創作物が何%の人に刺されば、同人活動は継続できるのか?
こんにちは、東方project版画製作サークル”あぴあぴ”のイラスト担当さくらです。
今回は、私たちのサークルが、活動開始から約8か月で441枚の版画頒布した経験から、「創作物が、一体何%の人に刺されば、同人サークルを継続できるのか?」を考察したいと思います。
(結論先出しになりますが…)この記事を読むと、「自分の創作したいものをひたすらに突き詰めていけば、十分にサークル運営は可能である」という安心が手に入ります。
私たちのサークル概要
私たちのサークル”あぴあぴ”は、東方projectのキャラクターを版画として製作&頒布しているサークルです。
各作品の和装版は100枚限定生産、シリアルナンバー付与、真正性の落款付きで頒布しています。
2024年6月 稼働開始
2024年12月 版画作品の頒布開始
2025年8月 版画作品 約8か月で累計441枚頒布達成


歴代作品一覧は以下の記事にまとめてます。
何%の人に創作物が刺さればいいのか知るメリット
私(さくら)は、私たちのサークルの創作物が何%の方に刺されば、私たちのサークルを安定して運営していけるのか、統計などを用いて計算して把握しています。
「刺さる」の定義をしておきます。 「刺さる」とは、『お金を出して創作物を買ってもいいと思い、実際に買ってくれる』とします。
また、「刺さり率」とは、『購入者数÷見込み顧客数のパーセンテージ』のことです。
これ(必要な刺さり率)を把握することは、非常に大きなメリットがあります。
まず、みなさまの創作において、”無理にお客様の方を見なくてよくなります”。 つまり、お客様の求めるものに迎合する必要が無くなり、市場からの圧力への対抗力が上がります。
心の中で「自分が創ろうと思っているものが、自分のサークルに必要な刺さり率X%を上回ってそうだ」と確認できたら、迷うことなく完成まで走ることができるのです。 このような心の安定が手に入るのが、まず最初のメリットです。
さらに他のメリットとして、戦略的な商品展開も可能になります。
たとえば、自分のサークルに必要な刺さり率が、仮に2%とします。 また、すでに発表・頒布済みの同人誌の刺さり率が3%である…つまり、100人いれば3人買ってもらえるくらい好調であるとします。
それであれば、次の新作は「刺さり率1%でもいいから、挑戦的な作品を描き上げよう。」「めっちゃニッチな同人誌を創ろう!」というチャレンジがしやすくなります。
刺さり率3%の過去作が、サークルを支えてくれるので、挑戦的な作品を出すという判断も、自信をもってできるようになります。
挑戦的な作品は、そのサークルに創作者の個性を与えます。 よって、出せるなら、たくさん挑戦的作品をどんどん出すべきと、私は考えています。
なので、経営的・戦略的に作品ラインナップを考えることができるのは、個人的にかなり重要なメリットであると考えています。
このように、自分のサークルに必要な刺さり率X%がいくつなのかを把握することは、非常にメリットがあり、かつ、大切なことなのです。
有名コンテンツの刺さり率を知っておこう
必要刺さり率X%を統計的に判断するには?
必要な刺さり率X%を知るには、かなりの情報が必要となります。
見込み顧客数、頒布価格、1商品あたりの原価、粗利、固定費、イベント規模…など
これらを統計的に推定し、みなさんのサークルに個別に当てはめなければなりません。
この記事は、「まずは、ざっくり把握しましょう」という趣旨で書いているので、このあたりの導入は別記事にします。
今回は、サンプルサークルを元に、コミケ・(東方オンリーイベントの)例大祭などの実状をあてはめて、大体の数字を把握しましょう。
そもそも、世の中の創作物はどのくらいの刺さり率なのか?
サンプルサークルの話をする前に、今後の話をイメージしやすいように、巨大娯楽産業である”映画”という創作物で、ちょっと刺さり率を見てみましょう。
毎年100億円を超える興行収入を達成しているバケモノコンテンツである名探偵コナンの映画で考えてみます。 公式の発表によると、少なくとも1,000~1,100万人くらいの観客動員数があるようです。

ここでは、1,100万人として考えてみます。 何度も映画館で観るリピート視聴者が5%いるとすると、
1,100万人×95%=1,045万人に刺さった(=お金を出してでも観たいと思わせた)と言えます。
これは、日本の人口1億2,317万人に対して、以下になります。
1,045万人 ÷ 1億2,317万人 = 8.48%
この8.48%が、劇場版名探偵コナンの刺さり率となります。
これは、事実として、かなりすごい数字です。 日本人の10人に1名弱が、コナンの映画にお金を払っているということです。
しかし、逆にいえば、「名探偵コナン」という、あれだけ有名な”国民的な”バケモノコンテンツでも、日本人の91.5%の人には刺さっていないのです。
つまり、8.5%の人に刺さる作品を、もしあなたが創ったならば、世界的に有名なクリエイターの仲間入りです。
ついでに、タイムリーな映画作品をもうひとつ挙げると、『劇場版 鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』が、公開60日で2,304万2,671人の観客動員数を達成したそうです。

先ほどと同じように5%がリピート視聴として、刺さり率を計算すると
2,304万2,671人 × 95% ÷ 1億2,317万人 = 17.7%
日本の歴史上最高の映画コンテンツとなると、もう異次元の数字ですね…笑
万人に刺さる作品は絶対に創れない
さきほどは、映画を例に刺さり率を見てみました。
どちらもすごい数字なのですが、逆に考えれば、創作物に人がお金を出す確率はとんでもなく低いということが分かります。
名探偵コナンは、2026年でアニメ開始30周年、映画公開開始28周年という長寿コンテンツです。 その間、毎週アニメを放送して、新しい映画の公開にたびに、何億円というとんでもない宣伝広告費を注ぎ込んで、やっと達成できるのが8.5%という刺さり率なのです。
つまり、一個人のクリエイターが最大級の努力をしても、100人いたら90人には、あなたの創作物は刺さらないし、刺さるわけがないのです。
歴代の世界レベルで名を遺した芸術家のピカソ、ゴッホ、ゴーギャン、サルバドールダリ、など、時代を創った者の作品でも、2人にひとりに刺さって、刺さり率50%を越えている…なんてことはあり得ないのです。
読者のみなさんの周りを想像してみてください。 彼ら歴史に名を遺した芸術家の作品(画集やポストカードなど)を集めている方は、ほとんどいないとおもいます。 もし思い当たったとしても、1~2人くらいなのではないでしょうか?
