セミナー講師:臨床家にとっての「メタ認知」
昨年7月に動機づけ面接の第一人者、北田雅子先生(札幌学院大学)ラボ主催のセミナーに講師として参加しましたが、今年3月に「臨床家にとっての『メタ認知』」というテーマで再び登壇しました。
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テーマ:臨床家にとっての「メタ認知」
主 催:アンドMIラボ
日 時:2025年3月23日(日)19:00-21:00(質疑応答を含む)
場 所:オンライン開催
https://peatix.com/event/4249716/
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以下は北田先生のセミナー紹介文から。
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米沢先生、河村先生、わたしのリレー講義+ディスカッションです。
わたしを含め、米沢先生と河村先生はいつも同じタイミングで同じテーマを
考えている不思議なつながりがある先生方です。
その3人で今回は「メタ認知」をテーマとして取り上げます。
動機づけ面接は、単にクライエントの行動変容を支援する技法というだけでなく、
わたしたち臨床家自身のメタ認知を育成し、
専門家としての成長を促進する力を持っていると思います。
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河村洋子先生は産業医大産業保健学部の教授で、ポジティブ・ディビアンスの研究で有名です。河村先生、米沢、そして北田先生の順に30分ずつ話し、その後ディスカッションを行いました。
北田先生からこのテーマをいただいた時、「メタ認知」が教育界で注目されているとは知りませんでした。メタ認知と聞いて思い浮かんだのは、「メタ・ポジション」という言葉でした。メタ・ポジションはカウンセリングではとても重要かつ基本的なことだと考えていますが、当たり前すぎて深く考えたことがなく、今回は振り返る貴重な機会となりました。
▼メタ認知とは
メタ認知とは、自分が認知していることを客観的に把握することを言います。自分が考えていること、感じていることを「もう一人の自分」が認知し、制御する能力のことです。自分の認知を観察するモニタリングと、観察した認知に基づいて認知活動をコントロールする2つの要素から成り立っています。
たとえば満員電車に乗っていたら電車が揺れ、隣りに立っていた人に足を踏まれたとしましょう。「痛っ!」。ところがその人は知らん顔。「何この人!ひどくない?すいませんの一言くらいあっていいでしょ。まったく腹が立つわあ!」などと思うかもしれません。この時に、「あ、私、怒ってる」と気づいたら、これがメタ認知です。「腹立つわあ!」はダイレクトな感情ですが、そういう感情を抱いている自分を「私、怒ってる」と客観的に認知する「もう一人の自分」に気づくのがメタ認知で、誰もがやっていることですが、メタ認知に気づきやすい人と気づきにくい人がいるようです。
▼カウンセリング場面でのメタ認知
先ほどの例は自身の感情についてメタ認知している場合ですが、カウンセリングではこんなことが起こることがあります。ある日、カウンセリング中にクライアントが、「先生は私のことをわかっていません!」と訴えたとします。「えっ!どうしましょう!?」と慌てるのは初級カウンセラー。それに対し中級以上のカウンセラーは、一瞬、驚くとしても、「このクライアントはどのやり取りを指して、わかってくれていないと言っているんだろう?私は何か重要な言葉を聞き逃しただろうか?もっと突っ込んで聞いてほしかったのだろうか?」と、クライアントとカウンセラーが対峙している場面を少し上から俯瞰し、やり取りを分析する「もう一人の自分」が発動するわけです。先ほどの怒りの認知はあくまでも自分の感情についてですが、この場合は自分の感情(ビックリ)の認知をきっかけに、さらにカウンセリング場面での二者の関係性についても俯瞰していると言えるでしょう。
カウンセラーにとってメタ認知は必須の技能であり、これをできるかできないかが、「ただの親切な支援者」とプロ・カウンセラーを分ける重要なポイントの一つになると思っています。しかし実際にカウンセリング場面で自分がどうやっているかを考えることはあまりありませんでした。
メタ認知について考えるきっかけを作ってくださったのが、ネガティブ・ケイパビリティの取材に来られた田中稔哉さんでした。田中さんのインタビューを受けながら、自分が普段の臨床で何を考え、どういうやり取りをしているのか、改めて考えることになったのです。この話を昨年7月に北田先生のセミナーで話したところ、「次はメタ認知の話をしましょう」となったわけです。
▼メタ認知をイラストにすると
メタ・ポジションのイメージを伝えるにはイラストがうってつけなんだけど、と思っていたら、Googleの生成AI、Geminiが絵を扱えるようになったという情報が入ってきました。早速試してみました。「精神科医と患者が会話している場面で、精神科医がその様子をメタ認知しているイラストを作成してください」とお願いしました。すると最初に出てきたのは図1の左上でした。
<図1>

