釧路・根室巡検 day2
巡検2日目。
朝ごはんで一緒になった先生とこんな話をしました。
地学は科学を総動員して地質の推理を行う探偵みたいなもの
地理、化学、物理学、数学などあらゆる学問を総動員して地質を学問する
地学は変数が多いのでいくつも説ができやすい
例えば、古地磁気ひとつをとってみても、場所、大地の動き、時代によって向きが変わるので1つの要素取ってみても変数が多い
根室層群がオホーツクから来たのか太平洋から来たのかも、古地磁気からみるか、地質の成分からみるかで変わってくる
昨日見た木炭について
木が炭化される機序は石炭のできかたと基本的に同じ。昨日みた木炭は、乱泥流に木片が取り込まれ、深海底で圧力と熱が加わったことで成分が揮発して炭化したもの。
熱が入るスピードと、温度という2面でその木片がどのように炭化されたのかを分析することが可能。これにより炭化した木片を含む地層に熱がどのように加わったか知ることができる。
放射線同位体によって半減期が違うので測定できる年代が変わる。例えば炭素14の年代測定は5〜6万年前までしか計測できない
考古学だと炭素で年代測定できるのが当たり前と思ってたけど、ヒトの歴史より地球の歴史の方が当たり前だけど長過ぎて炭素の年代測定太刀打ちできず😂
地学、奥深過ぎるわ!!!
隣のテーブルの先生たちも、朝ご飯だけど根室層群の話で大盛り上がり。
地学の先生たちイキイキしてて素晴らしい✨️
朝ご飯終わったら今日の巡検フィールドへGO!

手前は釧路でよく見かける巨大なアキタブキ

大きさが分かるように軍手を置いて撮ってたら
「地学に染まってるねえ」と言われた
本日最初の巡検スポットに到着。
到着するなり落ちてる石ころを拾う学生たち。
「これ斑れい岩かなあ」
と、ある学生がつぶやくと、斑れい岩専門の学生がバッと現れ、つぶやいた学生が持ってる石を無言でかっさらった挙句にいきなりハンマーで割り始める😂
フレッシュな断面を見ないと何の石か分かりづらいからだそう。
こんな感じで
「これ何の石だろう?」→(地学生)「どれどれ?」と集まってくる
ので、これで地学生ホイホイできるよね、と学生たちと盛り上がりました。

藪を歩くからと
マダニ対策で虫除スプレーを足元にまいて向かう

よくわかるフィールド
69MA(6900万年前)の地質

シルとして貫入したショショナイト
(非常に珍しいカリウム豊富な玄武岩質の火成岩)
マグマが急に冷されてできるチルドマージン(急冷縁)
浜中層の堆積岩が熱せられてできた接触変成岩
一番下が浜中層の堆積岩
接触変成岩(ホルンフェルス)は泥質の地層が熱せられると陶器みたいになって硬くなるらしい。
学生がハンマーで叩いて見せてくれたけど、カーン!という甲高い音がする。
→地学生あるある、石を見たらハンマーで叩きがち🔨
比叡山と大文字山も堆積岩で、間にマグマが貫入して表面が接触変成岩になった天然の陶器だそう。間のマグマ=花崗岩は風化でなくなったけど硬くなった比叡山と大文字山は風化されずに残ったみたい。

