GRⅢxだけで旅行に行ったら優勝した話
「今日はどれを持っていけばいいだろう」
カメラを複数台持っている人なら、こんなこと考えたことがあるのではないでしょうか。
広角も使いたい。でもやっぱり標準域も外せない。ズームもあったほうが安心かも。気づいたらカメラやレンズをたくさんバッグに詰め込んでいて、肩がぶっ壊れそうになる。
わかります。本当によくわかります。
カメラが好きな人ほど、機材の選択肢が増えるほど、「使い分けの沼」にハマっていくんですよね。「あのレンズ持ってきたら良かった」という後悔を避けようとして、結果的に全部持っていく。そして全部持っていったくせに、結局一番使ったのは1台だけだったりするんです。
今回、僕はその呪縛から完全に解放されました。友人との旅行に、GRⅢx 1台だけを持っていくという、ある種の実験をしたんです。
結果から言います。
優勝しました。
X-M5も持っていこうか問題
旅の前日の夜、荷物を詰め込んだバックパックを前に、私は悩んでいました。
「X-M5 と SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN も入れていくか?」
今回旅を共にするのは、学生時代からの長い付き合いとなる友人たち。男7人で1台のミニバンに乗り込み、行き先は海沿いの温泉と水族館、それとドライブ途中のサービスエリア。天気予報は雨。
気軽な旅行で、写真を撮ることがメインではない。それはわかってる。でも、広角で海を撮ったら最高じゃないか。水族館でのあの幻想的な雰囲気には、あのレンズが合うんじゃないか。
気づいたら30分ほど、カメラバッグの前で仁王立ちしていました。
でも、そのとき思ったんです。
「今日の旅、目的は友人と楽しく過ごすことだよな」
写真を撮るための旅ではない。いい写真が撮れたらそりゃ嬉しいけど、それが最優先じゃない。そして何より、とにかく身軽にしたかった。
GRⅢxだけをジャケットのポケットに入れて、バックパックの中身は最小限。その選択が、最高の旅につながるとは、このときまだ知らなかったんです。

① ポケットに入るカメラが、旅のテンポを変える
今回の旅、正直めちゃくちゃ動きが速かったんです。
何時間も車を走らせながら、何度もサービスエリアに立ち寄っては軽食やスイーツを堪能。ようやく海沿いの温泉宿に着いたと思ったら、すぐに複数の温泉をはしごして、夕ご飯もがっつり食べ、夜は友人たちと酒を酌み交わしながら談笑、翌日は寝不足と二日酔いの中、近くの水族館へ。水族館を出たらまた帰りのサービスエリアで土産を物色。移動中の車窓も気になる。一つの場所に長時間留まることなく、どんどん次へ進む旅でした。
こういう旅のスタイルに、大きなカメラはなかなか向いていない。バッグからカメラを取り出す。レンズキャップを外す。設定を確認する。構える。シャッターを切る。モニターを確認する。
このプロセス、一眼やミラーレスだと数十秒かかることがあります。でも友人との旅行で、会話の流れをぶった切って「ちょっと待って、カメラ出すから」って言い続けるのは、正直しんどいですよね。
GRⅢxなら、ポケットから取り出してシャッターを切るまで3秒もかかりません。
友人が笑った瞬間。ふと目に入った海の光。サービスエリアで食べたスイーツや、あちこちに現れる謎のゆるキャラ。そういうものを、会話の流れを止めずに切り取れる。カメラの存在感がゼロになる感覚、これが本当に気持ちよかったです。
旅のリズムに、カメラが溶け込むような感覚。これ、GRじゃないとなかなか味わえないんですよね。