「いや、写真じゃなくてイラストで!」と指示したら、左から2枚目が出てきました。精神科医が女性になってしまった。「男女入れ替えて」と指示したら3枚目が出てきて、ようやく希望に近くなりました。メタの部分が変だったので、「2人を見ている感じにして」と指示したらかなり近くなりました。ところが「もう少し横から2人を見ている感じに」と指示したらメタが2つになってしまった!「1つにして!」と指示したら今度は精神科医の後ろに移動してしまった。毎回違う人物が出てくるので、「他は変えずに枠だけ動かして!」と指示したのですがダメ。30分以上試行錯誤し妥協したのが図2です。
<図2>

▼メタ認知の代表、認知行動療法
カウンセリング領域でメタ認知の代表と言ったら認知行動療法でしょう。以前、「虫退治」をご紹介しました。
「上司が誘ってくれなかった」→「ショック」→「上司は私が嫌いなんだ」
という認知の仕方に対し、「上司は私が嫌い」は「自動思考」ではないか?と疑問を投げかけ、「上司は私が嫌い」と考えてしまったことの妥当性を検討するわけです。これができるのは、「自動思考」というアイデア(理論)があるからです。自動思考を知らなければ、「上司は私が嫌い」という思いの妥当性を検討するきっかけはなかなか生まれないでしょう。ちなみに自動思考という考え方を知っていても、ショックを受けている時はなかなかメタ認知ができません。そこを気づきやすくするのが「虫退治」のアイデアでした。
▼メタ認知のためには依って立つ理論が必要
自動思考に気づくには認知行動療法の理論を知っている必要があります。理論を知っているからこそ、メタ認知を発動させる言動を引っかけることができるのです。セミナーではナラティブ・セラピーの「いまだ語られていない物語」について、ビーズ玉を拾う例を挙げながらメタ認知の働かせ方を紹介しました。図3です。
<図3>

私たちが人生で経験する大小さまざまなエピソードをビーズ玉に例えます。辛い経験もあれば(黒玉)、嬉しい経験もあった。黒玉だけ拾っていけば真っ黒な首飾り、つまり真っ暗な人生になってしまうでしょう。辛い経験をたくさんしてきた人は、自分はそういう目に遭う人間なのだというスキーマが出来上がっていて、どうしても黒玉を拾ってしまうのです。
でも人生は本当に黒玉だらけだっただろうか。親から虐待を受け続けていたとしても、優しい時もなかったか?保健の先生は話を聞いてくれなかったか?近所のおばさんが気にかけてくれなかったか?ナラティブ・カウンセリングで「いまだ語られていない物語」を引き出すことは、違う色のビーズ玉もあったことに気づき、拾うことであり、それを紡いでいくと、やがては違う景色が見えてくるかもしれない、という考え方です。
そのためにはこちら側に、「いまだ語られていない物語」につながるビーズ玉を、クライアントと一緒に拾っていくんだという意識(理論)がなければ、拾うことができません。
認知行動療法や精神分析、来談者中心療法、動機づけ面接、交流分析、解決志向アプローチ、家族療法、ナラティブ・セラピーなどさまざまなカウンセリング理論がありますが、それはさまざまなメタ認知の方法がある、と言い換えてもいいのでしょう。
今回のセミナーでメタ認知についてさまざまなことを考えることができました。北田先生、河村先生、ありがとうございました!