接触変成岩が先にできてまだ柔らかいときに
新たなマグマが割れ目に貫入して二重構造になっている


境界部分は規則正しく並んでるけど
上にいくにつれバラバラとした並びになるのが特徴的

車のとこに戻ってきたら、地学生が何やらスマホを岩に当てて計測をしている。
クリノメーターという地層の傾きなどを計測してくれる機器のアプリで計測してたみたい。
「アプリは誤差が大きいのと少ないのがあるんだよね」
と話す地学生。ハイテク地学や。
ちなみに地学の三種の神器はこれらしい⇩
ハンマー
何の石か判別するために、風化した表面ではなくハンマーで割ったフレッシュな断面を観察する必要あり。気になる石を見たらハンマーですぐ割っちゃう。
ルーペ
ハンマーで割ったフレッシュな断面は石の構成分析のためにルーペで拡大して観察する。ちなみに私がルーペで拡大して見ても何の石かはよく分からない😂
クリノメーター
学生が使ってたハイテク地学アプリ。もともとはちゃんとした機器で取り扱いがけっこうむずいらしい。走向と傾斜を同時に計測できるらしいけど何のために計測しているかは素人の私には謎。若者が岩にスマホを当てている光景は何だか異様。笑
お次の巡検スポットへ。
名もなき海岸。
ここはびっくり。
100メートルを超える巨大石ころが、海底地すべりで180度コロンと回転して見事に上下逆になったものを観察する。




回転するときのイメージはオムレツを思い浮かべてね
と参加者として参加してた先生に教えてもらった。
参加者も教授という豪華布陣。
海の中の話なので、巨大石ころが具で
周りが卵で液体のなかをぐるんと固体が動くような感じ
それにしても具がでかすぎるわ笑

この大きさがゴロンと転がるってどういうことよ

細かい層に分かれている泥質の平行葉理は上の方がシャープな切り口。
タービダイトの斜交層理は上の方が粒が細かくて下は粗い。
これはそれが全部上下逆になっているので
180度回転したというのが分かるらしい。

裏っ側から見ているところ。
フルートキャストというものらしい。
泥とか砂の層のくぼみを型取りした感じ。
変わった模様だねえ。

迫力満点。
お次は有名どころの車石。
ゴールデンカムイで私の尊崇する土方歳三が戦った場所らしい。

今までの巡検スポットは道なき道を行っていたので
整備された道が物足りない笑


柱状節理だらけ!!

一般の人は恐らくその先は行かないんだろうけど、
地学生たちは躊躇なしに普通にひょいひょい登っていく
「ハンマー禁止!!」と引率の先生が注意喚起笑
ここは天然記念物なのでね。

なんでこんな形かというと、
マグマがこの形で行き止まったからみたい。
もともと行き止まらせた岩は風化して今はない。

溶岩流が海底の地中を流れた先に海底に出ると表面張力で枕状溶岩ができる。
細いチューブから出てくるイメージ。
単位時間あたりの噴出量によって
枕状溶岩になるかが決まるらしい。
チョロチョロでてくるものが枕状溶岩になるんだって。
この説明とか分かりやすいかも⇩
枕状溶岩といえばこのジオガシもおすすめ⇩

チューブ上にマグマが出てきてるところがわかる。

枕状溶岩の上に柱状節理。
きれいに俵型の枕状溶岩たちが仲良く並んでる。
放射線状に割れてるね。

トイレまで車石の型。笑
次の巡検スポットへ。





ここの玄武岩はショショナイトじゃなくてカリウム少なめ。

ここ根室は大陸の地質に多いと言われる
クオーツ(石英)がほぼないらしい。
北海道の西側から沖縄列島まではユーラシア大陸から
分離したのでクオーツが多いんだって。
クオーツの量の違いで大陸由来かそうでないかが
分かるってのがこれまたおもろいね。


沸石のフレッシュな断面を見せてくれました✨️


フレッシュな石の断面。
「ほら、こうやって割るときれいに見えますよね!」
と地学女子が元気に教えてくれる。
地学女子3人いたけどイキイキしてて可愛かった❣️

二枚貝イノセラムスの化石たちが。
平行葉理は水の流れが速い時に層に対して平行にできて
斜交層理は水の流れが遅い時に層に対して斜めにできる
って教えてもらった。
薄い層は頁岩ともいうみたいね。