それだけ、刺さり率というのは小さい数字なのです。
私もそうなのですが、自分が心血を注いで創り上げた作品は、みんなもすごいと言ってくれるような錯覚に陥ります。 ですが、そんなことはありえません。
多くのクリエイターの方が「創作のモチベーションを”お金”や”売上”に求めると、精神が壊れる」とおっしゃっていますが、これは当然なのです。
名探偵コナンという世界的・国民的コンテンツでさえ8.5%の人しか”売上”に繋がっていないのですから、私たちの一個人の作品はもっとずっと小さい%となるのは当たり前なのです。
そんな小さい%にモチベーションを委ねたら、あっという間にメンタルはぶっ壊れます。 それを、世の中の多くのクリエイターの方が、経験則から、警鐘をならしているのです。
イベント中に自分のスペース前を通過していく人を見て病まない!
一生懸命に創作物を用意し、SNSのお品書きを作ってXで告知して、ドキドキでイベント会場に行って、サークル設営完了…!
同じくサークル運営をする者として、この時点で、すでに素晴らしいです。
しかし、ここまで頑張った人の目の前に突きつけられる光景があります。
大量の人が、自分のサークルスペースに見向きもせず、目の前を素通りしていく…….!!!!
これは、一度でもサークル参加したことがある方は「そうそう!」と同感してくれるのではないでしょうか?
自分の創作物には、多かれ少なかれ、自分の想いが込めれ、やっぱり愛着があるんですよね。
それを見向きもされずに、多くの人が目の前をスルーしていく現実は、クリエイターからすると、やっぱり辛いものがあります。
しかし、これは、先ほどの映画の刺さり率を知っていると、当たり前の光景であることがわかります。
名探偵コナンの映画コンテンツでさえ刺さり率は8.5%なわけですから、もし同等の刺さり率を誇るサークルがあったとしても、サークル前に100人が来ても、91人は素通りしていくのです。
刺さり率8.5%のバケモノ級の人気サークルでも、ほぼほぼ大多数は目もくれず素通りしていくのですから、一般的なサークルの目の前を、多くの人が素通りしてくのは、それはもう"当然起こり得る光景が、当然にそこにあるだけ"なのです。
刺さり率が1%なら、100人来ても99人素通り。
刺さり率が2%なら、100人来ても98人素通り。
これが当たり前なのです。
そう思うと、イベント中、とても心が楽になります。
この記事を機に、是非、イベント中に落ち込まない心を手に入れて頂けたら嬉しいです。
同人サークルにおいて必要な刺さり率X%をざっくり把握しよう
サンプルサークル
ここまで、巨大娯楽コンテンツである映画の刺さり率を参考に、「バケモノコンテンツでも8.5%の刺さり率しかない事実」を見てきました。
では、お待ちかねの、同人サークルにおいての一般的な刺さり率はどの程度なのか、少し探ってみたいと思います。
同人誌を創るサークルですと、コミケや例大祭に参加した際に、まずは以下のようなサークル状況を目指す方が多いと思います。
外的環境 :関東圏に拠点
目標売上 :25,000円
同人誌(20ページ)頒布価格:500円/冊
目標頒布数 :50冊
1冊あたりの印刷コスト :250円
固定費 :8,500円(コミケ参加費+システム利用料)
当日交通費 :2,500円
つまり、イベントの度に25,000円の売上が安定的に見込める状態です。
そこから、印刷コスト・固定費・当日交通費を引いて…
売上25,000円
ー 印刷コスト12,500円
ー 固定費8,500円
ー 当日交通費2,500円
=利益1,500円
と、最終的に1,500円の利益が残る、ギリギリ黒字となる感じのサークルをサンプルとします。
コミケ全体で考えてみる
コミケC106の2日間の来場者が25万人とのことなので、1日の来場者は12.5万人くらいです。
このうちの50人が買ってくれれば、サンプルサークルの目標が達成です。
したがって、
50人 ÷ 125,000人 = 0.04%
つまり、コミケの来場者に全員に、頒布物を告知できれば、たったの0.04%、2,500人の中のたったひとりに刺されば目標達成となります。
とはいえ、コミケ来場者の全員が、会場すべてを周るわけではありませんので、もう少し精査してみましょう。
コミケの東方エリアに絞って考えてみる
私たちが東方project版画製作サークルなので、東方の話を例にして、数字を見たいと思います。
(ブルーアーカイブやウマ娘のような、コミケにおいて、東方projectよりもエリアが2~4倍規模あるコンテンツは、各自倍率を掛けてみてください。)
コミケ全体の参加サークル総数は、2日間で約23,000スペースだそうです。 なので、1日の参加サークルスペース数は11,500とします。
