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チョコの雨

風まかせ文芸部の企画参加作品

まえがき

バレンタインデーが嫌いな男の子と、
名前がバレンタインの猫の話。

甘いのは、嫌いなはずだった。


本文

僕は、バレンタインデーが嫌いだ。

だって、チョコをもらう日だから。

僕はチョコが嫌い。
あんぱんのほうがいい。

誰か、バレンタインデーを
チョコじゃなくて、あんぱんの日にしてくれないだろうか。

飼い猫のバレンタインが言った。

「僕の名前も、あんぱんになるの?」

「名前は変わらないさ。
それに、なんで君の名前が、僕の嫌いなバレンタインなんだ。」

「僕に聞かないで。
僕に決めることなんてできないんだから。」

そうだよな。

もしチョコの雨なんか降ったら最悪だ。
君の真っ白な毛まで、チョコ色になっちゃう。

そのとき。

ピンポーン。

呼び鈴が鳴った。

お届けものです。

僕宛て?

差出人を見ると――あいつだ。

開けると、でっかいハートのチョコレート。

絶対、僕がチョコ嫌いなの知ってて送ってきたな。

メッセージカードまで入っている。

「ハッピーバレンタイン。
これ、義理チョコ。勘違いせんでね。
失敗作やから送りました。」

……増々、腹が立つ。

ゴミ箱へ直行――

しかけて、止まった。

せっかく作った失敗作だ。
一口くらい食べて、あとで毒を吐いてやる。

包み紙を外すと、甘い香り。

なんか、いつものチョコと違う。

パリッと割ると、
中からナッツやアーモンドが顔を出した。

これ、本当に失敗作?

少しかじる。

口に含んだまま、止まる。

……おいしい。

チョコって、こんなにおいしい?

もう一口。

もう一口。

気づいたら、テーブルの上は空っぽだった。

猫のバレンタインが、呆れ顔で言う。

「で、あんぱんに変えるの?」

「あ、いいよ。今のままで。」

その日、
バレンタインに、チョコの雨が降った。

イラスト:ChatGPT

あとがき

嫌いだと思っていたものが、
ほんとは、少しだけ怖かっただけかもしれません。

甘いものは、
いつも少し照れくさい。
※この物語はフィクションです。

風まかせ文芸部のお題に書かせて頂きました。
iさんお題をありがとうございます。


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