生き物が動き回った跡が痕跡として大地に刻まれてる。
はるか昔の生き物が生きた跡を目の当たりにして
なんだか感慨深い。

本日最後の訪問先は北方領土資料館へ。
巡検スポットじゃないけど、ここに来たら絶対見るべきスポット。






無理矢理ロシアがやってきて奪っていった


ロシアに追われたときになんとか持ち運んだものたち。


これは圧巻

今も北方四島返還を祈る火が燃え続けてる。
沖縄から運ばれた火が燃え続けているそう。
北方領土問題は、昔から授業でも教えられてきたし、日本固有の領土なのにロシアが戦後のバタバタしてるところに漬け込んで不法占拠してるというのも知識としてあったけど、遠い場所のことでもあってあんまり実感がわかなかった。
いざ現地に足を運んで展示されたものや故郷を奪われた人たちの生の声に接すると、急に身近に感じられた。ここは、住処を追われることの悔しさやつらさが詰まっている資料館だなと思った。
不法占拠からあまりにも時間が経ちすぎてしまった。今やロシアの開発がかなり進んでしまっているらしい。
例えばこの場所も国後島の地質的に貴重な場所だけど、写真に水着姿のロシア人がリラックスしてるところが写っててなんだか複雑。
ここで本日の巡検終わり。
根室のホテルに戻ったあと、みんなで懇親会。

近くに座った地学生の子がめちゃくちゃ物知りで色々教えてくれた。
修士2年生の子で就職先も良いとこに決まってるとのこと。その子が内定もらった会社の本社ビルが何気に私のオフィスの隣のビルだと知ってびっくり笑
ちなみに地学生は就職に全然困らないらしい。
地学の知識が即役に立つ地質コンサルタントの仕事や、資源掘削に関する事業してる会社も地質の知識が必須なので地学生は引っ張りだこ。
面白い上に就職にも困らないだなんて、なんて素晴らしい学問なんだ!!
そんな地学生たちと、
イマドキの若者って失敗するの過剰に恐れてるって聞いたけどほんと?
など他愛もない話をしていたら
「地学なんてやる学生は変わり者しかいないチルドマージン(地質用語、マグマが急速に冷えた端っこのこと)なやつらばっかなんで、そんな細かいこと気にしないんすよ!」
と元気良く答えてて頼もしいしかない。
地学やってる教授も学生もみんな本当に楽しそうだし、細かいことよりも石や地層が気になる、みたいな感じでみんなカラっとしてる。地学生最高過ぎるわ!!
そして、昔むかし日本であったプレートテクトニクスがなかなか受け入れられなかった話とかも聞いた。
特に北海道大学でプレートテクトニクス論への反対が強くて、論文にプレートテクトニクスという言葉が使えなかったそう。どうしても使いたい時は
「プレートテクトニクス」
って鍵括弧付きで、
プレートテクトニクスと言われているものがあるそうですが
という体で表現しないといけなかったらしい。
めんど笑
ただ、この話は地学界隈ではけっこうセンシティブな話題らしく、その昔に地団研という団体がプレートテクトニクスに非常に反対していて、今もまだその団体があって誰が所属しているか分からないからあんまり声高に言いづらいみたい。
失礼になっちゃうからね。
この論争気になって色々調べてたら、プレートテクトニクスが確定的になる前、日本では地向斜理論というものが当たり前とされてたみたい。
もともと地学は地域性があってその地域で理論を確立していくものだという動きがあったところにプレートテクトニクスという考えが海外から来て受け入れ難かったのと、プレートテクトニクスでは日本列島はユーラシア大陸から分離したということになってしまい、神の国日本が大陸から分離したなんて許せないという政治的思惑もあったみたいなのもどっかに書いてあった。
結局はGPSで大陸がプレートテクトニクスに則って動いてるのが明確になってから勝敗がはっきりしたみたい。
こちらで2日目終わり。
ガチ巡検楽し過ぎる。そしてガチなのでめちゃくちゃ勉強になって、地学と全く関係ないIT企業戦士の私に無駄に地学の知識がたまっていく笑
「何の役にも立たないことが一番面白いんですよ」
と西本先生のおっしゃっていた通りですわ。
地学そのものは実学でめちゃくちゃ役に立つんだけどね。
3日目に続く。
