初めてスキーした日の話(後編)
どう見ても、明らかに小さい。
「年の離れた妹のウエアを借りました」くらい小さい。
だけど、慣れないスポーツ店で、HPを激しく消耗しながら、
やっとの思いで買ってきたウエアだ。
もう一度店に行く元気なんて、残っていなかった。
だから私は、鏡に映る自分に言い聞かせる。
「ちょっと小さめだけど、かわいい。」
無理やり、納得させる。
ウエア問題が一段落(していない)したところで、
次に私を悩ませたのは、
「中に何を着るのか問題」だった。
スキーが初めてなのだから、もちろんスキー場に行ったこともない。
どれくらい寒いのか、まったく想像がつかない。
上はともかく、下は?
個室で着替えるのか?大広間みたいな所なのか?
???が頭を埋め尽くす中、
何が正解なのかは、誰も教えてくれない。
いや、正確には、
人に聞くのが恥ずかしい。
とりあえず手持ちのトレーナーとズボンを履き、
ウエアを着てみる。鏡の中に、
ミシュランのキャラクターみたいなのがいる。
ウエアが小さいため分厚いインナーを着ると
パッツパツになってしまう。
これではダメだと、薄手の長袖Tシャツに、
分厚いタイツを履いてみた。
今度は、さっきよりゆとりがある。
正解はわからないが、これでいい。
もう考えるのも疲れてしまった。
寒くないかのテストとして、暖房を止め、窓を全開にしてみたが平気だった。
こうしてようやく、「中に何を着るのか問題」は解決を迎えた。
着るものの問題は解決したが、
他にも問題は山積みだ。
課題の本丸、
スキーの板やブーツ、小物の準備だ。
ウエアに、使えるお金のほとんどをつぎ込んでしまったため、
「買う」「レンタル」という選択肢はない。
タダで借りられそうな相手は限られるが、
ダメ元で姉に聞いてみたところ、
「いいよ、全然行ってないし貸すよ。」と。
ラッキーー!
まさに、神様、仏様、お姉様!だ。
手ぶらで借りに行くのはさすがに気が引けたので、
スイーツを片手に姉の家へ。
姉は、物置からスキー道具一式を出してきてくれた。
若干古さ...
もとい。レトロさを感じたが、
背に腹は代えられない。
姉に礼を言い、それらを抱え家に帰った。
家につくとさっそく、道具を確認する。
グローブをはめたり、ゴーグルをつけたり、
スキー板の長さにビビったりしたが、
一番の衝撃はブーツだ。
「…ほんとに、こんなガンダムみたいなのはいてすべるの?」
モビルスーツブーツを見つめながら、私は思った。
「私がなりたいのはアムロじゃなくて知世なんだけど。」
下心、羞恥心、金不足、不安、目論見違い、ドキドキ、ワクワク...
いろいろなことに左右されながら、ついに私は、
初めてのスキー当日を迎えた。
当日の朝、友達の一人が車で迎えに来てくれた。
一緒に行く他のメンバーとの待ち合わせ場所に到着すると、
もう、みんな集合していた。
その中に1人初めましての男の人がいた。
軽いあいさつの後、飲み仲間の1人が教えてくれた。
どうやら、その人は、飲み仲間の男性メンバーとも、
特に親しいわけではないようだったが、どこからかスキーに行く話を聞きつけて、無理やり参加してきたらしい。
飲み仲間の話ぶりから、
あまり歓迎されている人ではないことはわかった。
車2台に乗り合わせてスキー場へ向かう。
車内では、いつもの笑い話で盛り上がった。
そうこうしているうちに、ついにスキー場に到着。
空は真っ青な快晴!スキー日和!
(快晴がスキー日和かは知らないけど)
ついに、ついに、初スキー!
心臓はドキドキと高鳴なり、テンションはMaxになった。
その時私はまだ知らなかった。
この後、私が、いろんな意味ですべり散らかすことを。
(スキーだけに)
続く。
読んでくださった方、本当にありがとうございます。
またまた長くなってしまったので、次の完結編で終わらせます。
よろしければ、また読みに来てください。
