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Blah Blah Blah 終戦の日

「Blah」は、

「ばかばかしいこと」とか「たわごと」という意味らしい。

Blah Blah Blahになると、

「ああだこうだ」
「何とかかんとか」
「かくかくしかじか」

そんなふうに、あれこれ言葉を並べるときに使われる。

スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリが気候変動について話したときにも、この言葉を使っていた。

「もうBlah Blah Blahはたくさんだ」

そんな意味だった。

言葉は、もう十分。
あとは行動だ。
そういうことなのだと思う。

……なるほど。


今日は、8月15日。
終戦の日だ。
81年前の今日、戦争が終わった。
その9日前、8月6日に広島。
3日後の8月9日に長崎。
原子爆弾が落とされた。

毎年、この時期になると、いろんな言葉が並ぶ。

戦争はいけない。
平和が大切だ。
核兵器をなくそう。
二度と同じことを繰り返してはいけない。

どれも、その通りだと思う。
大切な言葉だ。

でも、

Blah Blah Blah。

……と、書いてしまう自分もいる。
もちろん、馬鹿にしているわけじゃない。むしろ、自分自身への問いかけだ。

毎年、同じ言葉を聞いて、

「そうだよね」

とうなずいて、
また、いつもの日常へ戻っていく。
僕自身も、そうだ。

戦争って、なんだろう。
核って、なんだろう。
平和って、なんだろう。

もう59年も生きてきたのに、いまだに、そんなことを考える。

僕は戦争を知らない。
81年前の広島も、長崎も知らない。
だから、偉そうなことは言えない。

世界から核兵器がなくなればいい。
戦争なんて、なくなればいい。

もちろん、そう思う。
でも、

「じゃあ、あなたは何をしているんですか?」

そう聞かれたら、僕は少し黙ってしまう。

何をしているんだろう。
何ができるんだろう。
このところ、そんなことを考えることが多かった。

地震があった。

気候変動のニュースも、相変わらず続いている。

そして、世界では戦争が続いている。

どれも、自分ひとりの力ではどうにもできないことばかりだ。

考えすぎてしまったり、
自分の無力さを感じたり、
だからこそ、何かを変えなければと思って動いてみたり。

そんなことを繰り返しているうちに、
少し疲れていたのかもしれない。
気がつくと、呼吸まで浅くなっていた。


そんな今日の昼、
NHKで日本武道館から中継された
「全国戦没者追悼式」を見た。

しばらくテレビを見ていた。
そして、ずいぶん昔に買った一冊の写真集を久しぶりに開きたくなった。

石内都さんの『ひろしま』。

被爆した人たちの遺品を撮った写真集だ。

服。
靴。
眼鏡。

どれも、特別なものではない。
誰かが、その日に身につけていたものだ。

その中に、一枚のスカートがある。
ピンク色の、小さな花柄。
かわいらしいスカートだ。

81年前。
広島で、このスカートを穿いていた人がいた。

その人にも、
朝があって、
今日の予定があって、
お腹が空いたり、
誰かと笑ったり、
明日のことを考えたりする、
普通の一日があったはずだ。

でも、
その人の「明日」は来なかった。

僕は、そのスカートを見ると、

「戦争はいけない」

という言葉より先に、
このスカートを穿いていた人のことを考える。

名前も知らない。
顔も知らない。
何歳だったのかも知らない。

ただ、
このスカートを穿いていた。
それだけは分かる。

戦争という言葉は、大きすぎる。
核兵器という言葉も、大きすぎる。

気候変動という言葉も、
地震という言葉も、
ときどき大きすぎる。

その大きな言葉の向こう側には、

ひとりの人がいる。
ひとりの人生がある。

そして、一枚のスカートがある。

だから僕は、

「平和が大切だ」

と書くだけで終わりたくない。

「戦争はいけない」

と言うだけで終わりたくない。

もちろん、僕ひとりにできることなんて
たぶん、たいしたことじゃない。

世界の核兵器をなくすこともできない。
戦争を止めることもできない。
地球の気候を変えることもできない。
地震を止めることもできない。

それでも、
忘れないことはできる。
知ることはできる。
考えることはできる。

そして、
何かを変えようと思って、
小さくても動くことはできる。
書くことくらいはできる。

Blah Blah Blah。

言葉は、もう十分なのかもしれない。

だからこそ、
その言葉の向こう側にいる、
ひとりの人を忘れない。

81年前、
広島で、
このスカートを穿いていた人がいた。

今日は、8月15日。
終戦の日。

その人の「明日」が、
どうして来なかったのか。
僕は、そのことを考える。

そして、
一枚のスカートの前では、
Blah Blah Blahでは、
済ませたくない。


「こんな写真集がありますよ」
今日は、
それだけを、
誰かに伝えたくなった。

写真集:石内都『ひろしま』- 集英社
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-780482-9

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