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変わらないお茶のように〜風まかせ文芸部

「晴馬くん。25年後、私は
40代になってるの」

唐突にそう告げて、君は抹茶と黒蜜をかけた
わらび餅をスプーンですくった。

僕は一瞬手を止め、自分が60代になる未来を
思い描いて、わずかな戸惑いを覚える。

「確かに……その頃には色々と
変わっているかもしれないね」

僕の返しに、君は正面から
まっすぐ視線を合わせてきた。

「禅の和尚さんが言ってたの。
変わり続けることが、唯一変わらないこと
なんだって」

意外にも文学的な響きに、
少し驚かされる。

けれど、その言葉には深い真理がある。

「そうだね。哲学でも同じように
言われることがあるよ。

変わらないものはない――それが世界の
常なのかもしれない」

僕らの、名前も約束もない関係は…
…25年後どころか、明日すら変わってしまう
可能性がある。

それでも君は湯呑を手に取り、
紺碧の縁を見つめながら小さく笑った。

彼女「でもね、お茶ってあまり変わらないよね」

「お茶……?」

「長い歴史があるけど、大きな姿は
ずっと同じで。変わらない安心感があるの」

なるほど、と心の中で頷く。
製法が少し機械的になっても、
本質は変わらない。

そういう存在が、人にはきっと必要なんだろう。

「確かにそうだね。
君の言うとおりだと思うよ」

彼女は緑茶を口に運び、目を細めた。

その穏やかな笑みを見ていると、
僕の胸にも静かな安堵が広がる。

「25年後の僕は、きっと大きく
変わっているだろう。
けれど……君の笑顔は、
きっと変わらないままだと思う」

僕がそう言うと、君は一度だけ視線を合わせ、またわらび餅をすくった。

「侘び寂びって、そういう“変わらない良さ”
なんだよね」

その言葉には、歳をとることの良さを伝えてくれているように思えた。

君はスプーンを口に運び、いたずらっぽく笑う。 

その仕草に胸がざわめいて、僕は未来よりも“今”の君を繋ぎとめたくなる。

「明日はあの丘に来る?」

「ん〜、分かんない」

変わらない問いと答え。

けれど、その繰り返しの中にこそ、
時を超える願いが宿っている。

僕はただ――25年後も君の隣に
いられることを、静かに願った。


お読みいただいて、ありがとうございました。本作は風まかせ文芸部さんの企画に参加しております。


本作は、以前に書いた「昼下がりに君を待つ」の続編です。

相変わらず変わらない距離感の二人ですが、どこか少しずつ変わっているようにも感じます。
変わるものと変わらないもの――その絶妙な重なりに気づけるのは、きっと25年後に振り返ったとき。

そう思うと、未来は楽しみであり、眩しくもありますね。

「昼下がりに君を待つ」もお読みいただけると嬉しいです。




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