まだいる鬼ー風まかせ文芸部
僕の目の前には鬼がいる。
部屋の中でコタツに入り、
寝転がりながら
豆をポリポリとつまんでいる。
僕「いや、待って。
鬼は豆苦手でしょうよ!」
鬼「はぁ?
ぶつけられるから、痛いんですけど!
味が嫌いなんて言ってませんけど!?」
半分キレたように、反論される。
僕「じゃあ鰯は?」
鬼「くっさいんですよ!
そもそもドアに飾るとか、
イカれてんじゃないですか、人間」
僕「君等が来ないようにだよ!?」
鬼「鬼に限らず、くっさい魚飾る家になんか行きませんよ!
あなた、行きます!?」
鬼はキレてるのに、
真っ当な意見を言ってくるので、
僕は言い返せない。
僕「……行かない」
鬼「でしょうね!?」
豆はどんどん減っていく。
僕「…節分終わったけど、
いつ帰るの?」
鬼はポリポリと豆をつまむ。
鬼「…これ食べたら帰りますよ」
僕「来た日から、ずっと食べてるよね」
節分にやってきた鬼は、
四角の枡に入った豆を
コタツの上に置いた。
そして、ずっとポリポリしている
…意味が分からない。
鬼がテレビを見て、
寝転がりながら、
豆をポリポリする姿を
数日見つめていた。
ある日、最後の豆が
鬼の口に入った。
鬼「はぁ〜、飽きましたわ…」
僕「…でしょうね」
鬼は“よっこらせ”と立ち上がる。
僕「帰る?」
鬼「当たり前でしょ。帰りますよ」
僕はホッと胸を撫で下ろす。
鬼「じゃあ、また来年」
僕「また来んの!?」
鬼「あんた等だって、
毎年豆投げてくんでしょうが!
鬼を仕立て上げてまで!?」
もう、文化祭のような話だ。
鬼「…来年は300粒超えんのかぁ」
鬼の呟きに僕は首を傾げる。
玄関のドアから鬼が出ていく。
鬼「じゃ…皆さんお元気で」
鬼は風に溶けるように
消えて行った。
僕は来年300粒を超える
豆のことを考えた。
家は6人家族で、
全員の年齢を足すと298粒。
来年は300粒を超える計算になる。
毎年、年齢分の豆を紙に包み、
体を撫でて厄落としをする。
その捨てられた豆の行方を
誰も知ることはなかった。
来年はお茶を用意して
待とうかと思う。
きっと、薄いとか渋いとか
文句言いながら飲むんだろう。
お読みいただいて、ありがとうございました。
本作は風まかせ文芸部さんの企画に参加しております。
あとがき
鬼の立場になって見てみると、
人間のやっていることはだいぶ奇行に見えます。
鬼を仕立て上げてまで
続けられる厄払い文化。
鬼の過重労働が、
少し心配になりました。
