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人生は地獄という前提に立つ|厳しい現実を楽しむ方法

就職する前、大学生だった頃に「宮本から君へ」というサラリーマン漫画を読んでいた。映画やドラマにもなったようだが、僕は古本屋で買ったモーニングの単行本を貪るように読んでいたことを覚えている。

この本はとにかく暑苦しい印象が残っている。主人公はエレファントカシマシの宮本浩次がモデルだからか、とにかく熱い気持ちを持って厳しいサラリーマン生活をしながら、仕事にも恋愛にも真っすぐに熱く取り組んでいるのだ。

そんな宮本の生き方は、特にやりたいこともなく、モラトリアムとしての大学生活をボーっとして過ごしていた当時の僕に強い刺激を与えたことを覚えている。「人生は厳しいもんなんだな」と痛感し、人生への生ぬるい展望を捨てるきっかけになったのである。

確かに「宮本から君へ」を読むと、会社員も人生も厳しい現実の連続だと思うようになるが、そんな厳しい現実だからこそ人生は素晴らしいとも学んだのである。だから、就職してからというもの、妙な幻想は抱くことなく現実的な価値観のもと生きていくことができた。

もし「宮本から君へ」を読んでいなかったら、甘い幻想を抱いた状態で社会人になってしまっていたかもしれない。薔薇色の未来を思い描いて夢が打ち破られた時こそ、人は深く落ち込んで挫折してしまうのだ。

会社に居続けることで給料は上がっていき、病気になることもなく、適当に出会ったパートナーと結婚して子供ができて、子育てが終わるころには無事に定年退職をして悠々自適な老後の生活を送る。そんなひと昔前のロールモデルをなぞるような想定で社会人になっていただろう。

しかし、実際はリーマンショックが起こり、東日本大震災も発生し、平成は令和に代わり、コロナウイルスによって世界はパンデミックに陥り、ロシアがウクライナに戦争を仕掛けた。個人的な出来事だが僕は23歳に胃がんに罹って胃を全摘出する人生を送ることになった。現実の世界は予想ができないくらいパニックだらけなのである。

だから、人生をポジティブに考えて薔薇色の未来を思い描くということが僕にはどうしてもできない。あの時に「宮本から君へ」を読んで現実的で暑苦しい未来を思い描いていたおかげで、色んなことが起きても受け容れて生きていくことができたのだ。

もちろん悲観的になった方がいいというわけではない。ただ「人生はそもそも地獄」くらいの想定でいた方が、厳しい現実と対峙しながらも、充実した人生を送れるようになるのではないかと思っている。

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