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掌編小説「クリスマス ギフテッド」第5話「ブッシュドノエル」#いつきちゃんのアドベンドカレンダー


ブッシュドノエル♪ソイヤっと!


前回までのお話はこちら↓


「ブッシュドノエル」

「新しいママは、パンを買う時もケーキを買う時も店員さんにナッツが入っていないか聞いていたの」
「深雪さん、ナッツアレルギーがあったのね」
「うん、僕はこのブッシュドノエルの右端にだけ、ピーナッツバターをたっぷり入れておいたの」
「でも匂いで分かったんじゃない?」
「真由子、ママは風邪で鼻が詰まっていたんだよ。ミルクティーの中にも入れちゃった」
「どうして、そんなことを!!」
「あの日、真由子がした事と同じでしょう?」
「えっ」
震えていると思っていた裕樹はキッチンの扉を開くと、もみの木のてっぺんの星を指差した。
「あそこから細くて透明な釣り糸を階段に仕掛けたのは真由子でしょ?」
「え、何故、私がそんなことを。それに、あなたはまだ三歳だったじゃない」
「僕、見てたんだ。真由子が釣り糸を張るところ。そして、あの夜ママは階段を転がり落ちた」
「⋯⋯」
「あの事故でママは助かったけど、お腹の赤ちゃんは死んじゃったんだよね」
「⋯⋯」
「パパは事件性を疑ったけど、ママの救急車を呼んでいる間に僕が釣り糸を外しておいたんだ。だから、ただの事故で済んだんだよ」
「どうして?どうしてママや警察に私のこと言わなかったの?」
「だって僕も真由子と同じように、弟も妹も要らなかったからね」
「知っていたの?ママに赤ちゃんが出来たって?」
「うん」
「でも、あれから、いくらでも私を訴えられたでしょ?」
「ママは弱い人だから、赤ちゃんが死んでノイローゼみたいになっちゃったでしょう。真由子を訴えたら、僕の面倒をみてくれる人が居なくなっちゃうもん」

ーーこの子は天使の顔をした悪魔だ。

「でも、真由子が本当に死んで欲しかったのは、赤ちゃんじゃなくてママの方だよね」
身体が震えているのは真由子の方だった。
「真由子はパパと結婚して、僕のママになりたかったんでしょう?」
「そんなこと、考えたこともないわ」
「そうかなぁ〜?よくママの宝石を付けたり、お洋服をこっそり着てたじゃない」
「それは⋯」
真由子が説明出来ないことを知っていたように、裕樹は視線をシンクとコールドテーブルの間に仰向けに倒れている深雪に移した。
「ねぇ、この深雪さん、どうしよう?」
裕樹は悪魔のペルソナを外して、ただの10歳の幼い子どもが泣き出しそうな顔をした。透明な涙を溜めて真由子を見つめる瞳も、彼女を虜にした天使そのものだ。
ーーいったい、どちらが本当の裕樹なの?
「僕が自首すればいい?まだ十歳だから少年法で守られるよね」 
「いいえ、私が。私が知らずにピーナッツバターを食べさせたことにします」
家を出る時は、まだ暖かかった料理がタッパーウェアの中で冷めていった。(すまない約1100字)

(ろうそくぅ〜の明日へつづく)


キャンドルライトが〜
ガラスのナンチャラに
弾けて滲む♪




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