「まだ40代なのに…」血圧の薬を飲む覚悟ができるまでの5つの葛藤
「生活習慣の改善は続けながら、そろそろ薬も考えましょう」
診察室で医師からそう言われたとき、私はすぐに返事ができませんでした。
本当に、自分が毎日薬を飲むのか。
まだ40代なのに。
そこまで悪い状態なのか。
一度飲み始めたら、もう一生やめられないのではないか。
医師の説明を聞きながらも、頭の中には次々と不安が浮かんできました。
正直に言えば、
「もう少し生活改善だけで様子を見られませんか」
と言いたかったのです。
薬が必要かもしれない現実を、すぐには受け入れられませんでした。
薬を飲むことを「負け」だと思っていた
血圧の薬を提案されたとき、私が最初に感じたのは安心ではありませんでした。
むしろ、敗北感に近いものだったと思います。
食事に気をつけ、運動をして、体重を落とせば、自分の力で何とかできる。
薬に頼るのは、自己管理に失敗した人がすること。
どこかで、そんなふうに考えていました。
毎日薬を飲む生活にも入りたくありませんでした。
飲み忘れたらどうするのか。
副作用は大丈夫なのか。
薬を飲み始めた瞬間から、自分が「病人」になってしまうような気もしました。
何より嫌だったのは、老いを認めるように感じたことです。
若い頃は、少し無理をしても何とかなりました。
健康診断で多少の指摘があっても、
「次は気をつければいい」
と流すことができました。
けれど、医師から薬の話をされた瞬間、今まで曖昧にしていた現実を突きつけられたように感じたのです。
生活習慣だけで何とかしようとした
薬を避けたい気持ちから、生活を変えようとしました。
外食では塩分を気にする。
お酒を控える。
少しでも歩く。
体重を意識する。
早く眠る。
家庭でも血圧を測る。
できることは自分なりに試しました。
ただ、毎日完璧に続けられたわけではありません。
仕事で疲れた日は、歩かずに帰りました。
飲み会が続くこともありました。
忙しい朝には、血圧を測るのを忘れました。
「今日くらいはいいか」
と思う日も、何度もありました。
健康を軽く考えていたわけではありません。
改善したい気持ちはありました。
それでも、仕事や家庭のある普通の生活の中で、すべてを完璧に変えるのは簡単ではありませんでした。
生活習慣を見直すことは大切です。
しかし、それだけで必ず薬を避けられるとは限りません。
治療が必要かどうかは、一度の測定だけではなく、家庭での記録や診察、健康状態などを踏まえて個別に判断されます。
家庭血圧は、自分だけで良し悪しを決めるためではなく、普段の状態を医師へ伝える材料の一つになります。日本高血圧学会も、健診で血圧が高いと言われた人や治療中の人に、家庭での血圧測定を勧めています。
血圧の数字に一喜一憂する日々
家庭で血圧を測り始めると、今度は数字を見ることが怖くなりました。
いつもより低い日は、
「やっぱり薬はいらないのではないか」
と思う。
高い日は、
「このままで本当に大丈夫なのか」
と不安になる。
測定する前から緊張し、その緊張でさらに数字が上がるのではないかと考えることもありました。
自分に都合のよい数字だけを信じたくなる一方で、悪い数字はいつまでも頭から離れません。
一回の測定結果だけで安心したり、落ち込んだりする。
そんな状態が続きました。
やがて私は、数字を測ることよりも、数字をどう受け止めるかに疲れていたのだと思います。
そこで、良かった日も悪かった日も記録し、自分だけで結論を出さず、診察のときに医師へ見せるようにしました。
覚悟ができたのは、怖くなくなったからではない
私が薬を受け入れられるようになったのは、不安が完全に消えたからではありません。
怖いものは、やはり怖いままでした。
ただ、分からないことを一人で考え続けるのをやめました。
医師に、率直に質問しました。
なぜ今、薬を考える必要があるのか。
生活改善だけで、もう少し様子を見る選択肢はあるのか。
飲み始めたあとは、何を確認するのか。
体調に変化があったときは、どうすればよいのか。
今後、薬の変更や減量を考えることはあるのか。
一度飲み始めたら、絶対に一生続けることになるのか。
質問すること自体、少し恥ずかしく感じました。
「面倒な患者だと思われないだろうか」
という気持ちもありました。
けれど、分からないまま薬を拒み続けるより、疑問を一つずつ聞いたほうが、自分の中で整理しやすくなりました。