東方projectの参加サークルは750ほどなので、東方projectのエリア割合は以下の計算から6.52%となります。
【コミケ全体における東方projectエリア割合】
750 ÷ 11,500 = 6.52%
じゃあ来場者の6.52%の人が東方エリアに来るかと言えばそうではないと思うので、ここは厳しめに、半分の3.26%の人が東方エリアに立ち寄るとします。
また、東方エリアに立ち寄った全員が、全ての東方サークルスペース前を通過するとは限りません。 なので、立ち寄った人の80%がサークル前を通過するとして、0.8を掛けて、少し下方に補正します。
6.52% ÷ 2 × 0.8 = 2.6%
この2.6%を、コミケの1日間の来場者に掛けます。 これが、サンプルサークル前を通過する来場者の数になります。
【サンプルサークル前を通過する来場者の数】
125,000人 × 2.6% = 3,250名
この3,250名が、コミケ出展時に、サークルの前を通過してくれる人数です。 それはつまり、物理的に購入可能な者であり、見込み顧客です。
この3,250名のうち、50名が買ってくれれば(=刺さってくれれば)、目標達成です。
【サンプルサークルが目標達成するために必要な刺さり率】
50名 ÷ 3,250名 = 1.53%
お待たせしました!
この1.53%が答えとなる、必要な刺さり率です!
サンプルサークルは、創作物が1.53%の人に刺さりさえすれば、売上目標25,000円を達成できるのです。
つまり、200人いたら3人が「お金を払って買いたい」と思ってくれればいいのです。
数字を知ると、色々見えてくる
どうでしょうか?
「500円の同人誌を50冊頒布したい」というざっくりとした目標の認識が
色々と違う数字に見えてくるのではないでしょうか?
「サークルスペース前を3,000人前後が通過する」
↓
「コミケに出展した際の、見込み顧客は3,000名程度」
「必要刺さり率は約1.5%ほど」
↓
「100人いれば、1~2人が買ってくれればいい」
などなど、見える数字がだいぶ変わるのではないでしょうか?
まとめ
ちょっとかなり大雑把ではありましたが、売上25,000円・50冊頒布を目標とした際に必要な、刺さり率を見てみました。
「サンプルサークルの場合だと1.53%の刺さり率があればよい。」
この事実は、多くの現実のサークル様に当てはめても、大きく変わらないと思います。
SNSでの告知を頑張る、継続的なイベント参加を続ける、頒布価格を上げる、など、様々な施策によって、この刺さり率の%は下げることもできます。
場合によっては刺さり率1%でも目標を達成できるサークル様もあると思います。
最後に、ちょっとだけ私の感覚を含めてお話します。
私の体感ですが、刺さり率は1~1.5%あれば、サークル運営としてはかなり健全であると考えています。 2~3%もあれば、人気サークルへの道を歩み始める土台がある、そんな温度感で私は考えています。
回りくどい計算をしてきましたが、私はこの記事で伝えたいのは以下のことたちです。
100人中たった1人の心を動かすことができれば、それはかなりすごい
サークルの目の前は、100人中、98~99人は素通りしていくもの
現実を数字で分解すると、見えてくるものがある
そして…
「刺さり率1~1.5%あればいいのだから、自分の創りたいものを一生懸命突き詰めていけば、サークル運営は十分安定し得る」ということです。
100人中、30人や50人に認めてもらう必要は無いですし、現実不可能です。
100人中、1~2人に魅力が届けばいいと思ったら、少し気が楽になるし、創作物でもっと自分を出していいと思えるのではないでしょうか?
創作物で個性を出すと、そこには”その人しか出せない魅力”があるわけで、創作物の独自性が出てきます。 そして、その個性や独自性が、他のサークルとの差別化になってくれるのです。
なので、創作に迷った際は「1%に刺さってくれればいい」と、自信を持って、自分の表現したい方向へ進んでほしいなと思います。
(ちなみに…自分のサークルに必要な刺さり率を計算するExcelって欲しい方いますかね? 需要あれば、他の記事で頒布を考えます)
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
他にも以下のような記事を書いてますので、少しでも参考になることがあれば嬉しく思います。
作品解説や、同人活動の経験から得た知見を発信しています。
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