になっています。
サイシフ:ライカが起点だったんですね。
AI:ちなみに、ライカは1935年、真鍮製で繰り返し使えるパトローネも出しています。使い捨てが主流だった中で、金属を大事に使い回す発想が、当時からあったわけです。
サイシフ:フィルムそのものより、容器の方に手をかけていたんですね。
AI:ええ。もう一つ、豆知識なんですが。1983年、コダックがパトローネの側面に、市松模様?のコードを印刷する仕組みを導入しました。
サイシフ:それは何のためのものですか。
AI:フィルムの感度や枚数を、カメラが自動で読み取るためのコードです。あなたが現像所で手作業で貼っていた、4桁のチェックテープより少し後の時代に、今度はカメラの中でフィルムを読み取る仕組みが登場した、ということになります。
サイシフ:人の手で管理する番号と、機械が読み取るための模様が、同じ筒の上に乗っていたわけですね。
AI:ひとつのパトローネの中に、人の手の時代と、機械の時代が、静かに同居していたのかもしれません。
サイシフ:あのDXコード、今のバーコードの前身だったんですか。
AI:実は、そこは少し訂正が必要です。あれはバーコードではなく、電気の接点だったんです。
サイシフ:光学的に読み取っていたわけじゃない、と。
AI:ええ。パトローネの側面にある、あの銀と黒の市松模様、光でスキャンするのではなく、カメラ側の金属端子が直接触れて、電気が通るか通らないかで情報を読み取っていました。

サイシフ:何かの自動化を、容器で伝えらるんですね。
AI:近いかもの発想です。12個のマス目があって、銀色の部分は電気を通し、黒色の部分は通さない。その組み合わせのパターンで、「ISO100、36枚撮り」といった情報を、カメラが自動的に読み取っていました。
サイシフ:富士フイルムはどうだったんですか。
AI:実は富士フイルムは、DXコードが規格化される前の1970年代後半から、自社製フィルム向けに、独自の2接点式の検知機構を先行して搭載していました。DXコード導入後もしばらくは、独自の接点がDXコードのそばに並んで残っていたそうです。
サイシフ:普及はどこまで進んだんですか。
AI:1983年にコダックが規格化した後、世界中のフィルムメーカーがこの方式を採用しました。ほぼ業界標準として、広く定着したと言っていいと思います。
サイシフ:チェックテープの4桁の番号と、この接点と。似ているようで、仕組みは全然違うんですね。
AI:片方は人の手で貼って、人の目で確認するための番号。もう片方は、機械が触れて、機械だけが読み取る模様。同じ「情報を運ぶ」という役割でも、宛先が人間か機械かで、仕組みそのものが全く違っていた、ということになります。
機械が読む模様も、人が貼った番号も、結局は誰かを迷子にさせないためのものだったんですね。
AIの返事は、いつも忖度して明るい。
「Amazonのアソシエイトとして、サイシフは適格販売により収入を得ています。」
【この記録について】本記事は、著者の50年前頃の記憶の断片をベースに、AI(人工知能)との対話を通じて、当時の泥臭い空気感や技術の過渡期の雰囲気を再現・再構成したエッセイです。あくまで個人の体験に基づく主観的な記録(当時の思い出)としてお楽しみください。
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