答えは、薬の種類や体の状態によって異なります。
だからこそ、ネットの体験談だけではなく、自分を診ている医師や薬剤師へ確認する必要があるのだと思います。
そして気づいたのです。
薬を飲むことと、生活習慣を改善することは、対立するものではありません。
どちらか一つを選ぶ話ではなかったのです。
家族の顔を思い浮かべた
薬を飲むかどうか迷っていた頃、私は自分のことばかり考えていました。
薬を飲むのが怖い。
老いを認めたくない。
毎日の管理が面倒だ。
一生続くのが嫌だ。
もちろん、どれも本音です。
けれど、あるとき家族の顔を思い浮かべました。
今の不安から逃げるために、必要かもしれない対応を先延ばしにすることは、本当に自分らしい選択なのだろうか。
何もしないまま心配し続けることも、私には大きな負担になっていました。
薬を飲むことを「負け」と考えるより、将来の自分と家族のために、医師と相談して選んだ手段だと考えてみよう。
そう思えたとき、ようやく前へ進む覚悟ができました。
薬を飲むことは、健康管理を諦めることではなかった
薬を飲み始めると決めても、食事や運動を気にしなくてよくなったわけではありません。
家庭血圧を記録する。
塩分やお酒を少し意識する。
無理のない範囲で歩く。
睡眠を確保する。
定期的に受診する。
こうした生活は、これからも続きます。
薬は、生活習慣の代わりではありません。
医師と相談しながら選んだ、健康管理の一部です。
「薬を飲む自分は弱い」
ではなく、
「必要かもしれない助けを受け入れることも、自分の体に責任を持つことなのかもしれない」
と、少しずつ考えられるようになりました。
飲み始めたあとも自己判断はしない
薬を飲み始めて数字が下がったとしても、自分の判断だけで量を減らしたり、服用をやめたりしてはいけません。
反対に、気になる体調の変化や不安があったときも、一人で我慢したり、突然中止したりせず、医師や薬剤師へ相談する必要があります。
日本高血圧学会の一般向け解説でも、自己判断で服薬をやめず、疑問があれば医師へ相談するよう案内されています。政府広報も、処方薬を自己判断で中止・減量すると、治療中の病気を悪化させる場合があると注意を促しています。
飲み忘れたときの対応も、薬によって異なります。
事前に自分の処方について確認しておくことが大切です。
薬に抵抗を感じている人へ
血圧の薬を怖いと思うことは、おかしなことではありません。
毎日飲むものだからこそ、不安になるのは自然です。
すぐに納得できなくても、自分を責める必要はありません。
分からないことや心配なことは、そのまま医師へ伝えてよいと思います。
ネットでは、さまざまな人の体験談が見つかります。
役立つこともありますが、その人とあなたでは、体の状態も治療の理由も同じとは限りません。
ほかの人の血圧や薬の数と、自分を比べる必要もありません。
薬を飲むかどうかは、自分の状態を確認したうえで、医師と相談して決めるものです。
服薬を選ぶことも、生活改善を続けることも、どちらも自分の体を守る行動になり得ます。
覚悟とは、怖くないことではなかった
血圧の薬を飲む覚悟ができた日、私の中から不安が消えたわけではありませんでした。
副作用への心配もありました。
将来への不安もありました。
薬を飲む自分を、すぐに受け入れられたわけでもありません。
ただ、怖さを理由に現実から目をそらし続けるのではなく、分からないことを医師に聞き、自分の体と向き合おうと思えたのです。
覚悟とは、何も怖くなくなることではありません。
怖さが残っていても、納得できるまで相談し、自分に必要な選択を考えることなのだと思います。
薬を飲むかどうかにかかわらず、大切なのは、不安を一人で抱えたまま自己判断することではありません。
迷っているなら、その迷いごと医師へ話してみる。
それも、自分の体を守るための大切な一歩だと思います。
血圧の薬を考え始めたけれど、生活習慣もできる範囲で見直したい方へ。
別の記事では、3か月間、食事・運動・飲酒・血圧測定に取り組み、
実際に続いたことと続かなかったことを、失敗談も含めてまとめています。
無理なく血圧と向き合いたい方は、参考にしてみてください。
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