② 雨の日でも、GRⅢxなら「出しやすい」
当日の天気は、2日目が大雨の予報。
正直、出発前は少し憂鬱でした。「雨か…写真、撮れるかな」なんて思いながら車に乗り込んだんです。
でも、GRⅢxはとにかく小さい。
雨の中で大きなカメラとレンズを出すのは、それだけでリスクが高い。ズームレンズなら鏡筒の隙間から水が入る不安もあるし、何より取り回しが悪い。片手に傘、もう片手にカメラ、なんてやっていたら撮影どころじゃなくなります。
GRⅢxなら、傘を差したまま片手でサッとポケットから出して、片手で撮って、すぐしまえる。雨が強くなったら即ポケットに戻せる。この出し入れのスピードが、雨の日には思いのほか重要でした。
防滴性能はないので水濡れには注意しながら、でも判断と行動が速いから、シャッターチャンスを逃さない。雨に煙る温泉街、濡れた路面の反射——そういう雨ならではの情景を、躊躇なく切り取れました。
③ 40mm相当という「ちょうどいい」は、旅においては最強だった
GRⅢxの画角は40mm相当(35mm換算)。
「広角でもなく、望遠でもない、中途半端かな?」
旅行前は、そこが一番の不安でした。水族館では暗所性能が欲しくなるだろうし、海の広大さは広角で切り取りたい。そう思っていました。
でも使ってみると、この40mmがありとあらゆるシーンにハマるんです。
水族館では、クラゲの水槽に近寄って撮るだけで十分に幻想的な一枚になる。広角でガバッと引くより、被写体に寄って40mmで切り取るほうが、むしろ「見せたいもの」が伝わりやすい。海の写真でも、そもそも海と雲以外に何もない風景なら、40mmでも十分に広く撮れます。
そして何より、40mmというのは人が実際に目で見た感覚に近い画角と言われています。広大さを写すよりも、肉眼で見ているものと同じ感覚で撮ったほうが、「旅の質感」みたいなものが出るように感じました。
「この景色、いいな」と思った瞬間に、素直にそのまま写る。それがGRⅢxの40mmの魔法なんだと思います。GRⅢ・GRⅣ(28mm)派の方も多いですが、旅のスナップという意味では、私はGRⅢxの40mmが好きです。

④ 「撮ることが目的じゃない旅」だからこそ、写真がよくなる
これ、逆説的なんですが、すごく大事なことだと思っています。
今回の旅、繰り返しになりますが写真を撮ることがメインではありませんでした。友人とゆっくり話すこと、温泉に入ること、おいしいものを食べること。それが目的でした。
だからGRⅢxを選んだ、というのもあります。
「このカメラ1台だけ」と決めたことで、機材への執着が消えました。広角で撮りたいとか、もっと明るいレンズが欲しいとか、そういう欲が出てこない。目の前の景色と友人とを、ただ楽しむことに集中できる。
すると不思議なことが起きます。
写真を撮ろうとして身構えるのではなく、「あ、これいいな」という直感だけでシャッターを切るようになる。そうして撮れた写真のほうが、後から見返したときに旅の空気感が残っているんです。
カメラを使い分けることに頭を使うのではなく、旅そのものを味わうことに頭を使う。その余白がGRⅢxにはあります。ポケットに入る小さなボディが、なぜか旅を豊かにする。なんか変な話かもしれないですが、本当にそうなんです。


⑤ 帰宅後、写真を見て「全部GRだった」ことに気づいた
旅から帰って、写真を見返しました。
温泉街の路地。雨に濡れた看板。友人が笑っている瞬間。水槽の中でぼんやりと光るクラゲ。サービスエリアで食べたソフトクリーム。
全部GRⅢxで撮った写真。
でも不思議と「あのとき広角があれば」「もっと望遠が欲しかった」という後悔が、一つもないんです。
あるのは「この旅、最高だったな」という満足感だけ。
写真を撮り逃した場面があったとしても、それは友人との会話に夢中になっていた証拠だから、むしろそれでいい。GRⅢx 1台で行ったことで、写真と旅のバランスが、はじめてちょうどよくなった気がします。

「1台縛り」は制約じゃなくて、解放だった
GRⅢxだけで旅に行って、学んだことをまとめるとこうなります。
身軽さが、旅のテンポを生む
GRⅢxの機動力が、雨の日の迷いをなくす
40mmという画角が、すべてのシーンで「ちょうどいい」
1台に絞ることが、旅への集中を生む
そして、旅に集中したほうが、写真が豊かになる
カメラを複数持っていることは、何も悪いことじゃありません。使い分けを楽しめるなら、それは最高のことです。
でも、もし「どれを持っていくか迷って疲れてきた」と思っているなら、一度だけ、手元にある一番小さなカメラだけで旅に出てみてください。
最初は不安かもしれない。でも旅が終わったとき、きっとこう思うはずです。
「これだけで、十分だった」
その体験が、カメラとの付き合い方を、もう少し軽やかにしてくれると思います。さあ、カメラバッグ、今日は少し軽くしてみませんか。

